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千代田区に映画館を作る事ができるのか

※コレはザルな知識で考察しています。鵜呑みにしないでください。


 映画ファンなら一回は妄想した事があると思う「自分で映画館を作って経営してみたい」という欲求を叶える為にはどのような課題が発生するのか、適当に調べてみる事にした。費用や賃貸借で絡んでくると思われる条件面に関しては非常に幸運に恵まれたという前提で進めていきたい。流石にシネコンを作って経営するというのは非現実にも程があるので、以下の様な条件でシュミレートしていく。

  • 立地と物件
    東京都千代田区内とする。物件は賃貸(店舗転用可)を契約

  • スクリーン数
    70席程度を1部屋、30席程度を1部屋とする

  • 他設備
    コンセと飲食スペースを併設

千代田区で物件を借りるという事

 千代田区を選択したのは単純に人口に対する集客が期待ができるという事とサブカル文化圏である「神田神保町」、リノベブームで再開発が進んでいる小伝馬町地区にも近い、「神田岩本町」、かつて存在した名画座ギンレイホールがあった「飯田橋」を揃えており賃貸借が期待できる地域で限っても映画館に馴染みやすい。大手町や霞ヶ関といった中心街では流石に現実味に欠けるため今回は除外する。
 さて、仮に想定した地域で店舗転用可能な店舗を探す事になるのだが、上記スペックを満たす事ができる映画館をセットする為にはどれくらいの面積が必要となるのだろうか?映画館の敷地面積に関してはオープンになっている情報が少ないが、菊川にあるミニシアター「Stranger」が公開しているデータでは総敷地面積は約65坪となっている。ここは45席シアター1とカフェスペースでこの面積であるので席数からザックリと想定するとおよそ120〜150坪の敷地が要求される事になる。
 単純に店舗転用可能な物件を賃貸する場合、建物のスペックにも左右されるが千代田区のこの面積の物件で平均的な家賃相場は月170〜220万円である。加えて、店舗や事務所の賃貸借の場合、住居用の物件に比較して敷金(補償金)の額は非常に高額になる。通常、10ヶ月分の賃料を求められる(物件によっては12ヶ月分)のと、契約期間も2年以上を要求される事が多い。必要最低限の費用で勘案して2年賃借で4000万円程の費用が見込まれるだろう。とはいえ、飽くまでシュミレーションとしての話なので幸運にも映画館転用を認めてくれるスケルトン(何もない状態)の物件を獲得した前提で進めていく。

興業場法の壁

  映画館は、「興業場法」という法律によって設営する際には厳しい審査を通過する必要がある。ライブハウスでドリンクを強制的に注文しないといけないのはライブハウスも興業場法の指定を受ける対象なのだがその場合審査をパスする事が極めて困難になるために「飲食店のサービスとしてバンドが歌っているレストラン」という建前を通して審査を回避している為なのは結構有名な話だろう。映画館で同じ様な理屈が通用するかどうかは不明なので今回は興業場法に則った映画館を設営する前提で話を進めていこう。

https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/other000046600/kougyoujyoutebiki.pdf

 各自治体や保健所のHPにある手引きを見てみたが、必ず事前に見取り図を持ってきて事前相談に来る様にという但し書きが目立つ。コレは邪推なのだが、この規則をろくすっぽ見ないで物件を抑えて後から泣きを見た事例が多いのでは無いのではないだろうか。非常に細かい部分まで指定が多いので後からどうしようもなくなったというオチもありえるだろう。

 費用がかかる面としては、トイレの便器の数と空気循環設備だろうか、劇場面積から設置しなければならない便器の数が決められている為、そのあたりの工事等の費用も膨大になる。詳細な金額は算出するのは流石に困難だが、施工費用、設備自体の金額もさる事ながら、物件のオーナーがそれを全て承諾してくれるのかも困難な要因たる一例と言える。

設備自体への費用

 さて、どうにかして興業場法の申請をパスして施工の目処も見えてきた。そうなるといよいよ映画館自体の設備を考えなければならない。スクリーンの施工、上映設備の設置、座席をどうするのか、この部分に関しては特に不明な点が多いので推測でしか語れないのでより信憑性が欠けるのでご容赦いただきたい。 
 まず、上映するには映写機が必要であるが、デジタル映写機の相場はおよそ500万円である。中古や廃業した業界関係者から譲渡してもらうという手段もあるだろうか。35mm映写機になるとより困難になるだろう。
 座席に関してはAmazonで販売している椅子が一脚89800円で販売されている。100席を抑えて施工する必要がある、スクリーンや音響類の設置工事に関しての相場は不明瞭だが、15人くらいで楽しむホームシアターを0から設計すると1500万円程度の費用が必要らしい(人件費等も含む)。どんぶり勘定で換算してもその5倍の費用がかかる事は明白である。
 設備投資が済んだのち、作品にもよりけりだが配給会社から上映権を購入するための費用もそれぞれ別途で要求される。このところの相場ははっきりしないので割愛させていただく。
 人件費に関して、支配人を正社員として他をアルバイトで雇用するとすると7人程度の従業品は必要だろう。朝9時から夜11時の14時間営業で5人が稼働するとして東京都の最低賃金1163円×5×14=81,410、これが30日として2,442,300円の支出となる。ボランティアでやりがい搾取すれば話は別かもだが。 一年であれば29,307,600円である。

千代田区に映画館を作る事ができるのか

 色々と適当な推察も含めて計算したが、千代田区に映画館を作って経営するには全ての手続きを完璧にこなして幸運に恵まれて映画館に転用していい物件を獲得し、善良な施工業者を見つければ1億円程度の費用でなんとかできそうだという結論に達した。
 自分の財力では無理な話ではあるが、金持ちの道楽としてやる分にはいいのではないだろうか、というのが正直な感想である。とはいえ、コレはラッキーにラッキーが重なったが故の結論なので多分もう少し費用は増えるだろうか。まぁ私にはあまり関係のない話だろうが。
 難関だと思うのは物件選定と興業場法に基づく申請だろう。映画館という特殊な設備を受け入れてくれる店舗が多数存在するとはとてもじゃないがイメージがつかないのが正直な所だ。また、施工によって現場復帰させる際にも想定外の事態が非常に見込まれそうなため、貸主としてはあまり気分の良い案件ではないと思われる。
 さて、正直な話千代田区で映画館を経営して、どれくらいの期間維持できるのかというのは興味深いところである。先に例を挙げた菊川のStrangerは元々の所有者が設立2年で既に株式を譲渡して経営から離れていることを公表していて現在は違う法人が運営している。彼は映画館専業ではなく、他に事業を経営していてその運用益を全部映画館に投資したにも関わらず2024年には経営が立ち行かなくなると認めている。それほどまでに映画館の経営は困難を極める代物なのだろう。飲み会の勢いで思いついたノリでできるものではないというのは間違いないし、覚悟を決めたとしても2年持てば上々なのではないだろうか。その時に笑っていられるかどうかは別として。

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