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お子さんは?
結婚3年目。
私達夫婦には相変わらず子供は居なくて、時々それぞれの友達の妊娠報告を受けて、少しだけ寂しい雰囲気に包まれながらも、それなりに楽しく過ごしていた。
週末にドライブに行ったり、美味しいと評判のレストランを予約してみたり。
不妊治療は結婚2年目から始めた。
いま、不妊の定義は性生活がある夫婦が1年授からない場合をさすらしい。
生理不順もあり、まずは漢方から。
次にタイミング療法、そしてクリニックから大きめの病院に紹介になった。
様々な検査をした。
詳しい原因は不明のまま、人工受精を1回、2回、、
そして5回目も妊娠検査薬は陰性のままだった。
これまで健康体だったのに、妊娠を望み出来なかったら急に「患者」になった。
患者さんは他にも何人も診察室の前に待ち、先生は殆ど私の顔も見ず、流れ作業のように診察台に上がり、股を開く。
超音波プローブを挿されるのにも、淡々とした診察の流れにももうすっかり慣れたのに、、
妊娠検査薬の陰性には、慣れない。
期待しなければ落ち込まない。
ダメ元。ダメ元。
、、気持ちをつくるのに、、
陰性を前に、心は毎回瞬く間にしぼんでゆく。
妊婦さんを見て、
子供を連れているお母さんを見て、
私と何が違うのか、私には何が足りないのか、
考えてしまう日々が続いた。
そんな折り、主人と小旅行に行くことにした。
海沿いの温泉付きのお宿。
ほかほか温泉で温まって、癒されて、お部屋で美味しいお刺身を食べて、、リフレッシュ!
妊活にもいいかも!
いや、この際そういう意識も持たないようにして、、とにかく、リラックス。しよう。
温泉からあがり、予定通り、お部屋で豪華な晩御飯が始まる時だった。
お料理を持ってきてくれた仲居さん
「お二人は結婚されてどの位なんですか。」
私たち
「3年目になりました」
仲居さん
「そうですか!お子さんは?」
100%悪気はないのだ。
たぶん。
いや、きっと。
爽やかな笑顔で尋ねられている。
ただの世間話の流れ。
深い考えはないし、こちらが
「まだなんです!」
と笑顔で言って終わればいいだけ。
、、なのだけど、、
心は勝手に動き出す。
え、、、お子さんは?って、、
本当は居るけど預けて二人で来ているパターンを想定して聞いている、、の?
不妊パターンとか、
そもそも病気で子供を作れないことは想定していない、、の?
心が黒いもやに包まれるのと同時に、温泉で温まった身体が急速に冷めていくのを感じた。
実際に経験してみたり、周りに実例が無いと、分からないのかも知れない。
子供を望んでも恵まれなくて、子供の話が悲しくなるタイミングや聞かれたくない人がいること。
勿論、子供のことだけに限らない。
同じように自分が経験してないことで辛さが分からず、相手を不快にさせるような言葉を掛けてしまったことがないか、、ふと恐くなった。
全員の気持ちを汲んで生きることは出来ないけど、
誰も嫌な気持ちにさせずに生きることは出来ないけど。
でも出来る限り、誰かの心に土足で入るようなことをしないように、注意を心掛けたい。生きていく限り。
誰かの心の傷を悟ったら、その人が気付いた時には、傷も忘れる位楽しい気持ちになれるような、、そんな、、会話がしたい。それはあわよくば、だけど。
翌朝、二度目の露天風呂で少しだけ前向きになってから、プラスマイナスゼロなのか、もしくは少しだけプラスになった気持ちで、海沿いの道をドライブしながら私たちは二人の家に帰って行った。
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