見出し画像

【登山道学勉強会】登山道に関する最新研究2023③ #20

登山道に関する日本の最新研究を紹介 その3

今回は研究ではありませんが、とても示唆に富んだ記事がありましたのでその一部をご紹介します。紹介するのは一般社団法人全国森林レクリエーション協会が発行している季刊誌「森林レクリエーション No.435」の特集で、日本を代表するトレイルビルダーの一人、TRAIL LAB 代表の浦島悠太さんの記事です。タイトルは「日本のトレイルの未来 海外トレイルの事情と日本の現状を踏まえ(1)」です。


本記事におけるトレイルの定義

本記事では海外でのトレイル整備の経験を持つ浦島さんから海外のトレイルの事情が紹介されています。「トレイル」の定義はその時々で違ってきますが、この記事の中では「レクリエーションを目的とした未舗装の道」としています。つまり、歩くためだけのものではなく、マウンテンバイクや馬の利用のための道も含まれるということですね。

日本では登山道のことを「トレイル」という風に表現することもあります。例えば「北アルプス”トレイル”プログラム」のトレイルはほぼ「登山道」という意味でしょう。日本の登山道について語る時に、事例として海外のトレイルと比較されることもありますが、海外で言う「トレイル」は必ずしも「登山道」ではないということは注意が必要です。

また、登山道は登山口から山頂に行くこと(つまりA地点からB地点)に行くことを主目的にしていますが、トレイルはその過程の価値が重要となっていることも大きく違う点ではないでしょうか。


海外のトレイル事情

今回は第一弾として海外のトレイル事情を紹介する内容となっています。詳しい内容が知りたい方は、バックナンバーとして購入できるので是非手にしてみていただきたいのですが、ここではトピックスだけ紹介します。海外のトレイルは多くのユーザーが共有できるものというのが日本と大きく違う点なのかもしれません。


オーストラリアの事例

本記事では浦島さんが実際に経験された海外の事例として2ヶ所登場します。その一つがオーストラリアのタスマニアです。そこではマウンテンバイクトレイルに2億円の予算をかけて整備されたそうです。無料で利用できるトレイルですが、地域への経済効果は年間数億円規模にもなり、そこからの税収や協賛企業のスポンサーなどで、フルタイムでトレイルを整備するビルダーを雇用し維持管理できているそうです。トレイルの価値を理解し、需要があるからこそできることなのだと思います。またロングトレイルには23億円も予算をかけて造られていて、その様子はTRAIL LABのホームページでも紹介されています。


アメリカの事例

もう一つ紹介されているのがアメリカのアリゾナ州でのお話です。ここでは、トレイル整備のNPO団体があり、NPO団体のリーダーとパークレンジャーが連携しながらボランティアを募って国立公園や国定公園のトレイル整備を行なっているそうです。日本でも最近は協働型やボランティアを集めての登山道の整備も話題となっていますが、こちらでは2004年からすでにこのようなプログラムが進んでいたそうです。日本は20年くらい遅れているということが言えるのかもしれません。

アメリカはもともと寄付やボランティアという文化が根付いているといわれますが、学生など若い人にとってはそれが自分の経歴となったり学費など金銭的な補助を含めギブアンドテイクの関係が成り立っているというのも、日本より進んでいる点かもしれません。


次回は年明け?

次回は国内でマウンテンバイクパークを検討している団体に向けた内容を予定しているそうです。来年初めということなので、気になる方は適時チェックしてみてはいかがでしょうか。

<寄稿のお知らせ> ご報告遅れましたが、 一般社団法人全国森林レクリエーション協会発行の森林レクリエーションという機関紙8月号に トレイルビルダーとして寄稿させていただきました。 私が寄稿したトピックは 日本のトレイルの未来、海外のトレ...

Posted by トレイルビルダー 浦島悠太 on Tuesday, September 19, 2023


▼過去の登山道学勉強会はこちら▼


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?