星降る夜のセレナーデ 第109話 ロンドン
私はどうしたものかと考え込んでいた。
携帯電話にメールが届く。
『マリです、正美から聞きました。大丈夫?』
「えっ、マリまで知ってるの?」私は少し驚く。そしてマリのことが懐かしくなった。
プリズムのメンバーだったマリはバグパイプ奏者のショーンと結婚して今はロンドンに住んでいる。私は電話をかけてみた。
「久しぶりねマリ、元気だった?」
「優こそ元気だった、それより正美から聞いたけど、志音ちゃんは大丈夫?」
「毎日部屋に閉じこもってるわ」
「そうなの……………」
「学校も行けないし、高校進学も諦めたみたい」
「そうなんだ、最低ねあの社長!」
「どうしたら良いのかしらねえ……………」
「ねえ、志音ちゃんは中学はもう行かなくても卒業できるんでしょう?」
「そうね、先生たちからも、来なくて良いって言われたらしいわよ」
「酷いわ!信じられない」
「そうね…………でも現実だからどうにもならないわ………」
「ねえ、志音ちゃんをロンドンへ留学させない、ショーンと相談したの、志音ちゃんは責任を持って預かるわよ」
「えっ、留学?マリのところへ?」
「志音ちゃんは音楽を勉強したいと言ってたらしいじゃない、ロンドンには良いところがたくさんあるわよ」
「そうね………志音に聞いてみるわ」
「是非志音ちゃんにきて欲しいと伝えて」
「分かったわ、ありがとうねマリ」
私は電話を置いた。
私は留学も選択肢の一つだと思い、志音に話すことにする。
「志音ちゃん、入るわよ」ドアをノックした。
中へ入ると、ベッドに倒れ込んでいる志音を抱き起こす。
「志音ちゃん、プリズムのメンバーだったマリちゃんから電話があったの、彼女は今ロンドンにいるのよ」
「うん、知ってる、バグパイプ奏者の奥さんになってる人でしょう?」
「そう、マリが心配してくれてるのよ、そしてロンドンに留学してこないかって誘ってくれたわ」
「そうなんだ………」
「音楽の勉強をするなら良いところが沢山あるらしいわよ」
「そうなんだ…………良いかもしれないね…………モヒくんの高校へはもう行けないだろうし………」
「モヒくんに相談してみる」
「そうね」
志音ちゃんは着替えると真人くんの家へ向かった。
「カメラを持った人がいるかもしれないから気をつけるのよ」
「うん、分かった」
志音ちゃんは出かけて行った。
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