こんにちは。
建築写真や都市写真を撮っております、
フォトグラファーのゴトウ リョウスケです。
“こだわり”を持ったホテルを紹介する”KODAWARI HOTEL”
記念すべき第10弾は群馬県前橋市にあるSHIROIYA HOTEL / 白井屋ホテルです。
小宇宙的建築空間 / Microcosmic Architectural Space
「白井屋ホテル / SHIROIYA HOTEL」は前橋で300年以上もの歴史を誇る白井屋旅館の跡地、旧本館(RC構造4階建)の駆体を剥き出しにした吹き抜け空間にアート・食・宿泊の非日常を詰め込んだ「小宇宙的建築空間」でありながら、前橋の町にシームレスに溶け込んでいる不思議なホテル。
歴史 / History
創業から約300年、旧宮内庁御用達の「白井屋旅館」をルーツとし、1970年代にホテルへと業種変換したが、2008年には街の衰退とともに廃業を余儀なくされる。
その後建物自体を取り壊すことも計画されたが、2014年に前橋市の活性化活動を主導する田中仁財団によって買収。世界的建築家の藤本壮介氏を巻き込む形で6年半におよぶ大改修と新棟建設の一大プロジェクトがスタート。
2020年12月12日、「白井屋ホテル / SHIROIYA HOTEL」として再び歩みを始めることとなる。
「白井屋ホテル / SHIROIYA HOTEL」最大の魅力は、もともとあった床を取っ払い剥き出しになった駆体によって創り出された4階層にも及ぶ吹き抜け空間。そしてのその空間に差し込む光の下で味わえる食・アート・宿泊といった非日常体験の数々。
食 / Cuisine
吹き抜け空間の麓にあるオールデイダイニング「the LOUNGE」では、季節によって変わる群馬県産の食材を使った全10品のワンプレートを朝食として頂くことができる。
ホテル内にはパン屋さん「the BAKERY」や、 フルーツタルト屋さん「the PÂTISSERIE」といった施設も併設され、宿泊客だけでなく地元の人も自然と集まる空間を担っていると言える。大胆な吹き抜け空間からその見た目はやや異世界的でありながら、群馬の町にも溶け込んでいるというそのバランスがなんとも不思議な空間である。
芸術 / Art
吹き抜け空間を縫うように水道管のような、電線管のような発光するする真っ白なパイプが張り巡らせられている。レアンドロ・エルリッヒが手掛けた「ライティング・パイプ」だ。あたかも吹き抜けになる前の白井屋旅館時代に使われていた配管が、そのまま残り続けているかのような錯覚をももたらすアート作品だと感じた。
そもそも、このホテルのリノベーション自体が建築家藤本壮介氏によるアートであることは言うまでもないが、館内には驚くほど多くのアート作品で溢れている。宿泊者限定ではあるが、一日に2回無料で館内アートツアーを開催氏ているので、是非参加してほしい。
宿泊 / Accommodation
客室は全25部屋(全部屋25平米以上)。そのうち4部屋は特別なコンセプトルームとなっている。
1.ジャスパー・モリソン・ルーム
プロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソンによるデザイン。
木に囲まれた客室、檜風呂が特徴的。
2.ミケーレ・デ・ルッキ・ルーム
イタリア人建築家、ミケーレ・デ・ルッキによるデザイン。
約3,000枚の木板を使った「板葺き」による光と影。
3.レアンドロ・エルリッヒ・ルーム
アーティスト、レアンドロ・エルリッヒによるデザイン。
吹き抜けに走るライティング・パイプを客室にまで拡張。
4.ソウ・フジモト・ルーム
ホテルの全体設計を務めた藤本壮介氏によるデザイン。
シックモダン×植物をつかい「めぶく。」を表現。
白井屋ホテル / SHIROIYA HOTEL
「白井屋ホテル / SHIROIYA HOTEL」は、リノベーションによって生み出された吹き抜け空間に食・アート・宿泊といったあらゆる非日常的なジャンルの要素が盛り込まれつつも前橋の町にシームレスに溶け込んでいる不思議な「箱」になっている。宿泊客は非日常を求めてこのホテルに来るし、地元の人がパンやケーキを買ったりお茶をしににふらっと立ち寄る。
そんな空間が前橋の町の原動力として今後も素敵なまちづくりの核であり続ける気がする。