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うつ治療記(4): うつと睡眠

私がうつと呼んでいるものは、病名でいうと多分「適応障害」や「パニック障害」というくくりで扱われるのだろう。適応障害の症状として顕著なのは、睡眠の量と質の変化である。睡眠時間が突然増えたり減ったりしたら、それは何かしら精神がまいっているし、睡眠の質が悪くなれば、それは睡眠時間が長くてもあまり寝る意味がない。睡眠でいうと、私のうつで特徴的だったのは、「うつの第1波」のときは眠りにつく時間の変化、「うつの第2波」では睡眠の質の変化である。「第1波」でも「第2波」でも1日の睡眠時間の合計は平均的にあまり変化がない気がする。多分それは正確には違うとは思うのだが、量以上に質の問題に目が行くのだろう。

「うつの第1波」における睡眠の特徴は、長い「昼寝」の多さ。当時は自分の部屋にこもりきりだったので、自分の隣には常にベッドがあり、いつでも寝ることができた。だから、眠いと思ったら、部屋の電気を消し、カーテンを閉め、部屋を真っ暗にして、布団をかぶる。こういうことを午後5時から午後8時のあいだまでやってしまうと、夕食の時間がずれて、料理もしたくないということになり、結局外で買ってしまうはめになる。ご飯の時間がずれるということは、全体的な1日のスケジュールも変わってしまう。なぜなら、私は空腹や満腹といったパラメータで動いているからだ。食べるのが好きだということでは全くない。というよりも、血糖値の上がり下がりによって、多分人が眠くなったり眠くなくなったりするのだ。しかも料理をしないとなると、その次の日も料理をしない確率が高まる。べつに料理などできればしたくない。でも、料理しないと死んでしまう。だから、料理するのだが、毎日やらないとなかなか続かないし、毎日やるのも大変だ。毎食の献立を考えるのも大変だし、個人的に料理をしていて大変なのは、皿洗いと皿拭きだ。そんなわけで、適当な時間に「昼寝」を挟んでしまうと、大変なことがたくさん起こってしまう。午後5-8時の昼寝を毎日やればいいのだが、そんなふうに物事が進むはずがない。毎日違う時間に寝てしまうのだ。しかもアラームをつけ忘れると、いつの間にか夜中の4時に起きて、あら大変となってしまう。

「うつの第1波」のとき、寝る前に必ず耳栓をつけていた。もともと少しの物音に対して敏感でなかなか寝付かないので、普段から寝るとき耳栓をつけるときもあったが、うつのときは必需品である。これをしないと寝れないし、これをすると思ったよりも長く寝てしまう。しかし、耳栓というものはなんとも使い勝手が悪い。まず耳栓は小さいのですぐなくす。暗い部屋の中でなくしてしまったら、見つけるのに相当な気力がいる。明かりをつけにいくのにも労力がかかるので、暗いまま探そうとするのだが、なかなか見つからない。そういうときは大抵床に落ちているか、ベッドの隙間に潜りこんでいる。そして、耳栓は高頻度で新しいものに変えないといけない。耳という綺麗とは言えない穴に直接突っ込むわけだから、汚くならないはずがない。だからこそ、耳栓という分野は様々な可能性を秘めていると考えることもできる。発明家にはなくしにくい、再利用可能な耳栓の開発を早急に進めてほしいと心から願うばかりだ。

「うつの第1波」では夜以外に行われる、比較的長い「昼寝」が問題となったが、「うつの第2波」ではそれに加え、睡眠の質も変化した。寝付けないという日が数日続いたり、浅い睡眠によって4-5時間で起きてしまったり。とくにひどかったのは、寝ようとして目を閉じたときに、頭の中で想像の連関が始まり、次々と映像として想像が湧いてくる。この想像が止まらない限り、安心して眠ることができないのだが、この想像を止めるには目を開けるしか方法がない。これもパラドックスで、目を閉じないと眠る態勢に入れないのに、目を閉じると絶え間ない想像の連関が起こってしまい、それが睡眠への勢いを妨げる。この想像の連関は耳栓をつけているとさらにひどくなるということがわかってからは、「うつの第2波」で耳栓をつけることはなくなった。完全な静寂で耳が圧迫された状態の方が想像の連関みたいなものが起こりやすいのかもしれない。

これ以外にも、スマホやパソコンを夜遅くまで見ていたせいか、睡眠の質があまり良くなかったのが「うつの第2波」だった。うつのとき、どうしてもスマホを不必要に何回もみてしまうので、それによって眠れなくなってしまったのだと思う。しかし、寝る前にスマホやパソコンの画面をみるということが癖となった今では、この文章もまた同じような状況下--寝る前にパソコンの画面をみる--で書いている。

この世にはショートスリーパーという人たちがいて、その人たちは2、3時間寝れば一日中生活できるということだが、私にそれは到底できない。物事をするには睡眠が必要だ。どうせ人間暇なのだから、その暇な時間は睡眠にまわしましょうよ。私も今日はいつもより早く寝てみたいと思います。おやすみ世界。

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