男である恥ずかしさ
女に終わりはない、女は続いていく
女の享楽に端はなく、ただただ只中にある
永遠のプロセス
生み出され続ける新たな余白
書き込まれることを断り続ける永遠の定式
刺し貫くことができぬもの、行き止まりはない
くぐり抜けるだけ
男はいつも墜落する、墜落が結語となり
起承転が後に生じる、まずは墜落がある
男は言い訳をする
言い訳に世界を語る
言い訳に創世記を綴る
歴史の裏側で
書き込まれることを断り続ける永遠の定式が働き続けている
男にはいつも墜落があり、死がある
だからドラマがある 作られたドラマがある
胞子とキノコが順繰りに終わらないように
その順繰りのどこにも句読点をつけられないように
墜落や死の杭がなければ
物語を語ることはできないように
男には死があり、死の逆算としての個人史がある
個人史の逆算としての国家史がある
世界には終わりがあった
だから物語は存在した
後出しジャンケンのように
迫り来る起承転が結論の後から遅れて到来する
性差はなかった
ただ死があった
ただ欠落があり
何か埋め合わせないといけない穴があった
成り成りて成り合ざる処が
そこにはあった
くぱあ
が、そこにはあった
ないものがそこにはあった
世界は美しいのだろうか
ただ穴を眺める仕草があれば
世界はそのままの姿で
ただただ只中の姿をとどめることができたのではないか
人間が猿から枝分かれする際に分裂症になったように
人間は男という病気を発症することによって人間になった
しかし女はいない
いたためしがない
中断できぬもの
全うできぬもの
貫けぬもの
男しかいないのだ
男が独り言を喋るように世界は紡がれた
そこに女の居場所はあってはならない
居場所ができるとしたら
女が男になる時である
女が男になれば
女は居なくなる
女がいなくなれば
世界は終わるだろう
花の色がうつろうようにして
女はいる
もしも女がいなくなれば
世界は冷凍保存され
正式に分類され
殺され
防腐処理をされて
ピンで押し止められるだろう
女にも頭蓋骨はある
僕にも似たような頭蓋骨がある
幻想の衣をはぐれば
そこには同じ白骨がある
着る服が違うだけなのかもしれない
ただトンネルは寡黙に
この矛に対になる盾はなく
通り抜けるだけ
女にうなじで無視された時の
空気から
男は学ぶしかない
男であることの恥ずかしさを
神は父の顔を持たず
享楽する女の顔を持つ
女から産まれてくる女たちに
男が一言でも口を挟む余地はあるだろうか
そこには影を差す余地すらない
男は存在として分断されている
女から産まれ
男から分断される
だから母は男子を抱く
憐れみ
人形遊び
活動する男たちは
庭に放たれた犬
偉そうにするのは
偉くないからだ
疎外されている
女の輪からあらかじめ外されている
それでも許しを乞う男とはなんなのか
存在を許してほしいと
足掻く男たちはなんなのか
許すのは女の仕事ではない
許すのは男の仕事である
しかし男は女にこそ許してもらいたいのだ
成り成りて成り余る処ふりまわし
多すぎる言に自ら溺れる
この男とはなんなのか
しかし男はたった1人でたつとき
女を忘れ、女にもなれる
女の享楽を知る男になることによってのみ
男は世界に救われることができるのではないか
男であることをお仕舞いにすること
脱男性化すること
おっさんから逃亡すること
この視界に人間はそう多くはいない
木があり路地がある
空には闇があり点々と星がある
風が吹き
月の光が横面を照らす
海では波打ち際に白い泡がとび
砂つぶの一粒一粒は濡れてはまた風に乾かされる
男が世界に享楽を見出すとき
逃れることができたもの
その時忘れたことを
しっかり覚えておくこと
もう一度思い出さなくていいように
女を忘れ、男を忘れること
動く物、動物、静物とは逆の
もういちどそこから
物語られるよりもはやく生きること
名付けられるよりもはやく生きること
思い出されるよりはやく生きること
対極に置かれるよりはやく生きること
そういう動物たちとともにひた走り
そんな足跡たちが国土を踏み荒らし
あらゆる境界を揉み消してしまうこと
女の骨組みを愛すること
男の骨組みを愛すること
我々は踊る骨であること
動く物を愛すること
性別に踊らされることなく
お互いの骨のダンスで踊ること
互いの細胞を祝うこと
死と穴から遠ざかること
躍動と生に踊らされること
言葉を忘れ
肉の駆動を思い出すこと
忘れたことをしっかりと覚えておくこと
いつでも帰れる肉体を建築すること