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2-22 敦志の秘密

修司「あなたは…あのときの…。」

村長「起きれるか。」

修司は僅かな体力を振り絞って起き上がった。

村長「付いて来なさい。」

村長はどこかに向かって歩き出した。修司はそれに付いていく。

村長「まったく無茶しよって…。ワシが来んかったらどうするつもりじゃったんじゃ。」

修司「…ごめんなさい。」

時間はもう夜8時を回っていた。

修司「あの、あのときのおじいさんですよね?悠介と別れたときの…。」

村長「そうじゃ。悠介はワシらの村で元気にやっておるよ。」

修司「本当ですか!良かった…。っていうか、本当にあるんですね、その村…。」

村長「あると言っておるじゃろう。ま、実際にその目で見てみんと信じられんわな。」

そういうと、村長は暗い洞窟の中に入って行った。

修司「え、ここを通るんですか!」

村長「気を付けて付いて来なさい。」

しばらく暗闇を歩くと白い光に包まれる感覚がして、その後少し歩くと洞窟を抜け出した。

修司は村にやってきたのだ。

しかし、村が騒がしい。修司が村に来る少し前、村で大変な事件が起こったのだ。

〜少し前〜

その日、いつものように日中の仕事を終えて家で休んでいた悠介は、ふと本棚に目をやった。すると、本と本の間に何か薄い冊子のようなものがあることに気付いた。

悠介(…?なんだろ。)

手に取ってみると、「盲点上の親友-真相編-」と書いていた。

悠介(え?真相編?何これ、どういうこと?)

驚いてすぐに本を開いた。内容は、前回ハッピーエンドで終わった話の続きからだった。

ーーー

宇宙人と地球人、仲良く手を取りあって終わったかと思われたこの物語には続きがあった。

今まで地球人に差別されていた宇宙人たちの反乱が始まったのだ。

仲良くなり、警戒を解いた地球人を殺すのは容易なことだった。恐ろしい勢いで地球人を滅ぼしていく宇宙人。この怒りはもはや誰にも止められなかった。

もちろん元々地球人に危害を加えようとして地球に来たわけではない。しかし、今まで受けた仕打ちは到底許せるものではなかった。これは報復だった。

ーーー

悠介(え…これは…!?)

驚きを隠せない悠介の元に、敦志がまたやってきた。

敦志「こんばんは。」

悠介「あ…こんばんは。」

敦志は前回よりも緊張した様子で家に上がった。本のことも気になるが一旦後回しにして、悠介は敦志を家に上げた。

敦志「この前はごめんね、僕の方から家に来たのに、割とすぐ帰っちゃって。」

悠介「いえ、僕も嫌なこと聞いちゃったかなと思って!すみませんでした。」

敦志「いや、いいんだ。それが普通だと思うし。」

悠介「普通…?」

少し沈黙が流れる。そして敦志はこう言った。

敦志「この前ここにお邪魔させてもらったとき、君はこう言ったよね。元の世界ではゲイでどんなことが辛かったか、って…。」

悠介「…はい…。」

敦志「…実は、ゲイで辛かったことは、何一つ無いんだ。」

悠介「え…?でも、ここに来る人はみんな…。」

敦志「うん、ゲイで辛かったから来てるんだよね。どういうことかと言うと…。」

再び敦志は無言になった。困惑しながらも敦志が話し出すのを悠介は待った。この後に続く言葉は何も予想出来ないが、何かとんでもない言葉が来るんじゃないか、そう感じて何も言えなかった。

敦志「…俺、実はノンケなんだ…。」

悠介「えっ…。」

あまりに信じられない発言に、悠介は言葉を失った。

悠介(ノンケ…?敦志さんが…?)

またしばらくの無言。そして悠介が話す。

悠介「いや、この村にノンケの人がいるわけが…。」

敦志「うん、そのはずなんだよ。悠介くんはそう思っていても普通だ。おそらくみんなそう思い込んでるだろうね。」

敦志「この村にはゲイしかいない。ゲイが普通であり、ノンケなんかいるわけない。そういうことになってる。まるで、ゲイとノンケを反転させただけの元の世界みたいに。」

悠介「…。」

敦志「僕は元の世界ではノンケだったんだ。そして、ゲイを差別していた。」

悠介「えっ…。」

敦志「ゲイなんか気持ち悪い、同性を好きなんておかしい、そう思ってゲイを差別していた。そしたらあるとき、突然この村に召喚されたんだ。」

敦志「村長が目の前にいて、いきなり言われたんだ。ノンケだと村人にバレたらお前は殺されるって。だからゲイをのフリをしてここで生きていけって。」

悠介「そんな…。」

敦志「最初は意味が分からなかったよ。だけど、周りが当たり前のようにゲイとして話しかけてくるのを見てすぐに察したんだ。ここにはゲイしかいない。そしてノンケだとバレてはいけないんだって。」

敦志「だけど、ゲイのフリなんてとても出来ない。ゲイの考え方なんて何も分からないし、何よりあれだけ嫌っていたゲイを演じるなんてとても出来なかった。」

敦志「…だから過去にトラウマがあるフリをして出来るだけ他の村人と関わらないようにしていたんだ。」

悠介「まさか…。」

敦志「そんなある日、君がやってきた。まだ若い君なら、もしかしたらホントのことを話しても受け入れてくれるんじゃないか、そう思ったんだ。」

敦志「いい大人なのに、こんなまだ中学生の子に頼ることしか出来ないなんて情けないとも思ったけど…大人はどうしても信用出来なかったんだ。」

敦志「でも、今までほとんど誰とも話してなかったのに、いきなり悠介くんにだけ話すようになったら周りから疑われるんじゃないか、そう思ってなかなか話せなかったんだ。」

敦志「だから、この前のボドゲ大会で君が出場するって聞いて、もしかしたらきっかけが出来るかもしれないと思って僕も参加したんだ。幸いボドゲは得意だったから、参加してもまだ不自然じゃなかったしね。」

悠介「…。」

一度にいろいろなこと聞かされ、混乱してきた悠介。全く頭の整理が追いつかない。

悠介「僕は…」

そう言いかけたとき、村人の集団が家に入ってきた。

村人「ノンケを捕まえろ!!!」

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