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祖父母の家を思い出していた

先日結婚するにあたって婚姻届に「新しい本籍地」を書く欄があった。「新しい本籍地」とはなんだろう。自分の本籍地にすればいいのだろうか。僕の本籍地は生後何年か住んでいた北区の長良東なのだが、もはや家もなければ、親族ともに何の所縁もない。では今住んでいるところだろうか。しかし入居しているマンションの住所を本籍地にするというのはどうも違う気がする。端的にいうとダサい。となると残りの選択肢は実家のある場所か、新たに本籍地を設定するかのどちらかになる。その時にふと阿倍野区北畠1丁目にあった祖父母の家のことを思い出した。裏手には経営する料理店の懐石風の支店店舗があり、この付近は今でもよく夢の中に出てくる。夢の中に出てくるということは、もうその祖父母の家も、その支店店舗も、現存しないからである。

このことを久しぶりに母に話すと「あの家が建ったのは昭和11年らしいよ」と言っていた。昭和11年ということは1936年、戦前である。祖父が生まれたのは1936年で、結婚してから2年間は難波新地五番丁、1967年までは天満に住み、1968年に戦前から残るこの建売を購入し北畠に引っ越したという。戦前の家だということは全く知らなかった。全く知らずに母がまだ仕事をしていた幼児の頃から高校生くらいまで暮らしていたのである *1。しかしいま思えばものすごく古い家だった *2。そう思うとあの家のことが妙に懐かしくなり、あの家の匂いや夏の縁側の日当たり、階段の軋む音など、いろんなことを思い出した。やはり一軒家はいい。心の落ち着きが全然違う。30代か40代には一軒家をもちたいと思っているが、やはりこの頃に過ごした強い思いがあるのだろう。ちなみに家の間取りなどはこんな感じだった(1階部分とお庭しか描いていない)。

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いまはこの家があった場所と両隣の土地を含めて巨大なマンションが建ってしまっている。今の時代、一度売った土地は買い戻したいと思っても、二度と買い戻せないことがある。しかし裏手のお店があった場所にはまだ祖父母の所有するマンションがある。僕は二度とこの土地は手放すまいと決意し、「新しい本籍地」に「阿倍野区北畠1丁目○○」と書き込んだのである。

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*1 都合上祖父母の家から越境入学していた。
*2 思えば僕が小学生の頃一度NHKからドラマのロケをさせてほしいという話が来たこともあった。NHKの広報の人からどーもくんのぬいぐるみをもらったのを覚えている。

*おまけ1(正面玄関の様子)

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*おまけ2(東側の庭の奥)

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*おまけ3(東側の庭の手前側)

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