見出し画像

文鳥と恋愛関係 読書ノート#17

<著作名>文鳥 <著者>夏目漱石 <レーベル>kindle

ある日、夏目漱石の家に詩人の鈴木三重吉がやってきて、文鳥を飼えという。漱石は、三重吉に全てを一任。ある時、約束通り文鳥と籠を持ってきた三重吉は、熱心に文鳥の飼い方をレクチャーする。最初の頃は文鳥を世話する漱石だが、次第にお手伝いさんにやらせたりして、世話をしなくなっていく。すると、ある時、文鳥は息途絶えてしまった。

というあらすじだけ見ると、非常に単純なストーリーなのだが、どうも気になる箇所がある。

三重吉の小説によると、文鳥は 千代 千代と鳴くそうである。その鳴き声がだいぶん気に入ったと見えて、三重吉は千代千代を何度となく使っている。あるいは千代と云う女に 惚れていた事があるのかも知れない。

この文章が発端になるのだが、文鳥の鳴き方を漱石は2種類の書き方で表している。一つ目が、「千代千代」と漢字表記。二つ目が、「ちよ」と平仮名で表記している。

これに加えて、漱石自身の過去の「女」に突然作品中で触れることがあり、どうも不自然なのである。

文鳥を見て、過去の女を思い出す。ここにどのような伏線が張られているのか、他人から見れば至極簡単で分かりきったことかもしれぬが青二才の私は一生懸命考えてみた。

昔 し美しい女を知っていた。この女が机に 凭れて何か考えているところを、 後 から、そっと行って、紫の 帯上げの 房 になった先を、長く垂らして、 頸筋 の細いあたりを、上から 撫で 廻したら、女はものう 気 に後を向いた。その時女の 眉 は心持八の字に寄っていた。それで眼尻と口元には笑が 萌していた。同時に 恰好 の好い頸を肩まですくめていた。文鳥が自分を見た時、自分はふとこの女の事を思い出した。この女は今嫁に行った。自分が紫の帯上でいたずらをしたのは縁談のきまった二三日 後 である。

まずは、この場面。

昔紫の 帯上 でいたずらをした女が、座敷で仕事をしていた時、裏二階から 懐中鏡 で女の顔へ春の光線を反射させて楽しんだ事がある。女は 薄紅くなった頰を上げて、 繊 い手を額の前に 翳しながら、不思議そうに 瞬 をした。この女とこの文鳥とはおそらく同じ心持だろう。

この2つの場面から、

漱石はこの女性に非常に熱烈な未練があったのではないか

と推測ができる。

さらに、

文鳥との出会いを女性との再会と考え、

仕事で忙しくなるにつれて、離れていく文鳥との関係が女性と分かれていく運命にあったことと重なるのではないか。

それが私の結論である。

最後に一つ。

この小説を読んで文鳥を買ってみたくなった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?