🇨🇦エイブラム・ホッファー 「オーソモレキュラーの先駆者」: ホッファーとオズモンドのアドレノクロム仮説

以下の文章は、個人的な試訳です！

エイブラム・ホッファー博士は、50年以上前、生化学という生命科学を精神医学に応用する事に成功、精神科医のパイオニアとなった。

多くの患者を精神分裂病から回復させただけでは満足せず、同僚と協力し、診断、栄養状態、生化学的個性に基づいた治療法を研究・開発した。

ホッファー博士は、患者を治療する内に、標準的な薬物療法、会話療法、ショック療法を補完する新次元の回復ケアを発見した。
彼は、その長く卓越したキャリアの中で、パラダイムシフトを促した。
模範を示して指導し、患者のエピソードや精神病さえも解決し、脳化学を修正する事で精神的健康を回復する事を学んだ。

この革新的で重要な仕事は、感謝する患者には歓迎されたが、懐疑的な精神科医には嫌われた。

ホッファー博士は、自分の研究を何年にもわたって医学雑誌に発表、前向きな進展を報告した後、殆どの医師が自分の考えを無視するか、試そうともせずに却下していることに気づいた。
彼は、何百万人もの精神科患者がより質の高い治療を受けるに値すると考え、一般大衆を啓蒙するキャンペーンに乗り出した。

ホッファー博士が精神分裂病をこれほど注意深く研究したのはなぜですか？患者が声を聞いた時、彼は何を思ったのか？
オーソモレキュラー医学の概念を研究し、発展させ、育む動機は何だったのだろうか？
90歳を過ぎても尚、相談に乗り、研究を続け、執筆を続けたのは何故なのか。
ホッファーの科学的回想録は、彼のライフワークと医学的冒険の魅力的な物語を共有している。

医療の進歩は一朝一夕に起こるものではない。
医療の質は通常、既存のルーティーンを微調整する事で向上する。
長年の臨床観察と転帰分析が、古くからの健康問題に対する可能な解決策を明らかにする洞察力の閃きに繋がる事もある。

先駆的な医師は、自分の直感を信じ、可能性を検討、より良い医療を実践する方法を見つけるまで辛抱する。どんな新しい事でも、実行に移すには何十年もかかる。

左上: ホッファーの両親（1920年代）
イスラエル・ホッファー（父）、クララ・ホッファー（母）
右上: エイブラム誕生時の自作農場地（1917年）
右下: エイブラムが６歳〜12歳で通っていた校舎
      （カナダ: サスカチュワン）

患者の協力を信頼する一方で、革新者（ホッファー）は理論を開発し、検証し、研究調査を行い、臨床試験を実施し、自分の発見の有効性を証明しなければならない。
そして、研究報告書を書き、学術論文を投稿、医療専門家を教育する為に学会で講演する。

この重要な仕事には、平均以上の知性、ひらめき、献身、決断力が必要だ。パラダイムシフトには、セレンディピティ、チャンス、仲間のネットワークは勿論の事、更に卓越した能力が必要とされる。
結局のところ、エイブラム・ホッファーには、必要なもの、すなわち、必要な賢さ、優しい心、機転、粘り強さ、支えてくれる家族、そして患者とも友達になるコツがあった。

パラダイムシフト
その時代や分野において、当然の事と考えられていた認識や思想、社会全体の価値観等が、革命的に、もしくは劇的に変化する事。

サスカチュワン州のワンルーム・スクールに通い、ミネソタ大学で生化学の博士号を取得。
1950年代、若く鋭敏な研究心理学者であったエイブラム・ホッファーは、手っ取り早く簡単な近道を選ぶのではなく、何が人間の脳に幻覚を見せるのか、何が脳化学を安定させるのかを考えた。

殆どの医師が信じている事を、ホッファー博士には誰も言わなかった。
「精神分裂病には治療法は無いのだ。精神医学の診療ガイドラインでは、効果的な治療を勧める前に、それぞれの患者の症状の根本的な原因を鑑別することを奨励している。
ホッファー博士と彼の同僚達は、ガイドラインに忠実に、精神病を診断、治療量の栄養補助食品を処方、患者の食生活を改善する事によって、脳の化学的性質を回復させる方法を研究した。
その結果、驚くほど多くの患者が回復し、養生法を続ける限り、快方に向かっていった。

ホッファー博士が、サプリメントを処方する様になったきっかけは何だったのだろうか？

どの様にして、栄養素が精神の健康を回復させるのだろうか？

ホッファーの回想録によれば、ホッファーとオズモンドのアドレノクロム仮説によれば、アドレナリンの代謝異常が精神病を引き起こす事がある。

脆弱な患者は、アドレナリン（健康な脳内化学物質）をアドレノクロムとアドレノル錫という幻覚性化合物に代謝する。
ホッファー博士とオズモンド博士は、アンバランスな脳内化学物質は回復出来ると考えた。

