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【要約】『影響力の武器』〜なぜ、人は動かされるのか 〜

ビジネスにおける心理学の実践的な名著

著者 ロバート・B・チャルディー二


『影響力の武器』は、アメリカの心理学者 ロバート・B・チャルディーニの著書です。初版は1984年と古く、長年に渡ってビジネスパーソンに心理学の実践的な名著として読み継がれてきました。

著者のチャルディーニ氏は、「なぜ人は、こうも都合よく他人に動かされてしまうのか?」という疑問に、強い関心を抱きました。

ときには営業・販売現場に潜入し、実践と心理学の知見を交えて、独自の理論を構築していきました。

そうして生み出されたのが、以下の人を動かす6つの原理です。

①返報性

施された相手には、施しを返さなければならない。

②コミットメントと一貫性
小さな要求に「YES」と言わせれば、大きな要求にも「YES」と言わせられる。

③社会的証明
人が取るべき正しい行動は、周囲の人の行動で決まる。

④好意
好きになった相手の要求は断れない。

⑤権威
権威あるものの要求には、思考停止で服従する。

⑥希少性
希少なものは、いますぐ決断しなければ手に入らなくなる。

以降、6つの原則について、それぞれ解説いたします。


〈目次〉
1.返報性
2.コミットメントと一貫性
3.社会的証明
4.好意
5.権威性
6.希少性


1.返報性
「返報性」とは、施しを受けた相手に対し、自分も報いる行動したいと思う傾向のことです。

社会的な生き物である人間は、太鼓の昔から隣人同士で助け合って生きていました。

人類が発展できたのも、社会全体で助け合あって、適材適所の分業が進んだからです。

そして赤の他人同士が協力し合えるのは、「貸した借りは帰ってくる」という確信があるからです。

もし人間に返報性がなければ、困った人を助ける道理がなくなってしまいます。

もしあなたが、「借りは返さなきゃ気持ち悪い」と感じるなら、それはあなたが一般的な人間である証拠と言えます。

また、返報性には次の4種類があります。

■4種類の返報性
・「好意」の返報性
 好きになってくれた相手を好きになる。

・「敵意」の返報性
 敵対心を向けてきた人にお返しする。

・「譲歩」の返報性
 譲歩してくれた人には、こちらも譲歩を示す。

・「自己開示」の返報性
 情報をオープンにしてくれた人に対し、こちら
 も情報をオープンにする。

恩を返すのも仇を返すのも返報性にあたります。


2.コミットメントと一貫性
「コミットメントと一貫性」は、以下の2つの要素が組み合わさっています。

・一貫性の法則
 人が一度決定したり、ある立場を取ったりする 
 と、その後も一貫した行動を取ってしまう傾向
 のこと。

・コミットメント
 自分の意思で立場を表明し、その後の言動に
 責任感を持つこと。

コミットメントは、一貫性の法則を引き出す最高の組み合わせになります。

例えば、あなたがキャンプ道具を売りたいとしましょう。いきなり核心に迫るのではなく、まずは小さな質問から始めます。

………………………………………………………

あなた「夏も過ぎて涼しくなってくると、キャン
    プの季節って感じがしますね」

来店客「そうですねぇ(YES)」

あなた「キャンプに行くご予定はおありでか?」

来店客「行きたいなぁって思い始めたとこです 
   (YES)」

あなた「そうなんですね!キャンプの道具はもう
    お持ちなんですか?」

来店客「昔買ったのがあるんですけど、もうずい
    ぶん古くなってしまって…」

あなた「よろしければ、ご検討されているキャン
    先と、いまお持ちのアイテムを教えてい
    ただくことは可能ですか?」

あなた「教えていただければ、必要なアイテムが
    わかりますので!」

来店客「そうですか(YES)。えーっとですね、
    …」

…………………………………………………………

といった具合です。

段階的に話しを進めていくことで、相手から了解を得やすくなります。

■「コミットメントと一貫性」を活用するコツ
「コミットメントと一貫性」を効果的に使うには、次のコツを意識することが大切です。

・こちらから強制せず、相手の自由意志で意思
 表示させる


・徐々に要求をエスカレートさせる

相手に強制的に態度を取らせてしまうと、そこには責任感が生まれません。
あくまで相手が自分の意思で選択したと思わせなければなりません。

交渉術として有名な「フット・イン・ザ・ドア」は、最終目的に「YES」と言わせるために、その手前で、よりカンタンな「YES」を取りにいく手法です。この手法は返報性と言えます。

段階的に、核心にエスカレートさせていくことがポイントとなります。


3.社会的証明

「社会的証明」とは、何が正しいかを判断するとき、自分で考えるのではなく、他人が何を正しいと考えているかを基準に判断する傾向のことです。

何が正しいかは社会が既に証明してくれているので、「右にならえ」で行動すればOKということです。 

■社会的証明が見られる行動

・バブル
 大勢の人が高値で買うことで、 本来価値がない
 ものに価値があると錯覚する。

・行列が行列を呼ぶ
 他人が優れていると評価しているので、自分に 
 とっても有益と判断する。

・クチコミで店を選ぶ
 行列と同様、他人の評価によって、自分にとっ
 ての良し悪しを判断する。

現代人が1日に浴びる情報量は、「平安時代の一生分」と言われています。膨大な情報から判断するには、いちいち考えている余裕はありません。
多くの人に従うほうが安心感があります。 

