不定期連載小説『YOU&I』61話
河口湖へ旅行をすることが決まり、その後は皆で楽しく食事をした。大久保は持ち前の明るさで皆を盛り上げ、すぐに打ち解ける。その様子を、笑顔でいながらも寂しげな目で國立は見ていた。
そしてあっという間に時間が過ぎ、食事会はお開きとなる。
「いやー、今日は楽しかったよ。旅行も楽しみにしてるね!」
大久保は陽気にそう話すと、
「こちらこそ! 今日は本当にありがとうございました!」
と神田たちも笑顔で大久保を見送った。
神田も市ヶ谷も小金井も、そして中野も大久保に対して好意的である。帰り道、話題は大久保のことで持ちきりだった。
「ならまたね!」
そして國立も皆と別れ、一人夜道を歩いて帰る。
ふと空を見上げると、そこにはきれいな三日月が姿を見せていた。國立はふと立ち止まり、その三日月をしばらく眺める。
「……なんか、本当に自分ってちっぽけなんだな」
思わず言葉が漏れてしまった。これまでの出来事を思い返すと、一人相撲をしていたように感じる。
勝手に人を好きになり、勝手に人に嫉妬をし、勝手に一人で傷ついている。
大久保の今日の姿を見てそれを痛感した。嫌な人かと思っていたが、あんなに笑顔で皆と接し、そして楽しそうにしていた。そこには裏表なく、ただただ楽しそうにしている姿だけが見えた。
今まで、自分のことしか考えてこなかった。
自分が傷つきたくないから、自分の気持ちを知られたくないから。
そんなことで逃げ続けていただけなのかもしれない。
一人で空を見上げながらそんなことを考えた。
それから國立は、皆と少しずつ距離をとるようになった。
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