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【4人声劇】メドゥーサの伝説

■タイトル:メドゥーサの伝説


■キャラ:

ラウラ:村の近くの森に住む美女

その瞳は見た生き物は石になってしまう


イヴァン:村の少年

眼に障害があり、視力がほとんどない


ヨゼフ:村の少年

イヴァンをいじめるが小心者


ヴァネッサ:村の少女

ある理由からラウラを恨んでいる


―――――――――――――――――――


ラウラ:(NA)

その村には…伝説がある


イヴァン:うわぁ!?


ヨゼフ:ははは!イヴァンの奴、また転んだぜ!


ヴァネッサ:あんたが脚引っ掛けるからでしょ


ヨゼフ:ちゃんと見てないのが悪いんだよ!

ま、見れないんだろうけどさぁ


ヴァネッサ:…立てる?イヴァン

手、貸そうか?


イヴァン:あ、ありがとう、ヴァネッサ…


ヴァネッサ:なんてね


(イヴァンが手を握ろうとした瞬間に、手を引っ込める)


イヴァン:え?うわっ!


ヨゼフ:ひっでえなぁ、ヴァネッサ

わざわざもっかい転ばせることないだろ~


ヴァネッサ:あんな汚い手、私が握るわけないでしょ?


イヴァン:…そうだね、ごめんよ

大丈夫…自分で立てるさ


ヴァネッサ:イヴァン、目の見えない、どんくさいあんたが役に立つ方法…教えてあげようか?


イヴァン:…僕が役に立つことなんてないよ

ほっといてくれ


ヴァネッサ:いいえ、一個だけあるの

森の中に住む化け物のこと…あんた知ってる?


イヴァン:…森に住む化け物?


ヨゼフ:あぁ…お前も噂くらい聞いたことあるだろ?

その眼を見た者を石に変える魔物…メドゥーサだよ


―――――――――――――――――――


イヴァン:(NA)

噂くらいは聞いたことがあった…村の近くの森には美しい女性が住んでいるという

多くの男たちがその美貌(びぼう)に誘(いざな)われ、一人として帰っては来なかった


イヴァン:はぁ…なら、誰が噂を広めるんだよ

こんな森の中まで入って来て…馬鹿みたいだ…

(イヴァンは不意に何かにぶつかる)

いたっ…!?…っつつ…何にぶつかったんだ…?…石像か…?


ラウラ:…どうしてこんなところにいるの?


イヴァン:っ!?…君は…誰?


ラウラ:私はラウラ…こんな森の中に一人でいると危ないわ

早く行きなさい


イヴァン:そうだね…でも、君も1人でしょ…?


ラウラ:…私は一人でも平気なの…むしろ一人でいる方がいい


イヴァン:(NA)

…僕は息をのんだ…目が見えなくたって、彼女がそうだとわかった

人を石に変える魔物、伝承(でんしょう)の通りなのか…その美しい声は僕の心を石に変えた


―――――――――――――――――――


ヨゼフ:…ほんとにいるのか?化け物なんてよ


ヴァネッサ:…いるわよ


ヨゼフ:なんでそう言い切れんだ?


ヴァネッサ:…別に…ちゃんとした理由なんて無い

ただ、昔からそう言われてて、男が何人も消えてるって記録が残ってる…だからそう言っただけ

男だけじゃないわ…小さい時私が飼ってた猫もあんたの家の犬だって消えたじゃない…化け物の犠牲(ぎせい)になったのかもよ

私はいるって信じてる…男をたぶらかして石に変える、恐ろしい魔女…メドゥーサがね


ヨゼフ:そういえば…ヴァネッサの妹も昔行方不明になったんだっけ…確か、リゼットって言ったよな…そんな危ない奴のところにイヴァンを行かせるのは…その、や、やばいんじゃないか?


ヴァネッサ:小心者ね…大丈夫よ、あいつは目が見えないんだから


―――――――――――――――――――


イヴァン:そう、僕の目はほとんど見えないんだ…


ラウラ:今だけは見えなくてよかったわね、私の目は皆を不幸にする


イヴァン:そんなことない…君の目がしっかり見えてるおかげで、僕は今森を案内してもらえてるし…君はいつからここに住んでるの?


