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高等学校「情報Ⅰ」のプログラミングのために(8) 共通テスト試作問題に見る方向性

情報処理学会が,

大学入試センターより2020年11月24日付で本会に「平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した大学入学共通テストの『情報』の試作問題(検討用イメージ)」の情報提供がありました。

として,試作問題のPDFを掲載している。

 だいたい予想通りだった。今までの「情報関係基礎」のパターンを,新課程の内容に合わせたものといっていいだろう。この note では,問題の是非については論じない。ただ,今までの情報の授業でやっていた内容(教科書の内容)よりレベルが上がっていることは確かだ。新課程の内容がそうなっていることを反映していると言っていいだろう。
 このうち,プログラミングに関しても同じような傾向だ。ただし,言語仕様が変更されていて,一番近いのがPythonだろう。たとえば,条件式の「等しくない」は「!=」を使っている。VBAは「<>」だから,Pythonで慣れ親しんでおく方が有利だ。
 また,教育用として最適として推薦しているCindyscriptも,残念ながら却下だ。というのは,リストのインデックスが0からになっているからだ。(今までは1から)Cindyscriptは1から。たいしたことがないようだが,この差は結構大きい。数学で学ぶ数列もインデックスは1からだ。普段,ものをカウントするのに「1から」に慣れているのが,0からになるのはそう簡単ではない。これは,Cindyscriptで整数の乱数を発生する randomint() を使った授業での生徒の理解度から見てもわかる。
 ただし,これも予想した通り,オブジェクト指向の知識は不要だ。とはいえ,実際にコードを書いて実行するには,問題文のコードだけではできないので,教員が必要な関数を用意しておく必要がある。この点も予想通り。
 試作問題はシフト暗号の解読だが,アルファベットの出現頻度を求めてグラフにする部分がある。グラフにするコードは問題にはなっていないが,実際にやってみるのだったら当然グラフ化するプログラムが必要だ。これは教員が用意しておくことになる。この点でも,JavaScriptよりPythonの方が使いやすいだろう。

 これで,研修会で扱われるプログラミング言語も一気にPythonに傾くと思われる。ただし,すでに述べている通り,生徒が問題を解くレベルでは難しくないが,教員が用意するレベルを考えるとPythonは決して易しくはない。現職教員もそうだが,管理職も(人事を行う都道府県教委も)こころして臨むべきだ。プログラミングができる教員の配置,あるいは研修を考えていかないと,今までのような安易な教員配置では対応できない。