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自由眠主主義とは何か

こっそり江草は「自由眠主主義」という怪しげなイデオロギーを掲げています。まあ、見ての通り「自由民主主義」のパロディなので冗談混じりではあるのですが、でもけっこう本音のところもありまして、半分冗談半分本気なんですね。

思想の根幹は「睡眠時間を8時間確保すべき」というところ。個人や社会の諸問題も実のところ睡眠不足から来てるものが多いと感じてます。睡眠不足だと、判断能力も学習能力も鈍るし、気も短くなるし、健康にも悪いしで、いいとこなしです。そういう状態の人間たちが集まって問題が解決するでしょうか。いや、逆に悪化しますよね。だからとりあえず細かいことは忘れてまずは睡眠時間確保を優先すべきという思想が「眠主主義」なわけです。

ただ、そうは言っても人間、寝る間も惜しんで楽しみたい夜もあるでしょう。仲の良い人たちと飲みに行ったり、面白い本に出会ってしまい夜通し読みふけりたくなったり、もう少しでクリアできそうなゲームをやり遂げたかったり。そこで「眠主主義だぞ!絶対8時間寝ろ!」というのはやっぱり窮屈ですし、なんかワクワクする社会じゃないですよね。だから、8時間睡眠を確保する大切さは認識した上で、それでもなおその掟を破りたい時は個人の判断で破ってよいとするのが、つまり「自由眠主主義」の「自由」の成分になります。眠主主義を主体とするけど、個人の自由な判断も尊重する。そういう考え方なわけです。

でも個人の判断で寝なくていいなら「自由眠主主義」の意味がないのではと疑問に思われるかもしれません。ところが、そうでもないのです。この自由が適用されるのは個人の判断までであって、他人が誰かの睡眠時間を妨げることは許されません。つまり、社会のみんなが互いに互いの「8時間睡眠時間確保」をすることが義務付けられるわけです。

これが一番大きく影響するのが労働時間でしょう。仕事が溜まって忙しいからといって、従業員に睡眠時間を削らせてまで残業させることを「自由眠主主義」では認めません。必ず睡眠時間8時間は確保できるように従業員を解放しなければいけません。世の「働き方改革」では労働時間や残業時間の総量が着目されやすいですが、このように睡眠時間確保の義務付けというポリシーであっても自然と労働時間が抑制されるのが面白いところです。

睡眠時間8時間確保せよと言うと、「さすがに8時間も寝る必要はないだろ」とか「俺はショートスリーパーだ」などの反発が出ることが予想されます。ただ、これらの意見は睡眠時間の確保の意味を理解できていない可能性があります。

まず、睡眠時間の必要量は個人差があります。確かに8時間も寝ないで十分な人もいる可能性はありますが、やはりそれだけ必要な方もいます。そして困ったことに、それは外見的には区別しがたいものです。だから、一律に万人に8時間の睡眠時間を確保してあげなければ、その人個人にとって必要な睡眠時間を得られなくなる可能性が高くフェアではありません。もし、自分にとって8時間も睡眠時間が不要だとしても、とりあえず8時間寝るつもりで寝てしまって早く目覚めればいいだけの話ですから、なんの問題もないはずです。

また、そもそも睡眠不足の人は判断能力が鈍っており、自身が睡眠不足で能力が落ちてること自体に気付けなくなるという指摘もあります。酔っぱらいが「俺は酔っ払ってなんかないぞォー」とのたまってるようなものです。「自分はショートスリーパーだ」と言ってる人はほぼ間違いなくただの寝不足で自身をショートスリーパーと勘違いしてるだけ、と身も蓋もないことを言ってる識者もいます。だから「自分はショートスリーパーだ」と言うにしてもまずとりあえず8時間睡眠の習慣をつけてみてからでしょう。その上でやっぱり短時間睡眠でいいと言うなら「自由」の範疇と言えるかもしれません。

あと、みなさんベッドや布団に入った瞬間に眠れるわけではないですよね。だから、睡眠時間と言ってもただ横になった時間ではないのです。実際に眠れてる時間は横になった時間よりも必ず短くなります。しかも、日によってなかなか寝付けない日があったりとムラがあるはずです。だから、一見長いようでも8時間睡眠を目指すというのが、実際の睡眠時間を安全域を持って守るために適切なポリシーとなるわけです。

まとめると、個人差や、個人の寝つきの良さの日毎のムラ、個人の自分自身の必要睡眠時間量の過小評価の思い込みなどを防ぐのが8時間睡眠確保のスローガンです。これにより個人や社会のウェルビーイングを高めようというのが自由眠主主義が求める社会像なのです。なんか、いい感じのイデオロギーに思えてきませんか?


で、当の江草の睡眠状況はどうかと言いますと、まぁぶっちゃけだいぶ眠いのを押しながら本稿を執筆しているところです(更新時間は朝になるように予約してます)。当然のように寝不足ですが、書きたくなっちゃったんだから仕方がないのです。誰にも強制はされてません。これぞ「自由」眠主主義でしょでしょ。

江草の発信を応援してくださる方、よろしければサポートをお願いします。なんなら江草以外の人に対してでもいいです。今後の社会は直接的な見返り抜きに個々の活動を支援するパトロン型投資が重要になる時代になると思っています。皆で活動をサポートし合う文化を築いていきましょう。