ラウラ:…もうずっと前から

この目のせいで捨てられたの…この目は“呪い”なんだって


イヴァン:…呪い


ラウラ:詳しくはわかっていないけど、この目を持つ者…つまり私よりも美しい人間だとこの呪いが判断した者と瞳を交換する…それが唯一、この呪いを解く方法だと…そう言われてるわ


イヴァン:じゃあ、誰かがその呪いをもらうことができれば…君を救えるってことか…

でも、難しそうだね


ラウラ:うん…こんな呪い、引き受けようだなんて人は…


イヴァン:だって、ラウラさんはすごく綺麗なんでしょ?


ラウラ:…え?


イヴァン:村にも噂で広まってるよ

その目を見た生き物を石に変えてしまう恐ろしい魔女がいるんだって…

僕も最初は怖かったけど、実際はすごく優しい人だった…そんな怖い噂が出回ってるのに、皆その目を見ちゃうってことは、目が離せないくらい綺麗ってことなんじゃないかなって…


ラウラ:…そんなことないわ…それに、あなたが私を見る時なんて来ないほうがいい…

私はただ、ここで静かに暮らせればそれでいいの


―――――――――――――――――――


イヴァン:(NA)

ラウラさんの案内で、僕は帰ってきた

僕の目を蔑(さげす)むことも憐(あわ)れむことも無く…ただ優しく手を引いてくれた


イヴァン:…いやいや、あの人はただ親切心でそうしてくれただけじゃないか…変な気なんて起こすなよ


ヨゼフ:イヴァン…イヴァンじゃないか!

なんだよお前、無事だったのか!


イヴァン:…ヨゼフか…ヴァネッサは一緒じゃないの?


ヨゼフ:あぁ、それにしてもお前よく無事だったな


イヴァン:どういうこと?

君らが僕を森に行かせたんじゃないか


ヨゼフ:…ヴァネッサが本当に化け物はいるんだって…思ってたよりはっきり言うからちょっと不安になってよ…で、どうだった?


イヴァン:…どうって何が?


ヨゼフ:化け物はいたのかって聞いてんだよ!


イヴァン:…いや、いなかったよ…化け物なんてさ


(ヴァネッサが少し遠くから歩み寄る)


ヴァネッサ:…化け物なんていなかった…今そう言ったかしら


ヨゼフ:ヴァネッサ…来てたのか


イヴァン:…あぁ、いなかったよ、君らが言う化け物なんてさ


ヴァネッサ:なるほどね…ありがとう、イヴァン

役に立ってくれて


イヴァン:…どういたしまして…それじゃあ、僕はもう行くよ


(イヴァンは訝しげに歩き去る)


ヴァネッサ:…ヨゼフ、イヴァンから目を離したらダメよ

あいつは見つからなかったじゃなくて、いなかったって言った…何かを見つけたけど隠したくてそう言ったんじゃないかしら…

考えすぎかもしれないけど、何かを隠してるかもしれない


ヨゼフ:目を離すなって…あいつがメドゥーサを見つけてたらどうすんだ!

もしその化け物がいたら、俺が石にされちまうよ!


ヴァネッサ:…ちゃんと仕事してくれたら、前にあんたが言ってたこと…考えてあげてもいいんだけどな


ヨゼフ:え…ほ、ほんとか…?

じゃ、じゃあやるだけやってみるよ


ヴァネッサ:(NA)

どいつもこいつも馬鹿ばかり…でも…せっかくのチャンスを逃すわけにはいかないわ…

必ず殺してみせる…あいつを…!


―――――――――――――――――――


イヴァン:…それと、卵と…あとパンに…ちょっとだけど果物も持ってきたんだ

良かったら食べてよ


ラウラ:あなた、なんでここに…


イヴァン:一回通った道は体で覚えてるんだよ

森の中だとちょっと不安だったけどね


ラウラ:そうじゃなくて…どうしてまた来たの?


