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【読書レビュー】十三番目の女神は還らない、七番目の姫神は語らない

書いていない読書レビューがあるのですが、やっぱり時間を置くと忘れてしまうので、最近読んだ本について書いて行こうと思います。

手に取ったのはタイトルが印象に残ったから、ですね。
あと、この先出してゆくと思うのですが、前に読んでいる2作が同じ作家さんだったからという理由もあります。
棚にあった作家の本片っ端から読んでいく性格なので……。

今回は2作同時に紹介してゆきます。
いつもは【はじまり】【総括】と1巻を読んだ感想とシリーズ通して読んだ感想と記事を2つに分けるのですが、今回はこれで総括です。

まず、この2冊はタイトルが違いますが、世界観は同じです。
一人の転生者が舞い降り、世界に繁栄をもたらしたものの、転生者と魔術師が世界を支配する世界に変わってしまった。
その転生者のことは【一番目の神】と呼ばれ、その後の転生者は二、三と続いてゆきます。
【一番目の神】の独裁を打ち破ったのは【十三番目の女神】。
【十三番目の女神】が倒し、女神を通じ建国した国が”イディス・ノア”。物語の舞台になります。

もう一つ覚えておかないといけない世界観があって、二~十三番目の女神は各国を見守っているらしいのですが、その”神託”を受ける存在がいます。
それがイディス・ノアでは一年に一人しか誕生しない姫神。
姫神はランダムに誕生し、金髪金目という特色を持ちます。
そのような女児が産まれた時は、誕生直後に施設に預けられそこで育てられるとか。
何らかの理由で、イディス・ノアを出た場合は、瞳の色が変わります。
ちなみに【七番目の女神】エドナ・ギゼラの場合、巫女と呼ばれます。

この二つの設定を頭に入れた状態で本編を読まないと混乱すると思います。
更に補足いたしますと、【一番目の神】の影響により魔術は衰退し、拳銃などの武器が発展したという設定もあります。
魔術を使う者は迫害されており、魔術師狩りというのもあったそう。
要するに魔法師は悪者です。現代でいう”魔女””魔女狩り”と同等にとらえて頂ければと。


【十三番目の女神は還らない】レビュー

この物語の主人公はリセラ。イディス・ノアの王女です。
リセラに付き添っている女王騎士ルパートがヒーローですね。

リセラはイディス・ノア王国の王位継承権第一位。
次期女王になる存在です。
ですが、彼女はちょっと俗世的な性格があって、下町で買い食いをしたりと庶民生活を楽しむところがあります。

過去にリセラの叔母が女王に反感を持つ貴族を束ね、謀反を起こす大事件がありました。
その際、女王とリセラは命を狙われました。その際、避難先としてルパートの実家であるノヴァーク伯爵家にかくまわれていました。
その影響もあり、リセラは庶民生活を楽しんだり、歴史冒険書にハマったりと、ノヴァーク伯爵家での生活は彼女の人格を決めた出来事だと思います。

当時のルパートも同じく、家にリセラがやって来たことで、人生が大きく変わります。
彼はリセラのことが好きなんですよね。
でも、身分の差もあり、リセラと結婚することは出来ない。
その気持ちを遠まわしに打ち明けたとき、リセラはルパートにこう伝えました。
「絶対に不可能であれば諦める。でも、自分の力で手に入れられそうだったら最後の最後まであがく」
その一言で、ルパートは女王騎士まで成り上がり、リセラの護衛についたわけです。
リセラもルパートのことは意識しているみたいで、両片想いといったところでしょうか。

二人の関係はここまでにして、本編の話をします。
城を出て、庶民の生活を楽しむリセラ、それを護衛するルパート。
平和に見えていますが、イディス・ノアでは現在”姫神”が十二人意識不明になってしまう事件が発生しています。
その中にはルパートの妹も含まれており、彼は犯人を捜すため、情報収集をしたりしています。

その事件の犯人がある日、リセラを襲います。
襲われたリセラは、別人の姿で目覚めました。
それは魂と引き換えに【十三番目の神】を呼び出した聖女ノア。
四百年前の出来事なのですが、ノアの肉体は朽ちることなく礼拝堂に収められています。
物語の冒頭、リセラが城から出て庶民生活を楽しんでいたのは、その礼拝堂を見るためでもありました。

