何もかもが嘘のような気がしている。

振り返ると自分の後ろに過去の時間が積み重なっている。
何もかもが信じられないことばかりで、小説よりも奇なる事事の繰り返しの中を生きてきたことが全く信じられない。自分の人生の実感がない。
そんなこともあんなことも、何か薄い被膜を通して見ているような、ぼやけた他人事のように感じている。
いま自分がここにいることも、もう側にいない誰かのことも、全て実際にあったことなのに体感としてひどく遠い。

昔から承認欲求というものがない。

他人にとっての特別な誰かになることが私には重く、面倒くさい。
とうめいな存在でいたい。誰にでも替わりのきく替えがきく人間でいたい。
どこの誰にとっても、ただ優しいだけのどうでもいい人でいたい。特別に愛されたりしたくはない。
自分が前に出ているよりは他の芽を伸ばしたいと思うのだ。

だから自分の人生に実感がないのかもしれない。
私はたしかにここにいるのに、私という個がどこかバグったエラーの一つのように感じる。
シミュレーションの一部のような、SFのなにかのような、日常に紛れる狂気に感じる。

それはそれで面白いのだが、変人扱いされることには首を傾けざるを得ない。
私もあなたもどうだっていいただの人間で、誰も特別ではないし誰も奇妙ではない。
人ひとりに大した価値はない。そうおもいませんか。

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