イヴァン:…森の中に住んでるって言うから、色々大変かなって思ってさ


ラウラ:…怖くないの?


イヴァン:僕を石にしてやろうってわけでもないでしょ?

それに僕は君の目が見れないから…怖がる必要なんてないよ


ラウラ:…でも、見えてないだけで…目が合えば石になってしまうかもしれないじゃない…!


イヴァン:…そんな風に考えてくれる人を怖がるなんて、やっぱり僕にはできないかな

でも…君が嫌がるようなことをするつもりなんて無いからさ…迷惑ならごめんね


ラウラ:違うわ…!迷惑だなんてそんなことない…

ねえ…よかったら…なんだけど…私、まだあなたの名前を聞けてなかったから…あ…あなたの…名前を…教えて?


イヴァン:…イヴァン、僕の名前はイヴァンだ


ラウラ:…イヴァン…食べ物を持ってきてくれて本当にありがとう

私を、普通に扱ってくれて…ありがとう…

もし本当に私を怖がらずにいてくれるなら…何も持ってこなくてもいいから…また遊びに来てくれる…?


イヴァン:もちろんだよ…!


―――――――――――――――――――


イヴァン:(NA)

それから僕たちは、人目を忍んで会うようになった


ラウラ:そこ、段差があるから気を付けて


イヴァン:…ありがとう、こんな場所に家があるなんて知らなかったな


ラウラ:…実は昔の記憶があんまりなくてね

ふと気づいたときに森の中をさまよってたらここを見つけたの…

森の奥だから…普通の人は私たちを怖がってここまで来ることも無いし、私たちにとって安全な場所よ


イヴァン:…私たち?


ラウラ:この目の呪いはずっと前から脈々(みゃくみゃく)と受け継がれているの

何百年も昔、美を司(つかさど)る女神が嫉妬(しっと)して、メドゥーサという村娘(むらむすめ)に呪いをかけたのが始まり…

その村娘が他の人に迷惑をかけず暮らすために建てられたのがこの家らしいの

でも、呪いの持ち主が死のうと…必ずこの呪いは村の誰かに現れた

私みたいにね…だから歴代の呪いを受けた人達はここに避難して、生きてくための知識を溜めてくれた…次の世代のために…ね


イヴァン:…そう…なんだ


ラウラ:ねえ、あなたの話を聞かせて、イヴァン


イヴァン:僕は話して楽しいことなんてないよ…


ラウラ:いいわ、聞かせて

誰かの苦(くる)しみを理解できるのは、苦(くる)しんでいる者だけよ…

あなたがどう生きてきたのか…知りたいの


イヴァン:……僕の家は代々靴職人の家だったんだ

でも、僕は目が見えなかったから後を継げなくて、ほとんど捨てられるみたいに家を出された

母方(ははかた)の親戚を頼ってこの村に来たけど…その親戚はすぐに病気で亡くなっちゃって

…よそから来た新参者の、無様(ぶざま)なその日暮らし、おまけに身体障害者

村ではいい笑い者だよ

でも…君は気にしないでくれて嬉しい


ラウラ:…難しい目を持つと大変だもの…ね?


イヴァン:そう…だね


イヴァン:(NA)

苦しみを理解できるのは、苦しんでいる者だけ…でも、わかっている

真(しん)に苦しみを理解できるのは、同じ苦しみを持つ者だけ…

僕は君に惹かれてる…君は望まないだろうけど、その苦しみを共有したくなった

ほんの少しでも君を見ることができたなら

君の苦しみをこの身に移すことが…できたなら


―――――――――――――――――――


ヴァネッサ:…良い御身分ね、イヴァン

あんたも化け物の仲間入りするつもり?


イヴァン:何のことだよ…ヴァネッサ


ヴァネッサ:…ねえ、やっぱりいたんじゃないの?

森に住む化け物…メドゥーサが


イヴァン:そんなのいないさ

それに、メドゥーサがいたとしてそれが何だって言うんだ


ヴァネッサ:…腹立たしい


イヴァン:…え?


ヴァネッサ:…そんな化け物がこの世界にのさばっていると考えただけで腹立たしいのよ…ヨゼフ!


