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Burton side 5

シャワーを終え、新しい服を借りた。
カリーナが気を利かせてくれてのか洗濯されているようだ。
シャワーを終えてみれば自分は先ほどまでだいぶ酷い身なりをしていたなと反省した。
リビングの方から話し声が聞こえた。ウォルターらしき太い重低音の声も聞こえる。

B「ウォルター!」
W「俺を探していたらしいな、なんだ」
B「あの…えっと、相談したいことがあるから二人で話せるかな」

ソファにはダミアンの姿もある。
何も怪しむことなく頷いてくれたウォルターに感謝しながら、カリーナにシャワーと服のお礼を伝えて建物を出た。
建物から離れ、海岸線に沿って敷かれたコンクリートを歩く。

ここなら誰かに話を聞かれる心配はない。
そしてウォルターがもしダミアン側だった場合に攻撃される可能性もある。
見晴らしがいいここなら単純な速さで逃げ切れる。

W「なんだ。改まって」
B「ダミアンのことなんだけど」

恐る恐る話した。
ダミアンがテロ計画によってスラムの住人を巻き込み、それを政府の特殊部隊に捕まえさせて新型ウィルスワクチンの実験台に使おうとしていることを。

W「…それは、確かな筋か」
B「うん」

ウォルターが腕を組む。
筋肉に覆われた腕は丸太のようだ。
深く唸っている。顎に手を当てたりと、かなり困惑しているように見えた。
ということはウォルターは何も知らないのか。

W「俺の主観だが、ここ最近のダミアンを見ていてお前の話は真実だと思う」

ウォルターが俺を見た。真っ直ぐな目だった。
俺を騙そうとしたり攻撃しようとする目ではないと確信できた。

B「ダミアンの作戦を阻止したい。手伝ってくれないか」

ウォルターの眉がわずかに動いた。しばらくの沈黙。
ダミアンの作戦を今までサポートし続けたウォルターだから、情はあるかもしれない。

でも、スラム街の住人に最も慕われているのはウォルターだ。そして彼自身も、住人たちのことを大切に思っている。子供たちは自分の本当の子供のように、大人たちは自分の古い友人のように接しているのを知っている。

B「ウォルターの助けが必要なんだ」

海面を見下ろすウォルター。
月明かりが逆光になり表情はよく見えない。そしてふと顔を上げた。
厳しい顔つきが照らされて見えた。

W「俺は、子供たちが安心できる国にしたい。…出来ることをしよう」

大きな身体で人一倍の優しさを持っている俺の師匠は、最高にカッコいい男だった。