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噤みの午後 Diary

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「噤みの午後日記」の続編。ただし身辺雑記厳禁。
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#映画

映画「US」と小林敏明「故郷喪失の時代」(文學界 2019年6月号)

映画「US」と小林敏明「故郷喪失の時代」(文學界 2019年6月号)

今ミュンヘンで公開中の映画「Us」(ドイツでの題名は「Wir」)は、ホラー映画の形を取りつつ、そして実際に観てみるとすごく怖いわけだけれど、現代米国社会への批評をこめた風刺劇でもある。

監督はJordan Peele。前作の「Get out!」もホラーにして社会風刺、怖くて悲鳴を上げつつも、鋭い批評性が感覚的な恐怖と絶妙のバランスをとって、観終わったあとには、なぜか爽やかで力強い印象が残るものだ

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ミュンヘン映画祭の拾い物:リリカルでエピカルな映像の詩「コレスポンダンス」

ミュンヘン映画祭の拾い物:リリカルでエピカルな映像の詩「コレスポンダンス」

先週からミュンヘン映画祭が開かれている。かつての栄光はすたれ、いまではベルリンやヴェニスの後塵を拝する感もあるが、今年はソフィア・コッポラと、Breaking Badで名声を確立したブライアン・クランストンを目玉のゲストに招いて、連日市内各地の映画館での上映が売り切れ続出の盛況を博している。

僕も大体毎日、ときには一日二本観ているが、とにかく世界中の映画が(ドイツ映画も含めて)英語の字幕付きで観

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