精神医学における最初の二重盲検臨床試験によって、彼らは2つの重要なアミンを試験した。
ナイアシン、又はナイアシンアミド（ビタミンB3-メチル受容体）とアスコルビン酸（ビタミンC-抗酸化剤）の分割投与である。

これは、何年もの間、抗精神病薬単独、精神安定剤、インスリン昏睡、メトラゾール療法よりも優れた効果を発揮し続けている。

栄養療法が非科学的に聞こえるかもしれないが、ホッファー博士が医師になる前に、生化学の博士号を取得していた事を思い出してほしい。

ホッファーと彼のチームは、医療用栄養素（ビタミン（またはバイタルアミン）、微量ミネラル、アミノ酸、抗酸化物質、メチル受容体および供給源、エネルギーおよび酵素補因子、必須脂肪酸および前駆体）のレジメンをカスタマイズする事によって、それぞれの患者の生化学的個性を尊重した。
何千人もの患者が、教育を再開、キャリアを継続、運命を実現するのに十分なほど回復した。

従来の医師達は、深刻な精神疾患である統合失調症の患者を、たかがビタミン剤で治せるなどと嘲笑していた。
しかし、世界的に有名なノーベル賞受賞化学者ライナス・ポーリング博士が、ホッファーとオズモンドの1966年の著書『統合失調症との付き合い方』を読み、ビタミンやその他の必須栄養素を治療薬として用いる「正分子療法」が、「人体に通常存在する物質の最適な分子濃度を提供する」ことによって、多くの患者を救うことができると気づいた。

ライナス・ポーリング博士↓

ポーリング博士の「オーソモレキュラー」という言葉は、健康な分子を処方する事で患者を健康に戻すという、オーソケアの概念を説明するものである。
ライナス・ポーリングは引退後、生化学を研究、オーソモレキュラー医学を提唱した。

壊血病にはビタミンC（Lind, 1795）、ペラグラにはビタミンB3を多く含む食品（Goldberger, 1914-1928）、糖尿病にはインスリン（Banting and Best, 1920-1925）などである。

これらの治療法が発見された当初、知識の無い医師達は、栄養素の治癒効果に異論を唱え、値引きし、否定した。
やがて、臨床医が治療法の安全性と有効性を証明した為、生化学的サプリメントは、何百万人もの患者に影響を与えるこれら3つの病気に対する標準治療となった。
ライナス・ポーリングの 「オーソモレキュラー 」の概念と、ホッファー博士がオーソモレキュラー療法で統合失調症やその他の疾患の治療に成功した事で、多くの心の広い医療専門家が協力するようになった。
彼らは、様々な精神疾患や身体疾患に対する回復治療法を発見した。

しかし、精神科医の大半はニヒリズムの伝統に従い、ホッファー博士の研究を見逃し、薬物療法やトークセラピーがどんなによく効き、有用であったとしても、病気の脳を正常な状態に戻す事は出来ないという現実に心を閉ざしていた。

英国提督が壊血病予防の為に柑橘類を補給するまでの数十年間、何千人もの船乗りが苦しんでいた様に、多くの精神科医がホッファー博士のオーソモレキュラー研究を検証したり、補完的な臨床レジメンをテストしたりする事を拒否している間にも、信頼できる精神患者達は苦しんで来たのである。
懐疑論者が彼のライフワークの信用を落とすのを許さず、ホッファー博士は50年以上にわたって研究を続け、回復した患者の症例報告を医学書や医学雑誌に発表して、その進歩を報告し続けた。

ホッファー博士は、患者に最適なスマート栄養素の投与量を決定し、世界中の倫理的な同僚に彼の方法を適用するよう勧めながら、多くの臨床的冒険を行った。

研究結果を共有、医療従事者を教育する為に、ホッファー博士はJournal of Orthomolecular Psychiatry（後のJournal of Orthomolecular Medicine）を創刊、編集した。

ホッファー博士は、以下のような多くの論文、論説、著書を執筆した。
精神医学におけるナイアシン療法』（1962年）
「幻覚剤」（1967年）
「医師のためのオーソモレキュラー医学」（1989年）
「スマート・ニュートリエンツ」（1994年）
「ビタミンB3と統合失調症」（1994年）

Discovery, Recovery, Controversy (1998)
ビタミンC & Cancer, Dr. Hoffer's ABC of Natural Nutrition (1999)
Orthomolecular Treatment for Schizophre- nia (1999)
Healing Schizophrenia: 「ビタミンと薬物による補完的治療」（2004年）
「オーソモレキュラー精神医学-統合失調症の治療」
　（ホーキンス＆ポーリング編 1973年）に寄稿

