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2-26 修司の思い

迅「いや…生贄目的以外でのノンケの入村は認められていないはずですが。」

村長「分かっておる。じゃが少しだけ許しておくれ。これは大事な機会なんじゃ。」

村長は修司の方を向いた。

村長「修司…今は村に潜んでおったノンケを殺そうとしておるところじゃ。ここはゲイだけの村じゃからな。」

修司「えっ、ころ…!?」

村長「修司の身には何も起こらんから安心せい。それでじゃ、こいつは昔にゲイを差別しておったんじゃ。じゃから今の状況は因果応報じゃな。」

村長「かたや修司、お主は悠介がゲイだと知ってもなお友達でいたようじゃな。どんな気持ちだったんじゃ?」

修司「…。」

少しの間修司は考えた。その様子を見て、悠介の鼓動はどんどん激しくなっていった。

修司「…僕は、悠介がゲイだとかは関係なくて…ただ気の合う友達として一緒にいただけです。」

村長「もし悠介から手を出されたりしたらどうしておった?俺に手を出すなよ、などということを言ったことはないのか?」

千紘「そうよ!相手がノンケだって分かってたら手なんか出さないわよ!なのにノンケはバカの一つ覚えみたいにすぐ襲うなよとか言って。あなたもそんなこと思ってたんじゃないの?」

修司「いや……もしそうなったら…断るとは思いますけど、それを悠介が分かってくれたら付き合い方は変わらないです。」

修司「悠介からしたら、僕がゲイの可能性もあるわけですし。でも、悠介はそういうことはしそうにないって思ってました。」

村長「…なるほど。」

千紘(…ふーん、割とちゃんとした答えね…。)

村長「同性が好きな人間のことをおかしいとは思わんのか?子供が産めないんじゃぞ?」

修司「いえ…子供を作るだけが人の役割じゃないと思いますし。」

村長「いじめの標的が自分に向いたらどうしておった?」

修司「…それは…んん、なんとか上手くやっていくしか…。」

村長「それが出来ないのがお主らノンケの差別ではないのか?ゲイの味方をする者も総じて排除しようとするではないか。修司もいじめを受けそうになったら悠介を突き放すに違いない。そもそも今回のこともそれが…。」

悠介「もうやめてください!!!」

迅「っ…悠介!」

悠介「修司は…!そんな…!ヤツじゃない…!僕が…!一番…!分かってる!」

修司「ゆ、悠介…。」

悠介「僕が身を引くしか無かったんだ!修司がいじめられないためには!それしか!方法は!あああああ!!!」

何かが吹っ切れたように地面にうずくまりながら叫ぶ悠介。集合はすぐに悠介に近付き、膝をついて話した。

修司「悠介…。改めてごめん。言い訳にしか聞こえないと思うけど…本当に悠介がゲイかどうかなんて関係なかったんだ。だからこそあのとき…ゲイなんかじゃないって…何も考えずに…。」

悠介「違う!僕が悪いんだ!修司の優しさに甘えて…何も出来なかった自分が…うう…!」

千紘(悠ちゃん…。)

修司はうずくまる悠介の左腕を掴んで手繰り寄せ、握手するように手を握った。

千紘「ちょっと…いい感じの雰囲気にしないでよ。10年間ここでノンケを断ち切って来たんだから…。」

颯人「悠介…。」

ここで迅がこの空気を断ち切るように切り出した。

迅「だから何だって言うんだ?別にそりゃいいノンケもいるだろう。ゲイを差別しないノンケもいるよ。」

迅「でも、そうじゃないノンケが大半だろ。直接的にじゃなくても避けたり、無神経なことを言ったり、噂を広めたり、そういうやつばかりじゃないか。」

迅「千紘、ノンケを許さないという気持ちを思い出せ。この子が今言ったことが本心かも分からないし、本心だとしてもこの子だけだ。ノンケ全てがこうなったわけじゃない。」

千紘「…分かってるわよ。」

村長「…悠介、すまんかったな。押し殺しておった気持ちを言わせてしまって…。じゃが、修司の考え方は聞いておきたかったんじゃ。」

悠介「…。」

村長「迅、この修司の言っておることは恐らく本当じゃ。」

迅「…そうですか。」

村長「そうじゃ。…お主らはやはり良い友人同士じゃな。ワシが思っておった通りじゃ。じゃから、お主らには…。」

村長が何かを言いかけたそのとき、住居エリアから人が近付いてきた。

典明「こ、これは…。」

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