星降る夜のセレナーデ 第17話 心の成長
金魚のお墓は志音の苺畑のそばに造られた。
「とーたん、私も寿命が短いのかなあ……………」小さなお墓を見ながらポツリと漏らした。
「そんな事は絶対ない!」私は力強く否定する。
「志音ちゃん、手を見せてごらんよ」真人くんは志音の掌を見た。
「大丈夫だよ、生命線長いよ」そう言って生命線を指差す。
「これが生命線なの?」志音が覗き込む。
「生命線が長いからおばあちゃんになるまで元気だな」真人くんは笑った。
「本当なの?」志音は不審そうな顔で真人くんを見ている。
「生き物を飼うってことはその生き物の命と向き合うって事なんだと思うよ………」真人くんは優しく言った。
「そうだね…………」志音はゆっくりと金魚の死を受け入れた。
私は真人くんに心から感謝した。美夜子も優しい眼差しで二人を見ている。
「モヒくん、水槽どうしよう?」
「もう生き物を飼うのは嫌かい?」
「よくわかんない…………」
「俺んちでメダカを飼ってるけど、メダカは嫌いかい?」
「えっ………メダカ?」志音は何度もま瞬きした。
「じゃあ待ってて、メダカを連れてくるから」そう言うと真人くんは急いで家へ向かった。
すぐに数匹のメダカをビニール袋に入れ帰ってくる。水槽には水が入れ替えられメダカが放流された。
「メダカ可愛いね」志音は少しだけ元気になった。
志音は生き物を飼う事が少し理解できたようだ。しばらくメダカを眺めている。
3人はリビングへ入った。
「真人くんありがとうね」
「メダカは強いんで大丈夫だと思いますよ」真人くんは少し口角を上げた。
「真人くんありがとう、志音も少しずつ成長していくのね………」美夜子も微笑んでいる。
「志音ちゃんは優しくて良い子ですね」真人くんは窓から見える志音を見て微笑んでいる。
夜になって志音はつぶやいた。「喘息が治ったら良いなあ……………」
「大丈夫だよ志音、最近は発作も出なくなってきたし、金魚が半分持っていってくれたし」私は志音の頭を撫でる。
「佳子さんから聞いたんだけど、秩父にいい病院があるらしいの、だからしっかり治そうよ」美夜子が志音に言った。
「うん、分かった、私ちゃんと病院に行って治療する」頷いた。
「おばあちゃんになった志音が見たいなあ…………」
「それは無理でしょう」志音と美夜子が笑った。
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