本当は分かっていなかったリモートワークのこと
こんにちは、nay3です。前回の「所定労働時間を7時間に減らして3年が経ちました」に引き続き、今回はリモートワークについて書いていきたいと思います。
この記事を書きたいと思ったきっかけ
万葉は10年以上前からリモートワークを取り入れていたため、リモートワーク自体は私たちにとって特別新しい話題ではありません。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大防止のためにほぼ完全にリモートワークに移行してみたところ、以前のリモートワークには不足な点があった、生き生きと働くことを妨げている構造があったということに改めて気づくことができたので、その話をしたいと思います。
万葉は創業当初からリモートワークを取り入れていた
ソフトウェアの開発というのは、開発者同士やお客様とのコミュニケーションさえできれば、基本的にPCとネットワークがあれば場所を問わずに行うことができる仕事です。家で行うことができれば、時間や体力の節約ができ、家庭との両立の助けになるでしょう。そのため、万葉では創業当初から、リモートワークができそうな機会には自然とリモートワークを取り入れていました。
ただ、ソフトウェアの開発に必要な「コミュニケーション」の中には、メールやチャットでの伝達にとどまらない部分があります。例えば、朝の挨拶ついでに雑談をしたり、ホワイトボードを囲んで設計について話し合ったり、突発的に誰かの席で通行人も巻き込んでペアプロ・モブプロを始めたり、お客様のオフィスを訪問してどんな雰囲気の職場かを肌で感じたり…。こうした部分は、実際にリアルで会って行うほうが効果的だと考えられます。
万葉ではこういった、実際に会って話すことに付随して得られる副次的な効果をとても大事にしていました。また、オフィスで顔を合わせる機会があると分かっていれば、書類や領収書、福利厚生のパンフレット等を手渡しでやりとりできます。こういった点でも、一定頻度での出社を期待できるほうが効率的だと考えていました。
そこで、新型コロナウィルスの流行が始まるまでは、働きやすさとリアルで会うことによる効率の良さのバランスをとるべく、「目安として週に1度は出社する」というガイドラインに沿ってリモートワークができるようにしていました。この場合、お客様先へ行っていない時期であれば最大で週4日リモートワークができます。また、お客様先へ行く場合も基本的には最大3日までとしていたので、最低限、週1日はリモートワークができる計算です。
ただし、エンジニアはこのメリットを享受できていましたが、バックオフィスの社員は、郵便やオフィスなどリアルな場所・物と結びついた業務が多いために、実際にはリモートワークがしづらいという状況もありました。
フルリモート勤務という制度も作っていた
2012年には、前述の「週に1日の出社」も求めない「フルリモート勤務」という制度を作りました。フルリモート勤務の制度を作ったきっかけは、入社後に沖縄に転居されることになった社員の依光さんに引き続き万葉で働いてもらえるようにするためでした。
フルリモート勤務の場合、簡単に出社ができる関東近隣在住の社員に比べて、できる仕事の幅が少し狭くなります。例えば、次のような仕事をすることは難しくなります。
そのため、フルリモート勤務は、通常勤務とは別の形態として作り、年に1度程度、出張で出社して社員と交流していただくという設計にしていました。
リモートワークのことは分かっていると思っていた
そのように、会社の初期からリモートワークを取り入れてやってきたので、基本的に私たち(特にエンジニア)はリモートワークに慣れており、分かっていると思っていました。チャットの活用、オンラインでの会議、オンラインでのカンバン、リアルだけで決まったことを忘れずにリモートの仲間に共有すること、オンラインでのランチ会、良いマイクの導入…。いろいろな工夫をして来たと思います。
しかし、実際のところ、私たちはリモートワークのことを本当には分かっていなかったのかもしれない。2020年2月に新型コロナウィルスの流行によって全社がフルリモートで勤務するようになってから、段々とそのように感じるようになりました。
このことを、よりはっきりと認識することができたのは、全社がフルリモートになって以降、新型コロナ流行以前からフルリモートで働いていた沖縄の依光さんの様子が明らかに変わり、より積極的で生き生きとした感じになったからです。
全員がリモートワークをすることで何が変わったか
依光さんに、全員がリモートワークになったことでどんな変化があったかを尋ねると、「明らかに前よりも働きやすくなった」という答えが返ってきました。
