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【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」17 〜離島経済入門~

北海道経済入門とは?

小樽商科大学4年生(休学中)の神門崇晶(カンドタカアキ)が北海道経済についての「今さら聞けない」 という部分を探っていきます。北海道経済の基本的な部分を理解していくことを、インフォグラフィックを通して試みるプロジェクトです。

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神門崇晶(かんどたかあき):小樽商科大学4年生(休学中)。
同大学に2019年に入学。同年11月に「カレーパンドラ小樽商大店」をオーナーと共にオープン。コロナ禍により同店を休業し、2020年にYoutubeチャンネル「おたる再興戦略室」を開設。これをきっかけに、2021年4月から「札幌解体新書」の学級委員長を務め、2022年1月より「北海道経済入門」がスタート。また、2022年6月より木下斉さんとの共同連載「データで見る地域のキホン」がnoteにてスタート。

導入

14号(十勝)、15号(根釧)、16号(オホーツク)と、3回にわたって道東エリアの経済・産業をみました。この3地域は農業・水産業をはじめとした第一次産業が主産業である上に、特に酪農に至っては「稼げる産業」としての地位を確実なものとしていることがわかりました。

課題としては水産業における後継者不足問題資源依存問題が挙げられます。前者に関しては酪農も例外ではなく少子高齢化がその一因です。後者については年々漁獲量は減少傾向であり、これは日本全体にとっての大きな問題となっています。主要先進諸国では漁獲量が減少傾向なのはほとんど日本のみであり、水産業自体の維持可能性にも大きく関係しています。これには、漁獲量を細かく管理するなどの対応策が考えられていますが、実際には厳重に機能していないのが現状です。

さて、北海道経済入門では振興局別に経済や産業を見てきましたが、残すは道南(檜山・渡島)と道北(上川・留萌)エリアのみとなりました。記事としてまとめる回数も残りわずかです。

そこで今回は、振興局別ではなく離島に絞って見ていきます。日本は6852の島々によって構成されています。北海道にはそのうち509もの島々があり、長崎県(971)、鹿児島県(605)に次いで全国で3番目に島が多い自治体なのです。ちなみに、世界で島が多い国は北欧がベスト3を占めています。

人口減少・少子高齢化が社会問題として顕在化している日本では、離島においてこの問題が特に大問題となっており、島から人がいなくなり維持できないといったようなケースが増加することが推測されています。しかし、与那国島や対馬などに代表されるように、他国との国境ギリギリに存在する離島もあるように国防や地政学的に重要でもあります。特に、強力なシーパワーを持つ中国が台頭してきたように、現在の東アジア情勢における離島の重要性は増しているように考えられます。

このように、離島は人口減少などの社会問題や国際情勢などの政治問題とも向き合っていかなくてはいけないエリアです。そのため、離島特有の法律なども存在します。今回の記事では、より社会問題・政治問題について考えるきっかけになるのではないかと思います。それでは、「離島経済入門」を読んでいきましょう!!!

本日のインフォグラフィック

北海道の離島

引用:北海道庁HP(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ckk/tokuchi/ritou/potalsite.html)

北海道には509の島々があると述べましたが、そのうち有人島は6つだけで、1つは季節限定の有人島になっています。それでは、6つの島々を一つずつ簡単に紹介していこうと思います。以下の人口及び高齢化率は、令和3年住民基本台帳から引用しています(小島のみ令和2年国勢調査より)。経済・産業については、最後に詳しく見ていきます。

礼文島

宗谷総合振興局
人口:2416人(男1226人、女1190人)
高齢化率:37.2%(男33.7%、女40.8%)

島全体が礼文町に属しています。日本最北の空港である礼文空港がありますが、2003年に唯一の定期便(稚内 - 礼文線)が廃止され、2009年からは供用休止が継続されています。そのため、島外とのアクセスはフェリーのみとなっています。

利尻島

宗谷総合振興局
人口
利尻町:1964人(男961人、女1003人)
利尻富士町:2388人(男1156人、女1232人)

高齢化率
利尻町:40.9%(男36.2%、女45.4%)
利尻富士町:38.4%(男33.4%、女43.0%)

礼文島のように1つの行政に属すのがほとんどですが、利尻島は2町に分かれていることが特徴です。なぜこうなっているかについては、以下の記事をご覧ください。

利尻島には、1962年に開港した利尻空港が利尻富士町にあり、2路線(新千歳 - 利尻線、稚内 - 利尻線)が就航しています。新千歳線は6~9月のみ運航しています。

また、離島に特化したメディア「離島経済新聞社」を設立され、現在利尻町にも拠点を置く大久保昌宏さんの「この人、えーぞ」もご覧ください!

