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【ニュージーランドの学校のこと】この学校の特殊な教育システムについて(1)

私が派遣されたのは、教会が運営する学校で、キリスト教色が非常に強い学校です。私はクリスチャンではないので、このインターンはキリスト教のことを知る良い機会でもあると思い、興味を持って、初めて出会う世界のものの見方に驚きながら3か月を過ごしました。クリスチャンスクールであるということが一番の特徴なのですが、この話は別の機会にすることにして、学習方法について今回は書いていこうと思います。

この学校の教科学習の方法は「ACEプログラム」と言って、テキサスのキリスト教団体が1970年に開発スタートした布教も兼ねたプログラムです。非常に特殊で、ニュージーランドの他の学校とも全く異なるし、今まで息子が通っていたインターナショナルスクールとも全く異なります。

キリスト教のバックグラウンドを除くと、その教科学習の進め方は、「ワークブック型くもん」みたいなものというと分かりやすいのではないかと思います。くもんより圧倒的反復が少なく、おっとりしているのですが、それでも、ニュージーランド人にとっては、反復量が多いらしく、厳しく押し教え込まれていると感じるので、周りの公立に通わせている家庭からは非難されることもあるそうです。

私の目にはこのシステムの狙いは分かりやすく、キリスト教布教内容がなければ、日本でもそのまま使ってもいいくらいです。そう感じるのは、日本人には馴染みがあるメソッドだからというのと、インターナショナルスクールで不足している部分(特に算数と理科)が身に染みていて、この程度の反復なら学習の定着には必要だろうと思うからです。


この学習プログラムについて、日本人にとってイメージしやすいように、公文と比較しつつ説明しようと思います。まず公文といえば大量のプリント。しかしこのプログラムでは、大量のプリントの代わりに30~45ページくらいの薄いオールカラーでA4のワークブックを使います。ワークブックは教科別に分かれていて、習得するためには何冊もくもんのようにステップアップしていきます。

このワークブックで学べる教科は、算数(ステップアップすると代数、幾何に分かれる)、英語理科社会(ステップアップすると経済も加わる)、語彙(word building)、文学読解(literature)となっています。くもんと比べると、テキストには理解を促すための細かいステップ分けでの解説があり、反復量は少なく、ドリルというよりは、理解を丁寧に促す構成になっています。

このワークブックを進めるにあたって、予め先生から解説してもらったり、教えてもらうことはありません。ですから当然板書もなく、教科学習の部屋には黒板はありません。5歳であっても17歳であっても、生徒は一人一人自分で決めた範囲をワークブックの解説を読みながら進めていきます。そして、分からないことがあったときに、静かに合図をして、先生に自分の席まで来てもらい、解説をしてもらいます。

くもんでは、答え合わせは先生が行うのですが、このプログラムでは、終えたワークブックを先生のところへ持っていくのではなく、静かに答え合わせとしたい意思表示をして、アシスタント先生の許可を得てから、解答冊子のある棚まで移動し、自分で答え合わせをします。この時に、自分の答えが不正解であることに疑問があれば(本当は正解なのではないか?と思ったら)、その場で静かに手を挙げてアシスタント先生に来てもらい、考え方を教えてもらったりします。(答えの幅が広いので、結構正解になります。日本と違って解答冊子をそのまま鵜呑みにせず、聞いてくる生徒が多いのは日本と全く違って驚きました。)

答え合わせの方法ですが、解答冊子の場所まで移動する際、鉛筆を持って行くことは許されていません。置いてある赤ボールペンで、合っている所、間違えているところにそれぞれ印をつけます。間違えているところがあったら、自分の席に戻って直しをします。直し終わったら、また答え合わせを同様の手順で行います。答え合わせを終了したら、アシスタント先生の席に置いてあるカゴに、ワークブックを入れます。

また、答え合わせのタイミングは、本人の意思に任されていて、1ページずつ提出してリズム良く学ぶ生徒もいれば、その日の目標を終わらせて、まとめて答え合わせし、提出する生徒もいます。

アシスタント先生は、各生徒の質問を受けている合間に、提出されたワークブックの答え合わせが正しく行われているかチェックを行います。低学年以下では、適当な答え合わせをしている生徒も多いからです。そして、生徒の進度を確認しつつ、理解できていない単元があれば、再度取り組むように課題を出します(くもんと似ています)。

そして、単元習熟のために、ワークブックの途中途中で、先生(アシスタント先生ではない)に見てもらってサインもらう必要がある課題があり、先生はこの課題を見ることで、直接生徒の取り組みの様子と習熟度を確認することができます。

ワークブックを1冊終えると、次に進むためのテストがあります。テストは専用のスペースで行われ、そのテストで80%以上とれたら、次のワークブックに進める仕組みになっています。テストの内容と結果のチェックは、受持ちの先生が行い、合格した生徒には次のワークブックをそれぞれの生徒に渡し、机に貼ってある進度表に★シールを貼る。という流れです。


日本でスローなことで有名な我が息子ですが、なぜかこのワークブック方式の勉強は、集中できたみたいで、1週間に全教科1冊ずつ終わらせていました。他の生徒はもう少しのんびりしていて、1週間半に全教科1冊ずつ修了といったところです。しっかり集中して学べる生徒は、自学自習の習慣を身に着けながら、ステップアップしてき、早めに卒業することも可能だそうです。

お気づきの方もいるかもしれませんが、これは自宅でもできるシステムで、この学校に所属しつつ、ホームスクーリングをしている家庭もあります。私は、学校行事で5家庭ほど(子どもは低学年から中学生まで8名ほど)に会いましたが、どの生徒も、他の大人や生徒と楽しそうに交流していました。

ちなみに、この学校では1人の先生が20人弱みていて少し手一杯の様子でした(私がお手伝いする余地がたくさんあった)。おそらく一般的な日本人の処理能力だと1人の先生と3人のアシスタント先生で、生徒40人くらいまで見ることができるのではないかと思います。

次の記事では、目標設定をどのように行っているのかなどを書いていこうと思います。 *写真は、学校の校庭&森です。(自宅の子羊、子牛を連れてくる行事)


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