ヨゼフ:おう、ヴァネッサ

イヴァン…とぼけても無駄だぜ?

ここ最近のお前の行動は俺が監視してた

最近しょっちゅう森に行ってるみたいじゃないか…あのログハウスによ


イヴァン:僕をつけてたのか…!?


ヨゼフ:びっくりしたよ…あんなに綺麗な女がいるなんてな…危うく石になるところだぜ…その瞳から目が離せなくなる理由もわかるってもんだ

あの家にあった呪いに関する資料も読んだぜ?

お前…あのラウラとかいう女を助けるつもりだろ…その瞳を貰ってよ


ヴァネッサ:呪いの瞳は“交換”しかできない

あんたの瞳を渡せば、その女は視力を失う、あんたは視力と一緒に呪いを貰う

誰一人として幸せになんてなりはしないわ…


イヴァン:呪いを調べた理由はなんだ…!ラウラをどうするつもりだ!


ヴァネッサ:ずっと言ってるでしょう…?

殺すのよ…恐ろしい化け物をね…


イヴァン:そんなことさせるもんか!


ヨゼフ:おらっ!!


(ヨゼフがイヴァンを殴り飛ばす)


イヴァン:ぐあぁっ!


ヨゼフ:ヴァネッサの気持ちがわからないかなぁ…イヴァン

あんな化け物がいるだけで村人は安心して暮らせないだろ?

あの女だって…迷惑をかけるくらいならって、死ぬことを選んでくれるさ

…そこで這いつくばってろよ…負け犬


イヴァン:待て…ヨゼフ…!!ヴァネッサぁ!!


―――――――――――――――――――


(椅子に座らされ、しばられるラウラ)


ラウラ:あなた達は…誰なの…!?


ヴァネッサ:イヴァンが世話になってるわね…ラウラ…今はそう名乗ってるんでしょ?


ラウラ:どうして私の名前を…イヴァンの友達…?


ヨゼフ:それ本気か?あんたの目に布巻いて、椅子に座らせてグルグル巻きにしてるんだぜ?


ヴァネッサ:イヴァンから私たちの話も聞いているはずよ


ラウラ:…えぇ、聞いているわ

イヴァンをいじめて、苦しめている人達ね…


ヨゼフ:苦しめてるなんてとんでもない

この村の奴らは異常な“瞳”って奴を極端に恐れてる…

俺らぐらいしかあいつの相手をする奴なんていないんだ…むしろ感謝してほしいね


ラウラ:それじゃあ…イヴァンが村でひどい扱いを受けているのは…私の…!?


ヴァネッサ:そんなことはどうだっていい!

私の目的は一つよ…ラウラ…その瞳が欲しいの…!


ラウラ:瞳を…!?


ヨゼフ:ど、どういうことだヴァネッサ!?


ヴァネッサ: …美の女神も嫉妬する美しさ…そして手に入るのは瞳を見たものを石に変えるという能力

どこが呪いだって言うの?…この世界を自分の意のままにできるほどの強大な力…天からの祝福じゃない!!


ラウラ:馬鹿げてる…!


ヨゼフ:そうだぜヴァネッサ…この女について調べれば俺と付き合ってくれる約束だろ…?メドゥーサとなんか付き合えないぜ俺は…!!


ヴァネッサ:…私はこんな田舎の村で人生を終える器(うつわ)じゃないの

その瞳があれば世界を統(す)べる女王となれる!その横にあんたは座れるって言ってるのよ!

そんなこともわからないって言うの!?


ラウラ:あなたはこの瞳の恐ろしさを何もわかっていない…だからそんなことが言えるのよ…


ヴァネッサ:いいえ、よくわかってるつもりよ…あなたよりずっとね

こんなどうでもいい問答(もんどう)を続けるつもりは無いわ…さぁ、死んでちょうだい?


イヴァン:うらあああああ!!!


(イヴァンがヴァネッサに殴りかかる)


ヴァネッサ:うぁっ…!?


ヨゼフ:イヴァン…!?ぐはぁっ!!


