見出し画像

30日間の革命 #毎日小説7日目

 「とは言っても、俺も森下と話したのは1年生の頃だけだからな。いきなり話しかけて『一緒に革命を起こそう』なんて言ったらドン引きされるよ」

 「そりゃそうでしょ。だから最初は様子を見るのよ。森下君のことをしっかりと観察して、話しかける適切なタイミングを見計らうのよ」

 そして翌日から二人は森下の観察を始めた。

 観察を始めてすぐ分かったのは、やはり彼の統率力が優れているということだった。部活の始まる前に、後輩を率いてグラウンドを整備し、監督が来る前にしっかりとウォーミングアップを終わらせる。そして、他人に厳しくするだけでなく、自分も厳しく追い込み、誰よりも遅くまで練習をしている。そんな森下に、後輩はもちろん同級生も逆らおうとする者はいなかった。部活動での森下は、傍から見れば監督と同等の影響力を持っているように見えた。

 それでは、日常生活ではどうだろうか。部活動以外の森下を観察すると、また坂本と加賀を驚かせた。

 部活動同様に、規律をしっかりと守り、また勉強にも励んでいる姿が見られた。他の野球部員も、規律はしっかりと守っていたがやはり勉強が苦手な人が多い。なぜ、そこまで頑張れるのかを同じクラスの野球部に聞いてみると、監督の影響が強いとのことだった。

 野球部では、赤点を1人でもとったら連帯責任でかなりハードな罰がくだされる。監督の口癖として、「勉強ができない奴に野球をやる資格はない」というものがあるらしい。なので、キャプテンである森下は監督の言葉通りに、野球にも勉強にも励んているとのことだった。

 「これさ、やっぱり森下は厳しいんじゃないの?」

 「厳しいって?」

 「革命軍に参加してもらうことだよ。もはや洗脳されているレベルで監督の言いなりだよ。1年の時から真面目な奴だとは思っていたけど、2年間でこんなに成長していたとは」

 「だからと言って、彼が完璧な監督の信者とは思えないわ。人間誰しも、表があれば必ず裏があるのよ」

 「それ小春が言うか?」

 「私だって、まさか革命を考えているなんて他の誰も思ってないでしょ」

 「まあそれはそうだけど」

 「とにかく、彼のリーダーシップは革命に絶対必要なの。もっと注意深く彼のことを観察して情報も集めましょう」

 「となると、なんでそこまで監督の言いつけを守るかってのが気になるな。去年のキャプテンも厳しかったけど、頭は悪かったらしいし、監督の愚痴も言ってたみたいだよ」

 「森下君は監督の愚痴とか言うのかしら?」

 「いや、友達の野球部の奴に聞いたらさ、いつかみんなで少しだけ監督の愚痴を話したんだって。そしたら森下は愚痴を言うどころか怒ったらしいんだよ」

 「へぇー。本当に監督のことを慕っているのね」

 「だから洗脳だろ。なんでそこまで監督に従うんだろうな。俺だったら二日で野球部辞めてるよ」

 「監督との関係に何かヒントがあるかもね」

 「監督かー。あの人おっかないから、俺はあんま関わりたくないな」

 「だめよ。こうなったら監督も含めて観察しましょう」

 「まじですか」

 こうして森下勧誘計画は、監督をも巻き込んで進んでいったーー


▼30日間の革命 1日目~7日目


色々な実験を行い、その結果を公開していきます!もし何かしらの価値を感じていただけましたら、サポートしていただけますと幸いです!