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2kmの孤島 前日記2020.04.14

アイルランド首都ダブリンの中心地から離れた郊外に自分は暮らしている。
2019年末に極東より端を発した歴史的な流行病は、その支配下を極東を大きく離れこの欧米諸国を筆頭に世界を股に掛け、戦場を探し彷徨い求める傭兵団が如く所狭しと駆け回っていることに記憶は新しい。
その活躍や凄まじく、今や外に出れば血に飢えた流行病の餌食にされること受け売りであるため各国はいち早く対応を行い、人々を家の中に押し込めて嵐が吹き止むことを祈り過ごす日々であり、例にも漏れず我が住処でも脅威を封じ込めるため家から2km以上の外出が禁止となっているのである。

さてそんな時分の中でふと、それはある時なんの気もなしに夢想したことがキッカケであった。
四六時中戯れあっている情報海から一人孤島に移り住むことになったらどうなるのだろうかと?
もちろん十分な食料、寝床、親しい友も彼の孤島には十分に備蓄されている。
しかして孤島にないものは、ただ一つ「情報」だけが在庫切れを起こしているのである。

この手記はそんな情報だけが欠如した孤島において、どのような生活を送ることとなったかを記するものである。
決して、情報の在り方を批判しようというものではない。
ただ、知の源流を断ち切ったとき、何を感じ、何を考えるのかとを書き綴るものである。

さて、いよいよ短針は子ノ刻を回ろうとしている。
全ての通信機器の電波を切り孤島へ旅立つことにしよう。

そんなことを食卓で考えながら、遠足前日にも似た奇妙な高揚感と少しの不安が入り混じった心持ちにてこの前日記を記しているのである。

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