イヴァン:いてて…人を殴るってのはいい気分じゃないんだね…殴ったほうも手は痛むし…最悪の気分だ
ラウラ…大丈夫!?


ヴァネッサ:近づくな!それ以上近づけばこの女の首を切り裂くわよ!


イヴァン:ナイフを…!?やめろヴァネッサ!!


ラウラ:大丈夫よ、イヴァン…!来ちゃ駄目…!


イヴァン:話は聞こえてたぞ…!

ラウラの瞳を奪おうだなんて、どういうつもりだ!


ヴァネッサ:元々その瞳は私の物なんだ!私が奪って何が悪い!

…この私の美しい顔を殴るなんて…あんたも一緒に殺してやるわ!イヴァン!


ヨゼフ:どういうことだ…わけわかんねえよ…!

ちゃんと説明してくれヴァネッサ!


ヴァネッサ:馬鹿なヨゼフ…あんたにもわかるように教えてあげる…!

私はそこの女よりも先にその呪いの瞳を持って生まれてきたのよ!


ラウラ:そんな…!そんなこと…って…


ヴァネッサ:この家の周りにゴロゴロ転がってたでしょう?私が石にした奴らが…


イヴァン:…あの石像か!


ヴァネッサ:あれは私がやったのよ…!その力を試すためにね!


イヴァン:ならどうしてその呪いはラウラの瞳にかけられているんだ…!


ヴァネッサ:私の両親はね、この瞳を利用しようとした私に恐怖して、年端(としは)もいかない、まともな判断もできないもう一人の娘を犠牲にすることにしたの……それがあんたよ、ラウラ…いいえ、リゼット


ラウラ:…そんな…噓よ…あなたが私の…姉だって言うの?


ヴァネッサ:そうよ?もっとも、あんたなんて私にとっては不必要な存在だったから、崖から落としてやったけどね…まさか生きてるとは思わなかったけど


ラウラ:だから私は…記憶が…


ヨゼフ:…まさか、全部わかったうえで俺を利用したのか!?


ヴァネッサ:当たり前でしょ?

目を見た瞬間に体を石に変える能力を持つ相手に真正面から行くほど馬鹿じゃないわ

あんたが集めた情報はとっても役に立った


ヨゼフ:てめえ…!

それじゃ俺は生贄(いけにえ)みたいなもんじゃねえか!!

その瞳を利用するだと…?

お前は悪魔だ!お前なんかが女王だなんて片腹痛いぜ!


ヴァネッサ:…何の理由もなくイヴァンを殴って楽しんでるような奴がよく言うわ


イヴァン:まさか、君が僕に近づいた理由は…


ヴァネッサ:ご明察の通りかしら?

そいつを殺すには目の見えないあんたにやらせるのが確実だった…暴力での主従関係を構築するのが手っ取り早かったからそうしただけよ

でも…あっという間にあんたはその女に心を奪われた…

許せない…どこまでも私の邪魔をして…!

私よりも美しくて、その祝福の瞳まで奪ったあんたが憎くて憎くてたまらないのよ…リゼット!


ヨゼフ:イかれてるぜ…お前もだイヴァン…!

そのラウラとかいう化け物と同じだ…危険な化け物どもだ…!

付き合ってらんねえ…全員駆除(くじょ)してやる!そこで大人しくしてやがれ!


(ヨゼフは家を飛び出し走っていく)


イヴァン:あいつ…村に仲間を呼びに行くつもりか…!


ヴァネッサ:大変ね…イヴァン

さっさと止めに行けば?


イヴァン:その間にお前は彼女を殺すだろ…!


ヴァネッサ:当たり前でしょ?

…呪いを持つ者が死ねば、呪いはまた美しい者のもとへ現れる…

この村で私より美しい女なんていやしない…こいつを殺せばこの祝福は私のもとへ帰ってくるのよ!


イヴァン:その人を殺してみろ…!その瞬間に僕がお前を殺してやる…

目が見えなくたって…そのくらいは簡単だぞ…ヴァネッサ!


ラウラ:ダメよ…!逃げて、イヴァン

あなたまで私の仲間だって思われたら、本当に村人たちに殺されてしまうわ…!


