2-19 村のボドゲ大会
今日は不定期開催イベントの日。今回のテーマはボードゲーム。イベントエリアにある体育館の2階で様々なゲームを行い優勝者を決める大会だ。
企画担当「まずはルールの説明です。今回の参加者は16名で、4人ずつ合計4つのリーグに分かれて戦ってもらいます。」
企画担当「各リーグ上位2名の計8名でトーナメントを行います。各リーグとトーナメントが何のゲームになるかはそのときのお楽しみ!」
企画担当「今回は大会初参加となる悠介と颯人の若者コンビの活躍にも期待ですね!」
悠介「うわっ、プレッシャーだよ…。」
颯人「なんか恥ずいな…そんなに出る気なかったのに。」
悠介「迅さんに最初ぐらい出てみればって言われたんだよね。」
颯人「…ああ。」
企画担当「では、リーグ表の発表です!」
布で隠されていた手書きのリーグ表が開かれた。悠介と颯人は違うリーグだった。
颯人「俺らが戦うとしたらトーナメントの決勝かな。ま、そこまで行かねえと思うけど。こういうゲームで大人に勝てるわけないって。」
悠介「まあ楽しめたらいいよね。」
リーグ戦が始まり、それぞれのテーブルで熱い戦いが繰り広げられた。悠介は元々こういったゲームが好きだったこともあり、無事にリーグを突破した。
しかし、颯人はあまり得意ではなく、そもそも優勝するつもりで参加していないためあっさり負けてしまった。
颯人「まあこんなもんだよな。悠介すごいじゃん。頑張れよ。」
悠介「ありがとう颯人。」
悠介(…あっ、そういえば、颯人のリーグから勝ち上がった人…敦志さんだっけ。)
悠介(確か辛い経験があって、中々心を開けないでいるって…。こういうイベント参加するの意外だな。でももしかしたら心を開こうと頑張ってるのかも…。)
トーナメントの種目は悠介が元の世界で一番得意なものとほぼ同じ内容のゲームだった。順調に勝ち進み、ついに決勝。
村人A「おお、すげえ!悠介くん決勝だよ!」
村人B「敦志も頑張れ!子供だからって手加減すんなよ!」
決勝の相手は敦志だった。どうやらこういったゲームが強いようだ。試合開始前、お互いが見つめ合う僅かの時間に、悠介は敦志の目つきに試合への覚悟以外のものを感じた。
悠介(…?)
企画担当「それでは、始め!」
結果は敦志の優勝だった。周りも、今まであまり周りとの交流をして来なかった敦志が集まりに出て来たことがとても嬉しかった。
その日の夜は、打ち上げパーティーが開かれた。
村人A「すげえじゃん敦志!そんな強いのに何で今まで参加しなかったんだよ!」
村人B「なんか敦志がようやくこうやって出て来るようになってくれて俺は嬉しいよ!」
敦志の周りにたくさんの人が集まっていた。同じ経験を経てここにやって来た仲間として、皆敦志とも話がしたかったのだ。
村人A「なあなあ、どんな男がタイプなんだ?ずっと気になってたんだよ。」
村人B「○○みたいなガチムチ系?それとも××みたいな筋キン系?」
敦志「いや…まあ…ははは。」
村人A「あ、いきなりグイグイ行きすぎたか?すまんすまん。」
村人B「あんまりこういうエロの話とか苦手なの?」
敦志「あーまあ、そうっすね…。あんまり…。」
颯人「…?」
〜その夜〜
大会の打ち上げが終わり、家で休んでいた悠介の元に、一人の男が訪ねて来た。
敦志「こんばんは。」
悠介「あっ、こんばんは。」
少しよそよそしい態度でやって来た敦志は、悠介に招かれると座布団にゆっくり座って少し黙った。
敦志「突然ごめんね。今までほとんど喋ったりしたこと無かったのに。」
悠介「いえ、来てくれて嬉しいです!今日はありがとうございました。決勝、すごい楽しかったです。」
敦志「ありがとう。…僕もすごく楽しかったよ。」
敦志「…実は悠介くんがこの村に来たときからずっと話したいなとは思ってたんだけど、なかなかきっかけがなくて…。」
悠介「え、そうだったんですか。」
敦志「今日、大会を通して少し関われたから、今ならお邪魔しても平気かなって思って。」
悠介「そんな、別にいつでも良かったですよ?僕の方こそ今まで全然話に行かなくてすみません。僕が話しに行っていいのかなって思ってて。」
敦志「まあ、話しかけづらかったよね。」
悠介「…でも、こんな風に話してくれて良かったです。」
敦志「…うん、きっかけも出来たし…多分悠介くんは話しやすいのかもしれない。」
悠介「ありがとうございます。にしてもゲームお強いんですね。僕決勝まで行けたのに最後は全然敵わなかったです。」
敦志「ああいうの得意だったんだよ。」
少し沈黙が流れる。そこで、気になっていたことを思い切って言ってみた。
悠介「…敦志さんは、元の世界にいたときゲイでどんなことが辛かったんですか?」
敦志「………。」
悠介「あ、ごめんなさい!やっぱりまだそういうのは早かったですね!」
敦志「いや、大丈夫。こんな若い子に気を遣わせちゃってごめんね。」
敦志「…今日はもう帰るよ。もし良かったらまたよろしく…。」
悠介「あ、はい!お休みなさい。」
何か言いたいことがあるような素振りを見せながら、敦志は帰って行った。
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