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Carina side

C「ダミアン…!ダミアン!」

何度呼んでも反応はなかった。意識があるのかさえも分からない。
ウォルターが急いで窓を開け、私をダミアンから引き離した。
突然の吐血は新型ウィルスの可能性が高い。
もしそうであれば私たち3人も危ない。
それでも私はダミアンから離れたくなかった。

C「いや!ウォルター離して!」
W「ダメだ」

ウォルターの力には敵わない。力いっぱいに抵抗しているのにびくともしなかった。
バートンがドアを開け、ウォルターに肩で担がれて建物から出された。
バートンがドアを閉め切る。

B「あれは…」
W「感染しているのだろう。…燃やそう」

何を言っているのか分からなかった。ウォルターを見上げる。しわの寄っている眉間は、いつもより深く影を落としている。

C「燃やすって…ダミアンが中に!」
W「だからだ。ダミアンごと燃やす」
B「カリーナ…集団感染は起こしたくない。分かってくれ」

バートンが私を見た。
眉を下げ、口元はつらそうに歪んでいる。
きっと私も同じような表情をしているんだろう。

W「バートン、カリーナを頼んだぞ」

離れているように、という手振りをしてウォルターは口元をハンカチで抑え片手にジッポを持ち、また中に入っていった。
しばらくして、パチパチという小さな音が聞こえてくる。先ほど開け放たれた窓からは焦げ臭い煙が細く上がり出した。

C「っ…」

まともに見ることができなかった。
思わずバートンの肩に顔を埋め、耳を塞いだ。何も見たくない。聞きたくない。

B「…カリーナ、ごめんな」

なぜバートンが謝るのか、私には分からなかった。