イヴァン:ラウラ…!


ヴァネッサ:それ以上近づいたらこいつの首を切り裂くと言ったはずよ!

さぁ…どうするの?

ここで3人仲良く村人達に殺されるか…この女を犠牲にして自分だけ生き残るか選びなさい!


イヴァン:(NA)

どうすればいい…どうすればいいんだ…!?

僕は…ラウラを助けたい…呪いでもなんでもいい…ただ、彼女を救える力を…僕に!


ヴァネッサ:…何突っ立ってんのよ!早く消えなさいよ!


イヴァン:これは…!?

はは…あぁ…君って、そういう顔だったんだね…?


ヴァネッサ:何を…?


イヴァン:きっと心根(こころね)が現れてるんだろうな…その表情に!


ヴァネッサ;あんた…その瞳は…!?


ラウラ:まさか…!?


イヴァン:見たな…僕の右眼を!!


ヴァネッサ:噓よ…嘘よ嘘よ…!?

こんな…こんな…!?

体が…石になっていく…!?嫌だ…嫌だぁぁぁぁ!!

その瞳は…その力は…私の物なのに…!こんな所で…こんな…所で…!
許さない…呪ってやる…呪ってやるわイヴァン!!

死ね!!みんな死ね!!殺してや…!


(ヴァネッサが石に変わる)


ラウラ:…イヴァン…まさか、瞳が


イヴァン:う…うぉぇぇ…!


(イヴァンはヴァネッサを石に変えた罪悪感から、嗚咽する)


ラウラ:大丈夫…!?イヴァン…


イヴァン:…僕は…この右瞳(みぎめ)で…人を殺した…


ラウラ:私は化け物だから…いつか村の人たちに殺されてもおかしくなかった…

私を守ってくれたのね…ごめんなさい…イヴァン


イヴァン:…君は化け物なんかじゃない

こんな呪いがあるからみんな悲しむんだ…だから僕は…行かなくちゃ


ラウラ:イヴァン…?…まさか…ダメよ…!この縄をほどいて!イヴァン!!


イヴァン:(NA)

どうして彼女の瞳をひとつだけ僕がうけとることができたのかはわからない…ただひとつわかることは確かにこの瞳は恐ろしいものだったっということだ…僕はほんの少しもわかってなかったよ

今はただ…目を開くことすら恐ろしい…

だから…この呪いを僕が終わらせる…その罪を背負うのは…僕だけでいい


ヨゼフ:来たな…イヴァン

そこをどけ…俺たちは化け物を殺しに行く


イヴァン:化け物はお前たちだ

知りもせず…知ろうともせずに怯え、怖がり、軽蔑し…ただ優しい少女を殺そうとしている


ヨゼフ:恐怖ってのは簡単には消えない…村をむしばみ続ける害悪だ

あいつがいるだけで俺たちは夜に安心して寝ることすらできない

あいつ一人が死ねば、その恐怖から解放されるんだ

なら、ためらう理由なんてありはしないだろ!


イヴァン:多くの人の安寧(あんねい)のために…罪のない命を犠牲にしようっていうんだ…

もちろん、自分の命を犠牲にする覚悟も持っているんだよな…ヨゼフ…


ヨゼフ:は…何言って…?

お前…その瞳は…まさか!?


イヴァン:さよなら…


―――――――――――――――――――


ラウラ:…イヴァン


イヴァン:ごめん…君の瞳をこんなことに使って…


ラウラ:呪いは村人の誰かに現れる…

あなたは、この呪いを消し去ろうとしたのね…村人の全てを石に変えて…

私も一緒にその罪を背負うわ…


イヴァン:駄目だ…ラウラ…


ラウラ:イヴァン…あなたの考えはわかってる…

一人でなんて逝かせないわ…私を、見て?


イヴァン:あ…あぁ…やっぱり…綺麗…だ…


ラウラ:(NA)

その村には伝説がある


イヴァン:(NA)

向かい合う男女と逃げ惑う人々の石像が描く…石化の魔物の伝説が

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