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Burton side 4



言われた通り下水道を進み、赤い布がくくりつけられた梯子を探す。
もうどれくらい歩いただろうか、あの店からスラム街と呼ばれる地区までは歩いて20分くらいかかるはず。
手元の懐中電灯と、時折備え付けられている小さな電球が頼りだった。

今頃あの店はどうなっているのだろうか。
あの3人のことだ。きっと上手いことやるはずだ。
そう自分に言い聞かせていると、視界にひらりと揺れるものがあった。

B「これか…!」

ボロ布が引っかかっているだけのようにも見えるが、よく見ると簡単には外れないよう工夫されている。人為的に付けられたものだ。
やっと地上に出られると思うと体は早く動いた。梯子を登り、金属製の蓋を押し上げる。重く擦れる音がして、隙間から夜の柔らかい月明かりが差し込んできた。
そして新鮮で冷たく感じるほどの空気。地上だ。念のため辺りを確認してから体を出す。誰もいない。

B「はぁ…きっつ…」

一息つき蓋を元に戻す。
顔の汗を手の甲で拭って、すぐにレジスタンス軍の拠点に走った。

ダミアンの裏切り行為が真実なのか、確認しなければならない。ウォルターや他のみんなは知っていることなのか、俺だけが知らないのか何もわからない。
無知がどれだけ怖いことか、俺はよく知っている。

今日は満月だった。夜にしては道が明るく、急いでいる俺にとってはありがたかった。

スラム街も更に奥、海に面した廃工場を根城としているのが俺たちのレジスタンス軍"アプライト"だ。
工場員たちの休憩室や談話室のようなものもあるから、生活するにはわりと快適だ。
アプライトには家がないものたちも多く、そういった者達はここで寝泊りをしている。

まずは談話室に向かう。この時間ならまだ起きている者達も多いはずだ。
カリーナかウォルターが起きていてくれたら、希望的観測が頭を占める。

B「なあ、ウォルターいるか?」

談話室のドアを開けるなりそう言い放った。部屋には4人ほどがおり、酒を飲みながらカードゲームに興じている。
ウォルターやカリーナの姿はない。

「さっきまでいたんだけどな」
「いつもの筋トレじゃねえか?」

口々に3人が喋り出す。顔を見る限りかなり酔っているようで当てにはならない。
ふとソファで寝転びながら新聞を読んでいた男が声を上げた。

「カリーナかダミアンのところだと思うぞ」

声がはっきりとしているから恐らく酒は飲んでいない。ありがとう、と口早に伝えて部屋を後にした。

カリーナの部屋は事務室だったところを改良した工場から出てすぐ隣の小ぶりな建物だ。ダミアンと共に暮らしている。
建物に近づくと、窓から明かりが漏れている。
誰かしらいる。ドアを三度ノックした。中からカリーナの返事。ドアが開いた。

C「バートン、どうしたの?」
B「ごめん、ウォルターいるかな。急ぎなんだ」
C「ダミアンと会議してるよ。次のテロ計画について」

まずい。そのテロ計画を実行したら、俺たちだけじゃなくスラム街の住人まで政府の特殊部隊に捕まってしまう。
しかも得体の知れないワクチンの実験台にされるのだ。

B「うっ、えっとどうしよ…あーーえっと」
C「ふふっ…中で待つ?シャワーも浴びたほうがいいと思うよ」

そう言われて下水道を通ってきたのを思い出した。もしかしたら、いや確実に臭いだろう。
途中で慣れてしまっていたが最初に下水道に入った時の悪臭を思い出し、少し気持ち悪くなった。

B「…お言葉に甘えて」
C「どうぞ」