事情も知らない人からすれば、四百年眠っていた聖女が目覚めたことになるので、その場は騒然。
自分はリセラだと周囲に説明しても、どうにもならない。
ルパートに説明することでようやく理解してもらったわけです。

ノアの肉体で何故リセラが目覚めたのか、意識不明になった十二人の”姫神”の事件、抜け殻になったリセラの肉体――。それらの謎を解き明かしながら、リセラとルパートの距離が近づいて行く、そんな恋愛ファンタジー小説でした。

感想としては、恋愛ファンタジー+ミステリーで、真相に近づいてゆくごとに面白くなってゆくのですが、その間にリセラとルパートの過去をちょいちょい挿入してゆくことで時系列があちらこちらになってしまうこと、物語の世界観がとっつきにくい所が残念だなと感じました。
【〇番目の神】と姫神の設定がね……。
去年からずっと女性向けラノベを読んできていますが、設定の複雑さNo.2ですかね。
ちなみにNo.1は『夢見る野菜』です。まだそれは更新されてないです。


【七番目の姫神は語らない】レビュー

こちらは”十三番目~”から二年後のお話になります。
リセラとルパートの関係がどうなったかは、完全なネタバレになるので割愛します。
主人公はセレナ。彼女はリセラと従妹の関係にありますが、家族が大罪を犯したことによりエドナ・ギゼラの修道院にいます。

この修道院はワケありな少女・女性が入る場所で、セレナもその一人です。
質素でつつましい生活を強要され、外の世界にも出られません。
世間から閉ざされた場所なのです。

最近、リセラは部下である女王騎士エミルをその修道院に使いに出し、セレナの様子を案じていました。
セレナもエミルからリセラの現状を聞いています。
リセラに祝い事があり、セレナは何か贈り物をしようと考えます。
刺繍をした布を送ろうと、苦手な裁縫に励んでいたその時、何者かに襲撃されます。
狙いはセレナで、攫われると思ったその時――。
セレナは修道院でもない、別の場所に飛ばされてしまうのです。

その世界は言葉は通じるものの、どれも文化が古く、自分がいた場所も存在していないとか。
挙句の果てに、その場に光り輝いて現れたことから”光の聖女”と民衆に崇め奉られ、セレナは困り果ててしまいます。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、ファレス公爵家の当主ライゼル。この物語のヒーローですね。

助けてもらったライゼルと会話をして、セレナはあることに気づきます。
ここは四百年前のエドナ・ギゼラなのだと。
そう、セレナはタイムスリップしてしまったのです。

居場所もないセレナはライゼルの屋敷に居候します。
そこには信託の神子であるヘルミーネも滞在しており、楽しく時を過ごすのでした。

その平穏が破られたのは、ライゼルの兄フレデリックが公爵家を訪れたときです。
フレデリックはセレナを王城へ連れて行き、女王ギゼラと面会させます。
ギゼラは建国から600年生きている”死なぬ女王”と言われています。
セレナがギゼラと面会し、彼女の秘密に触れることによって、自身の出自の真実を知る――。その間にライゼルとの仲が急接近して――。
といった内容です。

今回もミステリー要素はあります。
でも、400年前の世界ということで、物語の途中でネタバレがあるんですよね。セレナ自身も従妹のリセラの影響で歴史をかじっていて、感づいているところもあるわけです。こちら側にも開示されるので、リセラが400年前にタイムスリップして、史実が変わるのか変わらないのかが、この物語の楽しみ方かなと思います。
十三番目~で世界観説明は完結しているし、この物語から読んでも十分理解できますが、前巻から読むことをお勧めします。
理由は、大まかな世界観が端折られているため、この巻から読むとストーリーだけを追いかけるだけになってしまうからです。

もし、このシリーズが続いていれば他の国の物語もあったのかもしれませんが、その度に新しい主人公を登場させないといけない難しさがありますね。
ストーリーの進行は遅めでしたが、その分丁寧に物語が描かれているので、タイトルが気になるとか、この記事を読んでラストが気になった方は、是非手に取って読んでみてください!!

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