■「社会的証明」を活用するコツ
社会的証明で相手を動かす場合、次の点を意識することが大切です。

・相手に似た属性の人の行動を示す。

・ビジネスの場合は、企業色を薄める。
 口コミ等。


他人の行動が参考になるのは、その他人が自分と似たような境遇だからです。例えば、北海道の人にとって、沖縄で人気のタイヤは参考になりません。

またビジネスの文脈で考えた場合、利益相反関係になりやすい「顧客」と「企業」は、別の立場になります。
そのため、同じ顧客の立場からの「クチコミ」は、あらゆる企業メッセージより勝るのです。

4.好意
「好意」は、非常にシンプルです。好きになった人の要求は断りにくいということです。


ここでの「好意」は、恋愛感情だけでなく、友情や尊敬のようなプラスに働く感情すべてを指しています。

好意を勝ち取るには次の6つのアプローチがあります。

■好意を勝ち取るためのアプローチ

・外見の魅力(ハロー効果)
 見た目が良いほど評価が上がる。身だしなみに
 は注意すべし。

・類似性
 人は、同じ条件であれば、共通点がある人を好
 きになる。共通点を持つ相手のお願いは断りづ
 らい。

・ほめる
 好意の返報性により、好かれた相手を好きにな
 ってしまう。そして「ほめる=相手へ好意を寄
 せている」のシグナルになる。

・馴染み(単純接触効果)
 接触回数が多いことは、その対象物が安全であ  
 る状況証拠になる。だから馴染みのある人や物
 を好きになる。

・協同作業
 「同じ釜の飯を食う」のように、共通の目標に 
  向かって協同した相手を好きになる。

・好ましい何かと関連づける(連合)
 好ましいイメージのもの(例えば美味しい食べ
 物)を関連づけるだけで、あなたの印象もプラ
 スの評価を受ける。

脳は複雑なようで、意外と単純です。テレビCMに好感度のタレントが出ていれば、そのタレントが手にしている製品まで好印象を抱いてしまいます。

仮にあなたや製品に魅力はなくとも、他の魅力ある何かに近づけたり関連づけたりするだけで、その好意にあやかることができます。

■「好意」を活用するコツ

「好意」で相手に要求を通すときは、2通りの方法があることを認識しましょう。

・あなたに好意を持たせてから、要求する。

・最初から相手が好意を抱いている人に、要求さ
 せる。


もちろん、あなたが相手の好意を勝ち取るために努力するのは素晴らしいことですが、既に好意を持たれている人にアプローチさせた方が早いかもしれません。

5.権威性
「権威性」は、相手を無条件に服従させる力です。「相手の意見が正しい」あるいは「この人は権力がある」と見て、何も考えずに言うことを聞いてしまう状況を作り出す力です。


権威は、必ずしもその人の 本当の実力を映す鏡ではありません。権威は着飾ることができるのです。

権威性を引き出す3つのトリガー
・肩書き
 役職や勤め先のネームバリューが権威となる

・服装
 白衣やスーツなどを着ると、その服が持つ権威
 まで着ることができる。

・装飾品
 高価な装飾品により、社会的地位の高さによる
 権威を印象付ける。

ビジネスでは、肩書きだけでなく、本来の実力を正当に権威付けするために、

・導入事例

・受賞歴

・業界の権威によるお墨付き

などをアピールするのが効果的です。 

■「権威性」を活用するコツ

「権威性」をビジネスで実践する際、見落とされがちですが、「わたしはあなたと利益相反しない」とアピールするのが重要です。

企業と顧客が利益相反の関係にある場合、顧客は企業の言葉を100%鵜呑みにはしません。 

企業に丸め込まれないように慎重になるからです。顧客にとってはメリットのある提案をこころがけましましょう。

6.希少性
人は「希少性」につられて購入してしまうことがあります。

「役に立つか、立たないか」という冷静な思考では押し出され、「いま買わないと、2度と手に入らなくなるから」という理由で買ってしまうのです。

「希少」というと、物理的な「数量」が少ないイメージを持ちますが、ここでの希少性は手に入りづらい環境全般を指します。「時間」や「場所」が限定されている状況もまた希少性です。

■主な希少性の種類

・「数量」の希少性
 生産数、販売数を絞る。品切れ状態を作る。

・「時間」の希少性
 購入可能な期間を設け、それ以降は購入不可と
 する。

・「場所」の希少性
 特定の地域、会場、あるいは販路でしか購入で
 きない。

「いま買わなければ、もう手に入らなくなる!」と感じさせる要素は、何であれ希少性として機能します。

■「希少性」を活用するコツ
希少性を活用する際は、次の2つを強調することが大切です。

・元々は手に入りやすかったが、現在は手に入り
 づらくなった。


・手に入りづらくなった理由は、需要増(人気)
 による。


どちらも、希少性がより魅惑となります。
元から供給量が少ないフカヒレやアワビより、近年になって供給量が減ったうなぎに心惹かれるのは、この2つの条件を満たしているからです。


参照元: 「社会人の教養」Webサイト

以上

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