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自閉スペクトラム症を中心とするコミュニケーション研究者とExplay!

研究者とは、世界をマニアックに探求するExplayerである。と、考えて、いろいろとマニアックな話を聞いてまわり、Explayするタネを見つけよう!というインタビューシリーズです。

今回のマニア(研究者)

藤野 博 先生
東京学芸大学教職大学院 教育実践創成講座 教授

研究としてのマニアの話

目指す世界は、Neuro Diversity=神経多様性のある社会。ASDを「病」ではなく、一種の「認知スタイル」であると考える。そもそも自閉的特性は連続体(スペクトラム)である。Neuro-Typical(定型発達)と、ASDの間には明確な線引きがあるわけではなく、グラデーションである。そのグラデーションの一部には、ASC(Autism Spectrum Condition)という特性ゾーンがあり、10人にひとりくらいいる、と言われている。

この認知スタイルを測定する「自閉症スペクトラム指数(AQ)」というものには、以下のような項目がある。

1:ほかのことがぜんぜん気にならなくなってしまうくらい、何かに没頭してしまうことがよくある。
2:パーティなどよりも図書館に行く方が好きだ。
3:他の人が気がつかないような細かいことにすぐ気付くことが多い。
4:特定の種類のものについての(車について、鳥について、植物についてのような)情報を集めることが好きだ。
5:自分がすることはどんなことでも慎重に計画するのが好きだ。
など。

こういう人、いるじゃん、周りに! という感じです。そして、また、このASDおよびASCの人たちは、認知の解像度が高いのだそうです。

美術)ミケランジェロ、ゴッホ、アンディ・ウォーホール
音楽)サティ、バルトーク、グレン・グールド
物理学)ニュートン、アインシュタイン
論理哲学)ラッセル、ウィトゲンシュタイン

上記は、自閉スペクトラム特性を持つと思われる人たち。認知の解像度が高い人たちだからこそ見える世界があるのだそうです。その高い解像度が、視覚に向くのか、聴覚に向くのか、論理に向かうのか、そこの嗜好性は個性で別れるのだとか。ただ、芸術か数理かに進むことが多いそうです。そして、それは解像度の違う人たちにはなかなか理解してもらえず、少数派であるがゆえに共感を得られる仲間が見つけられづらいという現状があります。

様式美

ASD的な行動をする人物が登場する物語を読んでいるときの脳の状態をfMRIで計測するという実験があります。すると、ASD者はASD的行動をする人物が登場する際に共感を覚える脳の反応が見られるそうです。行動、興味、活動の限定された反復的様式を好み、Autistic Mannerismと呼びます。これは、美術史の用語マニュエリスムが語源で、様式美をさします。つまり、「反復」と「洗練」を特徴とする自閉スペクトラム特性を持つ人たちの「こだわり」を、病理ではなく美学として捉えてみようという考えです。

マニエリスムの作家として、荒木飛呂彦(漫画家)の例もありました。また、小津安二郎(映画監督)の例もありました。小津の「彼岸花」のあるシーンでは、ローアングルのカメラで、テーブルの上に種類の異なるグラスがいくつか並んでいるしつらえが映っているのですが、この水面と皿の稜線が同じ高さで一直線に並んでいる、というようなこだわりが例としてあげられていました。生活のそこかしこでルーティンを持つことを重視する人は、その傾向がみられるのだそうです。

フロー状態を維持する人たち

ほかのことがぜんぜんきにならなくなるくらい何かに没頭してしまうことがよくある、という状況は、まさに「フロー状態」と同じである。

・その瞬間に行なっていることへのきわめて限定した集中
・行なっている行為と意識の融合
・自分を見ているという自意識の喪失
・自分の行為のしっかりしたコントロール感
・時間感覚の歪曲

まさに、フローです。そう考えると、自閉スペクトラム症は、極めて高い認知能力を持ち、年中フロー状態にいる人々と考えられるのかもしれません。

コミュニケーション研究としてやっていること

TRPG(Table talk Role Playing Game)をやっている。ASDは、無目的な雑談が難しい。しかし、枠組みがあり、設定がある上でのコミュニケーションは成立する。また、ロールプレイすることで役割が付与され、会話を楽しいと感ずるようになる。さらに、そうした対話をコーディネートするゲームマスターに敬意をはらい、自らそれをやってみたいと思うようになった人も出てきた。

Explaygroundでやってみたいこと

LARP(Live Action Role Play)という活動がある。
https://www.inside-games.jp/article/2015/03/14/85901.html

improvisation演劇に近いものかもしれない。これを、ものすごい高い解像度でやれたら面白そう。なんちゃってファンタジーのチャンバラごっこではなく、たとえば幕末を舞台としたものだとしたら、時代考証をしっかりやって、衣装や道具を自分たちでつくるところからやれたら、ものすごい学びになる。専門家も巻き込みながら、圧倒的な解像度と本物嗜好でやれたら、世界にも類を見ない自閉スペクトラム症の人たちの学びの体験となるかもしれない。また、当然、この活動は、Neuro-Typicalな人たちとの共創も重要になるので、Neuro Diversityの活動としても面白い。

(ケンケン)

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