奥尻島

檜山振興局
人口:2498人(男1339人、女1159人)
高齢化率:40.9%(男32.8%、女50.3%)

奥尻島には1974年に開港した奥尻空港があり、2路線(函館 - 奥尻線、丘珠 - 奥尻線)があります。丘珠線は2021年に夏季限定で就航を始めた際に好調だったため、同年10月からは平日が函館線、土日祝日が丘珠線となりました。

これら3つの島々はそれぞれが行政として独立していますが、残りの3島は別の自治体に属しています。なので、島に限定した経済状況や産業について詳細は分かりません。


天売島・焼尻島

人口
天売島:275人(男151人、女124人)
焼尻島:176人(男87人、女89人)

この2島は道北の羽幌町に属しています。羽幌町の人口の93%は市街地に住んでいます。


小島

人口:8人(男4人、女4人昆布漁シーズンのみ)

正式名称は小島ですが、通称「厚岸小島」と呼ばれています。この8人は4世帯で全て漁民であり、冬場は北海道本土で暮らしているそうです。

ここまで北海道の有人島について簡単に見ましたが、このような離島は法的に少し特別な扱いをされているようです。

離島独自の法律

記事の冒頭で、離島は「国防や地政学的に重要」と述べました。おそらく、2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件をきっかけに、離島と国防という観点について多くの国民が危機感を抱いたのではないでしょうか。

そのため、離島が果たす役割は大きなものとなりつつあります。そこで、離島のための法律が現在、5つ制定されています。

・離島振興法(1953年~)
・奄美群島振興開発特別措置法(1954年~)
・小笠原諸島振興開発特別措置法(1969年~)
・沖縄振興特別措置法(1972年~)
・有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法(以下、有人国境離島法)(2017年~)

この中で最も多くの離島をカバーしているのが1953年に議員立法で制定っされた離島振興法です。これは10年間の時限立法として制定され幾度も改正を繰り返しており今年2022年末で時限のため、2023年にまた改正されると思われます。

離島振興法の目的は第一条に明記されています。目的を簡単にまとめました。

「排他的経済水域(以下EEZ)等の保全や海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全など他地域よりも厳しい自然的社会的条件の下にあるため、産業基盤の脆弱性などは他地域よりも大きい。なので、離島の振興に関しては基本理念を定め政府の責務を明らかにすることで、離島の自立的発展を促進し、国民経済の発展及び国民の利益の増進に寄与すること」

離島は他地域よりも様々な条件が厳しいため政府としてサポートしていき、国全体の利益に繋げることを目指す、ということです。

引用:国土交通省国土政策局(2021)「離島振興計画フォローアップ」、https://www.mlit.go.jp/common/001415188.pdf

このように離島振興の基本理念はこの振興法に明記されており、具体的な施策などは国土交通省国土政策局の「離島振興計画フォローアップ」に書いています。北海道の6離島は振興法に基づく「離島振興対策実施地域」に指定されています。この地域に指定されると、様々な優遇措置を受けることができます。

1つは、前回の改正時に導入された「離島活性化交付金」です。この改正時には、法律の目的が明記されている第一条に以下の文言が追加されました。

「地域間の交流を促進し、もって居住するもののない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進を図る」

この追加文言に則って従来の公共事業や産業振興等の離島振興策に加えて、「定住促進事業・交流促進事業・安全安心向上事業」という3つの柱で構成される交付金事業が実施されています。毎年度、約20億円の予算で推移しています。

引用:国土交通省国土政策局離島振興課(2022)「離島の現状と取組事例について」、https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001478618.pdf

2つ目は「構造改革特区制度」です。この制度は、同法第十八条の2で明記されている「離島特別区域制度」とは異なった制度です。この制度を利用して、様々な離島で地域資源を活かした取組が実施されています(お酒が多めですねw)。

引用:国土交通省国土政策局(2021)「離島振興計画フォローアップ」、https://www.mlit.go.jp/common/001415188.pdf

しかし、このような措置を講じても以下のグラフからもわかるように、離島における人口減少と高齢化は進行しています。

引用:国土交通省国土政策局(2021)「離島振興計画フォローアップ」、https://www.mlit.go.jp/common/001415188.pdf
引用:国土交通省国土政策局(2021)「離島振興計画フォローアップ」、https://www.mlit.go.jp/common/001415188.pdf

また、2015年度には東アジアにおける中国の台頭などの要因により、領海・EEZ等を適切に管理する必要性が増大したために、「有人国境離島法」が制定されました。北海道の離島では、中国・ロシアと国境が近い礼文島・利尻島・奥尻島が同法による「特定有人国境離島地域」に指定されています。指定地域には、旅客航路の運賃低廉化や生活・事業活動に伴う物資費用の負担などの優遇措置が講じられます。

離島に関する5つの法律が制定された背景などを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

3離島の経済・産業

では、礼文町、利尻町・利尻富士町、奥尻町の経済・産業をそれぞれ詳しく見ていきましょう!


礼文町

まずは人口動態です。

引用:RESAS

ピーク時の1955年には約9800人だった人口は年々減少し、2020年までで約75%減少しました。ただ、2020年現在では年少人口・生産年齢人口の割合は3島の中で最も良い数字となっています。

礼文町の主要産業は、第一次産業(主に水産業)と第三次産業(主に観光業)となっています。2015年のデータを見ると、就業者の35%が第一次産業、50%が第三次産業に従事しています。1990年には就業者の46%が第一次産業、33%が第三次産業に従事していたことから、25年間で徐々に第三次産業へと雇用のシフトが起こっていると考えられます(参考:国勢調査)。

しかし、水産業では年々漁獲高が減少しており、魚価の値上がりのために漁獲額は維持されているというのが現状です。観光客数も2002年度の約31万人をピークに年々減少し、近年は約12万人で推移していました。しかし、2021年度はコロナの影響により4万人にも届かない状況です。また、観光客の80%以上は夏期に集中していることも大きな特徴です。

礼文島は利尻島とともに日本最北の国立公園である「利尻礼文サロベツ国立公園」を構成しており、自然が観光の目玉となっています。観光客の減少の一因として、空路廃止が挙げられると推測されます。2003年度に稚内線が廃止され、2009年にはピーク時の半数にまで減少しています。

利尻町・利尻富士町

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