見出し画像

新型コロナと「非対面の社会」~サーキットブレイカー中のシンガポールで思うこと【5】

こんにちは、在シンガポールの中村です。4月7日から施行されているサーキットブレイカーが、途中いちど期間の延長をはさみ、一定の効果をあげたとして、6月1日深夜をもって終了することになりました。政府発表によると、6月2日以降は3段階にフェーズを設定してシンガポールは「New Normal」の社会に向かうとのことです。

1.各フェーズ毎のポイント

●フェーズ1「Safe Re-opening」:6月2日から最低4週間。サーキットブレイカー中よりは出勤出来る業種の幅は広がりますが、あくまでも限定的。自宅勤務が可能な業種・職種は、引き続き在宅勤務を継続。日本の小中高にあたる学校は最終学年は毎日登校が可能。他の学年は週ごとに交代制。もちろん、マスク・手洗い等、厳重な感性予防の上でです。大学は7月末まで夏休み期間のため、この段階ではサーキットブレイカー中から大きな変化は無し。レストラン・カフェは、引き続きテイクアウトのみ営業可。友達と集まるのは、人数を問わず、引き続き禁止。親・祖父母の家への訪問のみ解禁になりましたが、それも大人数では無く、2人程度です。つまり在シンガポールの大半の外国人にとっては、現在とほぼ同じ生活が6月末まで続きます。
●フェーズ2「Safe Transition」:フェーズ1の進捗次第で、必需品以外の小売り、レストランやカフェ内での飲食(現時点ではテイクアウトとデリバリーのみ)、ジムが再開。出勤は殆んどの業種で解禁になるようですが、雇用者は「Safe Distance」をとれるオフィス環境と感染予防対策(定期的な消毒)を励行し、在宅勤務も継続できる体制を創ることが必須条件。
数人程度の小規模な集まりは、このフェーズ、つまり7月以降にようやく解禁になるようです。このフェーズ2は数カ月の予定。要は年末までということだと思います。6月中のフェーズ1が問題無く進めば、ようやく7月以降は、サーキットブレイカー直前の生活に近くなります。ただし、万が一にも感染状況が悪化したら、シンガポール政府は躊躇なく、厳しい規制に戻すでしょう。
●フェーズ3「New Normal」:ワクチンが出来るかがキーポイント。ビジネスイベント等が解禁されるようですが、この段階になったとしても、何千人も集まるような展示会やスポーツイベントが今までのように開催されるようになるとは、現時点では想像出来ない人が多いと思います。

画像1

2.社会の「非対面化」

今回の新型コロナによる社会への影響は、リーマンショックとは根本的に異なります。景気の悪化で経営の悪化や倒産が増えているという共通項はあるにせよ、それらが赤の他人に「感染」することは有りえません。一方、新型コロナという死に至る可能性を持つ病の感染を防ぐには、他人との接触を避けることが求められます。たちの悪いことに、この新型コロナは感染していても発病しない人もいるため、感染している人が自覚無く、他人に感染させてしまうことがあるという、ある意味、ロシアンルーレットのような状況です。しかも、一回感染しても、ヘルペスのようにウィルスが体内に居残り続け、体調不良で免疫が低下すると再発する恐れがあるといいます。まだ解明しきれていない部分がありますが、今後はこの病との共存前提での社会になる可能性が高いでしょう。

この「他人との非接触」は、人間の根本欲求に真っ向から挑戦状を突き付けています。人間は本能的に他者と共存し触れ合うことを必要としており、家族や友達と実際に会いたいというのは、当たり前のことだからだ。外国人が多いシンガポールでは、1人暮らしも多い。この層の人々は、ほぼ3か月程度、「誰にも会わない」生活になっている。大半の人は仮に単身だとしても、オフィスで働き、勤務後は友人と会ったり、色々な集まりに参加したりして、絶えず人とリアルな接点を持つ生活をしてきたため、現在の状況はメンタル的に非常にきつい。フェーズ2にスムーズに移行できれば、近しい人々との少人数での交流は解禁になるでしょう。しかし、今までのように、不特定多数がリアルな場に集まることは当分無いか、もしかしたら永遠に違った形になるのかもしれない。

画像1

3.「非対面化」で具体的に変わること

個人の生活はもちろんのこと、ビジネスにおいて、この「非対面化」の進行で変貌を余儀なくされる業態は多い。例えば:

●興行・イベント系:映画、観劇・ミュージカル、コンサート、スポーツ観戦、エキスポ・展示会事業、関連インフラ(コンベンションセンター等)
●スポーツ関連:ジム、ヨガ、ダンスのスタジオレッスン。格闘技(相撲、柔道、レスリング)など濃厚接触が前提のスポーツは今後、競技としてどうなるのだろうか?
●外食・娯楽系:レストラン・カフェ、バー、カラオケ、クラブ
●旅行関連:公共交通(飛行機、電車、バス)、ホテル、Airbnb・民泊、出張、視察系旅行、社員旅行・オフサイトミーティング
●教育関連:大学、予備校、専門学校、スキル系スクール
●金融関連:キャッシュレス、リアル店舗削減、生保レディ
●オフィス:オフィスの意味合い変容、オフィス機器、内装・レイアウト見直し、受付・ビル管理等の人員削減、出社頻度見直し。人事評価見直しコンサルやリモート業務管理関連のSaaSは大忙しだろう

上記の中には、非対面化で勃興する新しいビジネスチャンスもあるでしょう。例えば「教育」関連は、いわゆるレクチャー型で知識を得るタイプのものは、オンライン授業で十分に成立するものが多いため、遠隔からの参加者市場が生まれるだろう。一方、●●メッセや□□ショーといった見本市・展示会は少なくとも2-3年以内に、今までと同様の形での開催が復活するとは思えない。これ以外でも「対面」を重視する体質が強いビジネスほど、アナログで行われていたため、今回の新型コロナの直撃後、すぐにデジタルを活用したリモートモデルに転換できるところは少ないだろう。

こういった状況を好機に変えるのは、やはりスタートアップだと思う。ピンチをチャンスに変える発想力で、誰がどのようにNew Normal時代を切り開いていくのか、注視を続けたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?