更に、ホッファー博士は、国際統合失調症財団（ISF）と国際オーソモレキュラー医学会（ISOM）設立、運営、維持にも貢献。

1971年以来、毎年38回の国際オーソモレキュラー医学会議（Orthom-lecular Medicine Today）を開催、世界中の患者、家族、介護者、医療専門家と情報、医学研究、経過報告、成功談を共有して来た。
オーソモレキュラー医学の殿堂（Hall of Fame）は、医療専門家による優れた業績を表彰するものである。

何千人もの患者が回復を遂げ、その生活を取り戻したのは、エイブラム・ホッファー博士のお陰である。
回復的オーソモレキュラー医学の研究と開発における彼の独創的な仕事、ビジョン、誠実さ、リーダーシップのお陰で、患者はもはや統合失調症、精神病、うつ病、双極性障害、注意欠陥障害、自閉症の症状で何十年も苦しむ必要はなくなった。
ホッファー博士の研究は、患者、家族、介護者が回復医療を求める様になる事を促すだろう。
願わくば、医療のパラダイムが拡大し、標準的な医療が統合失調症を含む精神疾患患者にオーソモレキュラー治療を日常的に提供するようになる事を。これは一人では出来ない。私達が全員で協力する必要がある。

「精神医学の冒険』ロバート・シーリーの書評より引用

ビタミン、ミネラル、その他の栄養素の健康効果を確立した医師として、エイブラム・ホッファーほど称賛に値する人物は世界でも数少ない。

過去55年間、急速に拡大するオーソモレキュラー医学の分野への彼の先駆的貢献は、ホッファー博士の500を超える出版物や幅広い講演活動を通じて、国際的に知られるようになった。
しかし、自国では名誉なき預言者という諺があるように、ここ北米ではホッファー博士の業績に対する認識や認知度は依然として低い。

その一因は、ホッファー博士の生来の謙虚さであろう。この謙虚さは、大農場で育ったホッファー博士が、何事にも素直で正直、かつ直接的なアプローチをとったことに根ざしている。

ホッファー博士のキャリアは、疲れ知らずの努力と献身、そして何よりも模範的な人間性によって示された。

左: エイブラムと恋人（1998年）
右: ３０年来の同僚: フラン・フューラーと共に

砂漠での40年
ホッファー博士には、変化に対する強力な抵抗と、新しい考えを受け入れようとしない、特に医学界の権威たちの姿を描く好きな方法があった。

「モーセがイスラエルの民をエジプトの捕囚と奴隷状態から脱出させた後、なぜ40年も砂漠で過ごしたのか、不思議に思ったことはないだろうか。」

その旅は数カ月で達成出来たはずなのに、モーセは、民が自分達の為に新しい土地を要求し統治するように導く前に、奴隷として生まれた世代が死に絶えなければならないことを知っていた。
古い考えを捨てるのは非常に難しく、新しい考えが定着するには少なくとも40年はかかる。」

ホッファー博士の考えに対する抵抗は、徐々に無くなりつつある。
ビタミン・ミネラル療法の価値は、一昔前までは無価値なものとして見過ごしていた一流の研究機関にも認められるようになった。

栄養学はついに、健康維持や疾病予防・治療の主要な要因として、正当な位置を占めるようになったのである。

ホッファー博士は常に「ジャンクフリー」の食事を提唱していた。

「歴史上初めて、食べ過ぎても栄養失調に陥ることが可能になった。
私達は、食べ物を活性化させ、精製し、必要なものの殆どを失ってしまった。これを私は豊かな栄養失調と呼んでいる。」

ホッファーの遺産
開業医として、また研究者として、ホッファーはオーソモレキュラー医学に関する潮流がゆっくりと変化していくのを経験した。
彼は、その勇気あるビジョンと、新しいアイデアに対する卓越した受容性を失うことは無かった。

90代に入ったホッファー博士は、彼の半分の年齢の同僚達よりも鋭かった。

ブリティッシュ・コロンビア州、ビクトリアにあるオーソモレキュラー・ビタミン・インフォメーション・センターで週4日働き、いくつかの新しい出版物の準備に追われていた。

2005年12月に引退したホッファー博士の診療は、主に精神医学から始まったが、後に何百人もの癌患者を含むようになった。

「彼らは通常、医師が標準的な治療の可能性を使い果たした時に私の所に来た。
もし、彼らが最初にオーソモレキュラー治療を受けていたら、どんなに良くなっていたことでしょう。」　　（スティーブン・カーター氏）

左: エイブラムの自宅オフィース
右: 「ナイアシンを摂取して！」: マックリーンマガジン（1966年）

- INFO SOURCE - 
オーソモレキュラー医学会
Orthomolecular Organization
https://orthomolecular.org/library/jom/2009/pdf/2009-v24n0304-p116.pdf