不定期連載小説『YOU&I』58話
そして迎えた土曜日。この日の夜にみんなで集まり旅行の話しをすることになっている。そこには大久保も来ることが決まっており、恐らく旅行に一緒に行くことが決まるだろう。
國立も、大久保のことが嫌いなわけではない。しかし、中野に関してのあの少し挑発をするような話しぶりが気になっていた。
もし大久保が言っていた「一目惚れ」が冗談ではなく本気だったとしたら。そう考えると、どこか胸がザワザワし落ち着かない。
大久保を客観的に見ると、いわゆる“イケメン”と呼ばれる部類に入る。そして、アグレッシブな性格に加えて車まで所有している。
とても國立が敵うはずもない。
自分自身で中野のことを諦めることは出来るが、万が一にも大久保と中野が交際するようなことになったら。それは想像すらしたくないことだった。
「はぁ……。俺は一人で何を考えているんだろ。なんかどんどん卑屈になってくし、嫌な奴になるな」
中野のことが気になりだしてから、國立は自己嫌悪ばかりしていた。
そんなことを考えながら、出かける支度をしていると、携帯にメッセージが入る。
「お疲れ様! 今日一緒に行かない?」
送り主は市ヶ谷だった。
「……冬真は優しいな。あーあ、なんかついこの間まで冬真にも嫉妬してたとか考えると、やっぱり俺って性格悪いのかな」
大久保のことがあってからは、市ヶ谷への嫉妬心はすっかりなくなっていた。
「うん、一緒ニ行こう!」
國立はそう返事をし、市ヶ谷と待ち合わせをすることになった。
一方、その頃大久保も出かける準備をしていた。髪型をセットしながら、
「今日はまた中野さんに会えるのか。楽しみだな。さーて、國立くんはどんな反応するのかな。こっちも楽しみだ」
とつぶやいた。大久保が中野に一目惚れしたのは本当のことである。しかし、それとは別に國立のことも大久保は気になっていた。
小金井が言っていた「國立と中野の仲が悪い」というのは、恐らく國立が中野に惚れ、それを隠すために距離を取っているのだと大久保は考えていた。
大久保の性格上、自分の気持ちを押し殺すことは理解も納得も出来ない。もし國立が中野に気があるなら、正々堂々と競い合おうと思っていた。
大久保自身、それで國立に負けたとしても納得がいく。お互いに本心でぶつかることを望んでいた。
「立夏も相当おせっかいだけど、俺も大概かもな。だけどしょうがない。中野さんに惚れた者同士、正々堂々といきたいからね。さぁ今日は國立くんの気持ちをハッキリと聞いちゃおうかな」
大久保はとても楽しそうな表情でそうつぶやき、家を後にした。
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