奥明日香・もう一つの「にゅうだに」へ
菟田野の「にゅうだに」を訪れた翌日,阿騎野を出て国道370号線を吉野方面へ下る。吉野から芋峠を越えて奥明日香へ行く行程だ。
稲渕(いなぶち),栢森(かやのもり),入谷(にゅうだに)の3集落を「奥明日香」という。そう,菟田野の入谷と,もう一つの入谷。今日は奥明日香の入谷が目的地だ。昼食を栢森の「さらら」に予約している。
初めはゆるい上り坂。
関戸峠。ここを越えればあとはずっと下り坂で宮滝に至る。すなわち,壬申の乱のときに,大海人皇子が吉野から伊勢方面へ向かった道と考えられる。実際にはもう少し東の道かもしれないが。
4kmほど下って三茶屋の交差点。まっすぐ行けば宮滝。しかし宮滝まで下ってしまうとあとが大変なのでここを右へ。津風呂湖の北側の道,県道28号線を行く。
途中で鹿が道を横断していった。5kmほど走って吉野運動公園の前に到着。
この先をそのまま行ってもよいのだが,右へ行く方が近道だし,車も少なそう。
途中にあった神社に挨拶をし,三茶屋から9kmほどの地点。
これをみれば普通は道なりに左折するよな。路側帯の線が左に行っているし,正面の道は狭い。右側に道しるべがあって,左に「明日香」と書いてあるが,別の道だと思ったので左折。しかし,これが間違いで,2km以上行った交差点で間違いに気付く。結構なロスだった。しかも下り坂だったので戻る道は上り。自転車を押して歩くことになった。戻って,これが目指していた交差点。さっきのT字路の100mほど先だ。
芋峠越えの県道15号線は右折。芋ヶ峠への入口だ。面白いことに,Googleのストリートビューでは「通行止」になっている。がけくずれで通行止になったのは数年前。2013年には復旧しているがGoogleではこの先に行けないのだ。(2020年現在でもGooglemap ストリートビューはそのまま)
少し行くと交差点の道しるべがあり,芋峠まで4.2kmと書いてある。奥明日香の栢森(かやのもり)まで7.3km。この4.2kmはずっと上り坂。ここはずっと自転車を押していくのが当初からの覚悟。
古道もあるのだ。千股というのは峠を越えた先?
そこまで40分という。道としては近いのだろうか。あと3.5kmくらいか,このまま歩いていって40分でつくとはとても思えん。・・・あとで調べたら,峠を越えた先へ行くのではなく,吉野側に出る道のようだった。
さすがにずっとの上り坂はこの自転車では無理。数百メートル行っては休憩。さきほどのロスが痛かった,あのときにだいぶ長い坂道を押して歩いて体力を消耗している。途中,サイクリストが何人か追い抜いていった。この道は奈良のサイクルロードのひとつなのだ。
やっと峠に到着。ちょうど町境になっているのだ。予定時間を大幅に超えている。ここから「さらら」まで3km程。予約した時間は12時。もう12時になろうとしている。
峠をこえればずっと下り。こちらの方が坂は少し急ではないかな。道幅も半分くらいだし。下り坂は速い。かなりブレーキをかけて速度を落としてきたがそれでも3kmがそれこそあっという間。12時をちょっと過ぎただけで「さらら」に到着。
一見すると古い民家。のれんがかかっている。玄関先には「申し訳ございませんが本日は満席です」とのホワイトボード。座敷席が3つ,通されたのはイス席。イス席も3つ。予約していたさらら御膳。奥明日香の食材を使った和食だ。黒米のごはん,黒米のうどん,コンニャクなど。すべて自家製。
このあとに,野菜のてんぷら(やまうどなど)とキタアカリのみそ汁がきた。 「ゆっくりしていってください。昼寝していく人もおられますよ」という言葉に甘えて,客が去ったあとの座敷でのんびり。客がいなくなったので,聞かれるままにおしゃべり。
叔父が書いた「ご先祖様のお話」によると,言い伝えでは先祖は中臣鎌足の家臣であったとか。で,ここ(奥明日香)と菟田野の「にゅうだに」が関係しているかもしれない,とうわけだ。といっても,私の姓は「にゅうだに」とは読まない。菟田野には「入谷金兵衛」さんがいたが,聞いてみるとこちらには「入谷」姓の人はいないらしい。
ともかく,今回の旅の一番の目的は「2つのにゅうだに」なので,このあと行くことにした。「ええ?(自転車では)たいへんですよ」と言われたが,はじめから坂を押していく覚悟。井戸水(のませてもらっておいしかった)をペットボトルに分けてもらって,出発。
さららから吉野方面に少し戻ったところに古ぼけた道案内がある。そこを左へ。
自転車を押して休憩しながら歩くこと30分以上。三叉路があった。後ろを見ると民家が見える。坂を少し下って,入谷の集落を眺めた。
カメラでズームすると左下の家の軒先に「入谷」の文字が見える。集会所だろうか。(あとでわかったのだが,以前バス停だったらしい) さすがにくたびれて降りる元気はない。(降りたら,また自転車を押して登らねば)
下りは速い。さっきの苦労が嘘のよう。栢森の集落にすぐに到着。あとは明日香村に向かって下るだけ。途中にあった,ちょっと有名な稲渕の女綱。
石舞台公園の店で休憩。いちご(アスカルビー)のシャーベット350円で一息ついた。
このあとは橿原神宮駅まで走り,近鉄で帰路についた。