以前は、大部分のメンバーが頻繁にリアルで会って仕事をしている中、依光さんだけが固定的にリモートワークをしている状態でした。今にして思えば、その当時は今よりも「ほかのメンバーの様子が掴みづらい」と感じていたそうです。その感覚の背景には、ほかのメンバーはリアルで雑談や交流、ちょっとした相談などを行っているが、自分はそれを知らないので様子がわからない、踏み込みづらいというような「遠慮」があったと言います。
それが、全員がリモートワークの状態になったことで、まず、リモートでのちょっとした雑談の機会が増え、それによってメンバーの状態が把握できたり、スムーズにコミュニケーションができるようになったそうです。自分だけが把握できていないほかのメンバー同士のやりとりなどは基本的に発生しないと分かっていることから、遠慮なく気軽に行動できるようになったし、前よりもリモートワークのコツを掴めた気がするとのことでした。
リモートワーカーを隔てる見えない壁
振り返ってみると、私自身も、以前からリモートワークには不利な面があると感じていました。
たとえば「今日は◯◯さんがリモートだからつなぎましょう」といって音声通話をつなぎ、PCのカメラにホワイトボードを映したとします。
しかし、カメラはすべての必要な風景を映すことはできません。たとえば、会議中に発言していない誰かの表情、急に開いた会議室のドア、誰かがいつもと違う靴を履いている…などといった情報を即時に伝えるのは難しいでしょう。
音声が少し聞き取りづらかったとしても「ある程度は仕方ない」と双方が考えます。マイクから遠い人のボソッとした発言が聞き取れないうちに、すぐに次の話が始まってしまったとしても、「聞き直すほどでもない」とそのままにしてしまうケースも多かったと思います。
リアルワーク組がお昼に一緒に外食に行ったとしても、リモートワーカーは一緒に行くことができません。
ただ、こういった、情報取得の面の不利は、必ずしも致命的なものではありません。聞き取りにくい音声は聞き返し、知らない情報はいつ決まったのか確認し、自分から雑談をしかけるといった行動によって、問題を軽減することが可能です。だから、チーム全体でリモートワーカーも含めた情報共有に気をつけて工夫する文化があれば、OKだと思っていました。
しかし、依光さんの例を通じて、本当にネックになっていたのは情報取得の不利そのものというよりも、自分が属していないリアルという場があることから生まれる「遠慮」「距離感」という見えない壁だったのではないかということが理解できてきたのです。
リアルとリモートワークを再び混ぜるとしたら
この話からは、次のような法則が推測できます。
しかし、リモートワークのパフォーマンス最大化のために、リアルワークを全部なくすのが良いかどうかというと、そうとも言えないと思います。リアルで会って一緒に仕事することで実現できる効率の良さ、質にも、他に代えがたい価値があると考えるからです。
新型コロナウィルスの流行がおさまり、リアルワークを復活させても大丈夫になってきた場合に、どういうデザインを目指すのかというのは、非常に興味深い話題だと思います。
個人的には、以前よりもリモートのウェイトを上げながらも、リアルが混ざる状態にしていきたい。そうなってもリモートワーカーが十分に働きやすい状態にしていきたい、という思いがあります。そのためにどうするか。その鍵は、書いてしまうと平凡な一文ではありますが、どうやって「遠慮」が生まれないようにするか、だと思うのです。
「遠慮」を生まない仕組みを作る
新型コロナウィルス前には、私は、遠慮というのは個人の性格の問題だと考えていた部分がありました。「どうぞ遠慮しないでくださいね!!」と言えば大丈夫かな、というような、そういう感覚です。
今でもそのような感覚が完全に無くなったわけではありませんが、実際には、遠慮というのは、個々の性格の問題ではなく、いろいろなメカニズムの作用で生まれるべくして生まれてくるものなのだという気がしています。たとえば、次のようなことが遠慮を生む要因になり得ると考えられます。
そこで、遠慮が生まれないようにするためには、次のような工夫が効果を発揮するのではないかと考えています。
まとめ
以上、本記事では、全社が毎日リモートワークを行うようになったことをきっかけに、従来のリモートワークはまだ最高の状態ではなかったこと、最高の状態にするためには「遠慮」の壁をなくすのがとても重要だと感じた話をご紹介しました。
次回は、技術系新入社員のオンボーディング・研修についてご紹介したいと思います。
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