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企業がSDGsを掲げESG投資に向かう理由


変化する企業の存在意義

近年、企業のレーゾンデートル(存在意義)が変化しています。

SDGsと呼ばれる「持続可能な開発」を目標とした社会への貢献、そしてサステナビリティ(持続性)、社会への正義性を目標に掲げる企業が増えてきました。これは一種の流行だと言い切っても良いでしょう。「サステナビリティに取り組まない企業は存続できないぞ」というコンサルの脅し文句でも良く使われます。しかし、言葉に踊らされずに本質をよく見る努力も必要です。

大きな背景には、このままでは地球環境がもう持たないという我々自身の自覚があります。「社会や環境に配慮した事業が長期的には勝つ」と、投資家が強く信じることでそこに優先的に資金が回っていくという効果もあるでしょう。

一方で、実はテクノロジー側の大きなトレンドがあると考えています。それは、テクノロジーが我々の欠乏充足ニーズを追い抜いてしまったという事なのです。

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欠乏充足ニーズを追い抜いてしまったテクノロジー

かつて、テクノロジーが未熟で、社会の欠乏を十分に満たせなかった頃、企業の目的は「社会の欠乏を埋めること」でした。お腹を空いている人にインスタントラーメンを与えることが企業戦略であり、欠乏を充足させることができた企業が成長することができました。

しかし、テクノロジーは社会の欠乏ニーズを追い越しました。今や井戸に水を汲みに行く人はおらず、蛇口をひねれば水が出ます。コンビニに行けば安価に安い食品が流通しており、単なるインスタント食品を置いておいても見向きもされません。

そこで、多くの企業は「小手先のイノベーション」に走りました。インスタントラーメンをパクチー味にしてみたり、ポテトチップスをイチゴミルク味にしてみたりと見た目で消費者の意識を引こうとしています。それ自体は悪い事ではありません。しかしそれは局所戦を戦うための戦術であり企業戦略と勘違いしてはいけないのです。

テクノロジーの本質はもっと進んでいます。今までの人類史上の成功体験からは想像できない事態が起こっています。ミッドウェー海戦並みに、「今までの戦い方」と「これからの戦い方」はまるっきり違ったものになっていることを理解しなければなりません。

今、起きようとしている事、それは、テクノロジーが「社会の欠乏充足」というポイントを追い越し、次に「地球人類規模の課題」に対して追い付こうとしているという点にあります。それこそがSDGsを目標とする経営の真骨頂なのです。

前述の小手先のイノベーションは当然必要です。しかし、今後は社会構造、産業構造のトランスフォーメーションが起こります。アマゾンがグーグルがそれをすでに起こしています。今後さらに劇的な津波となって訪れます。

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今こそ必要な産業構造のトランスフォーメーション

企業経営の本質は小手先のイノベーションと同時に経営モデルを変革し「産業構造のトランスフォーメーション」を積極的に仕掛けていかなければいけません。その際に起きるのは、パクチー味のインスタントラーメンではなく、人工培養肉と植物工場による「第一次産業の完全な工業化」かもしれません。

地球環境の変化は人類規模の課題ですが、それに対してもテクノロジーは解決に向かって突き進んでいます。近いところでは、気候変動を予測し、対策案を示してくれるようになるでしょう。数十年スパンで見れば、最終的には気候変動技術まで登場するかもしれません。それを可能にするのはスパコンの15億倍のスピードを持つ量子コンピューターと現在の1000倍速い5Gネットワーク網になるでしょう。

例えば、致死の病も同様です。ガンの早期発見技術は進化し治療方法も確立しつつあります。つい最近は血液1滴ででガン診断ができる技術の商用化が発表されました。これはいずれ尿1滴になり、唾液1滴になり、コストが下がり、毎朝ガン診断ができるようになります。ガンも、エイズも、エボラ出血熱も早晩致死の病ではなくなります


コモディティ化する既存産業

テクノロジーが進化し、地球人類規模の課題を解決しようとしてる時だからこそ、企業にはSDGsを目標として掲げることが求められるのではないでしょうか。そしてそれを標榜しないともはや企業には存在意義がないのです。なぜならテクノロジーによって大半の部分は完全にコモディティ化しているからです。

例えばメガバンクを見てみます。まぁ、青も赤も緑もサービスに違いがないことが分かるでしょう。たとえ赤のメガバンク行員が青のメガバンクに転職してもやることは大して変わりません。これは金融庁の規制環境だけではありません。テクノロジーによりメガバンクの業務は完全にコモディティ化されてしまっているのです。だからどこに行っても同じサービスになるのです。

ほとんどの既存産業における伝統的企業はこれと同じことが起きています。テクノロジーの力によってその産業の進化は行きつくところまで行ってしまったからです。これらの企業はサービス自体が進化することは望めないので巨大資本化して効率化すること、業界全体としては縮小均衡していくことが戦略になっています。

では、隣の会社でも同じことができるのに、なぜその会社で働く意義があるのでしょうか。どんな人生の目的がその会社に所属することで達成でき、何が人生の意義になりうるのでしょうか。もはやコモディティ化されたテクノロジーにより人類の欠乏充足はどの企業でもできます。しかし、人類社会規模の課題へのアプローチはそれぞれの企業の特色になり得ます

つまり、これからは地球人類規模の課題を掲げ、業務の全てがこの壮大な目標につながっているぞという事を見せられないと社員のつなぎ止めもできない時代なのです。


求められるマインドの変化

企業の存在意義自体がも変わっています。新しいスタートアップも次から次へと出てきます。過去の成功体験は通用しません。早急に経営陣のマインドをアップデートできた企業から変わっていくでしょうし、マインドが変化できない経営陣には早急に退場していただいた方が良いかと思うのです。

コメント 2019-11-30 132943


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