宇宙ビジネスの動向
いかにして、スタートアップとともに宇宙ビジネスの活性化を図るか。スピードが鍵を握る。
〈目次〉
1.はじめに
2.分野別の動向
(1)衛星分野
(2)輸送分野
3.日本の状況
1.はじめに
近年、世界の宇宙業界は大きな変革期にあります。宇宙安全保障の重要性や社会の宇宙システムへの依存度が高まる一方で、民間企業が主体の宇宙ビジネスが活発化しています。
特に、世界各国が宇宙産業政策を推進するなかで、宇宙業界にスタートアップが参入しています。
また、宇宙ビジネスは多様化しています。大きくは、「宇宙を活用するビジネス(衛星の開発・運用・利用)」「宇宙に進出するビジネス(宇宙旅行・滞在、探査)」「宇宙活動を支えるビジネス(ロケット、軌道上サービス)」に分けられます。
欧米やアジア諸国では、各ビジネスにおいて、スタートアップが活躍しています。
2.分野別の動向
(1)衛星分野
業界のバリューチェーンが大きく変化しました。従来の衛星ビジネスは静止軌道が中心でしたが、現在は、衛星ビジネスは低中軌道が中心になってきています。そのため、製造、運用、利用を一体的に進めるようになってきました。
また、衛星分野においては、通信、放送、観測分野で商業化が進展しています。
(2)輸送分野
米国のスペースXが圧倒的な存在感を示していています。開発・運用しているFalcon9ロケットは、打ち上げコストを低下させることで、競争力を高める戦略を進めています。
また、同社はロケットの打ち上げから衛星サービスにいたるまで、垂直統合型で事業を展開しています。通信衛星コンステレーション「スターリンク」、約3400機の衛星などを用いて、通信サービスや安全保障向けのソリューションを提供しています。
3.日本の状況
日本においても、宇宙ビジネスの発展に向けて、事業環境の整備を進めてきました。特に、2015年の第3次宇宙基本計画以降、宇宙産業振興を目的とした法整備や政府ファンドによる投資が加速しています。2021年の政府の成長戦略実行計画には、宇宙に関する取り組みが明記されました。
近年、日本宇宙分野へのスタートアップの参入が加速しています。現在、80社を超えたスタートアップが、衛星データ・宇宙技術利用、宇宙旅行・滞在・移住、輸送、軌道上サービスなどの分野で事業活動を進めています。
ただし、日本の宇宙産業は、関係する科学技術の蓄積があるものの、実際の開発・実証・実装のスピードが、他国と比べて遅れをとっています。
今後、政府ファンド等からの投資の持続的な拡大とともに、開発・実証・実装のサイクルを高速化し、挽回を図っていくことが求められます。
以上