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北欧旅⑩【ストックホルム市立図書館】


二つの世界大戦を含め、200年以上戦火と無縁で過ごしてきた世界でも希有な国だけに、中世の古い建造物が至る所に美しく保存されている。


シェアリング・キックスケータのLimeを使って、市内に縦横に整備されている自転車専用レーンを駆ける。旧市街エリアから少し離れると、モダンなアパートメントが整然と建ち並んでいる。


数百年にわたる都市計画によって、物件数が限られているせいもあり、人気があるストックホルム市内での住居費は、近年かなり高騰しているらしい。


 伝説の建築家アスプルンドの名建築として名高い市立図書館を訪ねた。


 90年前の建造物とは思えない美しさ。円形の3階建ての礼拝堂のような造りの書棚は、キューブリックSF映画の宇宙船内部のようだ。書棚の裏側に小部屋が作られており、世界の様々な言語の詩集が、集められていた。作り付けの小さな椅子に腰掛け、詩と対面する若者は、さながら宇宙船内部のコックピットに座り、無限に拡がる活字の宇宙空間をひとりぼっちで旅しているようだ。


 芭蕉の句集やカール・ポパーの「開かれた社会とその敵」も書棚で静かに新たな宇宙飛行士の乗船を待ち構えていた。

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