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シンガポールから考えるWithコロナ時代の商機【1】対面体験型ビジネスの今後:教育

こんにちは、在シンガポールの中村です。シンガポールは、6月18日(木)深夜23時59分にサーキットブレイカー後の「フェーズ2」に入ってから、約2か月半たちました。サーキットブレイカー解除直後は、限定的とは言え、5人以下であれば外食、また非同居の友人・知人宅への訪問が可能になったことで、お茶しながらキャッチアップするだけでも「ようやく会えたね!」と、一つ一つの再会が、かなり感動的でした。直後から7月中は市中感染が若干増えたため第2波の懸念がありましたが、その後の徹底管理が功を奏し、9月5日現在の市中感染は数名以下。まずは何とか次の段階に入り安定してきたと言えます。
一方、海外ではまだ厳しい状況が続きている国も多く、例えばアメリカでは、SNSでも色々なポスティングが飛び交う中、ハーバードやMITが当面全ての授業をオンライン化することを受け、外国人留学生へのビザが大きな問題となっています。

1.オンラインvs.対面授業

生涯教育の浸透度の高いアメリカでは、大学や大学院の授業のオンライン受講は、約20年前の2000年代から既に一定比率以上で行われていたと思います。私自身、2000年前半に、海外大学院を検討する際に色々と調べ、意外に多くの大学がオンライン講座を提供していることを知り、驚いた記憶があります。ただ、当時は、やはり学位を取得するとなると「オンサイト」「通学」が一般的ではありました。一方、約15年後の新型コロナ禍の現在、あらゆる側面で「リモート」「非接触」がキーワードになる中、大学教育の提供チャネルは大きな変曲点をむかえています。
私の経験上、教授や講師が大人数の生徒に向けて、ほぼ一方的にレクチャーするタイプの授業は、オンラインに適していると思います。具体的には、一般教養科目の概論、会計等で必ず覚えなければいけない基礎知識の部分などです。先生への質問も、リアルタイムのチャットで問題無くできますので、通学にかかる時間を考えると、むしろ新型コロナに関係無く、オンラインで行う方が理にかなっているとも言えます。

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2.対面授業の必然性

では、リアルな場で行う必然性がある授業とはどのようなものでしょうか?理系でラボや特殊なファシリティーでの実習が不可欠な科目は、その必然性が分かり易いと思います。一方、文系の場合、先生と生徒同士での突っ込んだ議論を要する科目は、やはりオンラインのみでは限界があると思います。

テクノロジーの進歩で、特に一対一のコミュニケーションは、リアルさながらに出来るようになりつつあります。私自身、初対面の人だとしても、ZoomやSkypeでのリモート会議で問題を感じたことは殆んどありません。しかし複数で込み入った議論をする場合、モデレーターの力量、参加者の総数、知り合いか初対面かなどの要因が、リアルの場合と比較して、かなり重要で、こういった要因次第で、期待した成果が得られないことも少なく無い印象です。

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3.教育業界の今後

既に起こっている変化として、留学生の受け入れ制限もしくは停止があります。確かに授業の全てがオンラインの場合、その大学の所在国に行く必然性は低いです。しかし、アメリカもヨーロッパも、アジア圏とはかなりの時差があるため、アジアの母国にいながらにして、現地学生と同じ時間にオンライン授業に参加するのは、負担が大きいです。もし新型コロナが長引き、この留学生制限の傾向が続く場合、大学側は収益面でも打撃を受けます。州立か私立かによっても異なりますが、通常、留学生の学費は自国学生の3倍程度のことが多いため、これが全く無くなるのは、大学もビジネスである以上、何らかで補填していく必要があります。と同時に自国学生も「オンライン」が授業の大半を占める場合、通学型と全く同じ学費設定には疑問を投げかけています。

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個人的には、既に10年以上前から各校が力を入れている「社会人」教育の分野にどう取り組むかで、ある意味新しい商機がうまれると思っています。大学には膨大な「知」の蓄積があり、それをこのリモート時代にどう商品化できるかで、大きな差がうまれるでしょう。既にCoursera等のプラットフォームを通して、優良なコンテンツの流通が進んでいますが、こういったパッケージ化されたコースに加えて、産業界とのイベント、卒業生とのネットワーキング等、今までリアルで行っていた活動は沢山あります。これらをどうデジタル化し、体験価値を維持・向上できるか? 海外での事例を注視し、共有していきたいと思います。



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