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不定期連載小説『YOU&I』22話

市ヶ谷が取り出したゲームは『マリオカート』であった。あのコクミキャラクター『マリオ』達がカートに乗ってレースをするという大人気ゲームである。

國立自身も、小学生の頃に少しだけでプレイしたことがあったので、

(これなら少しはやれるかも)

と胸を撫でおろしていた。しかし、ゲームとは物凄いもので、数年の間でもかなりの進化をとげている。マリオカートも同様に、もはや國立がプレイした頃とは全く違うものとなっていた。

コントローラーを持ち、いざゲームがはじまると、何をどう操作していいのか國立には全くわからなかった。

ただただキャラクターを前に進めることしか出来ず、気づけばあっという間に最下位となった。その結果に、最初はみんなも

「まあゲーム慣れてないからしょうがないよね」

と気を使ってくれていたが、数回プレイしても変わらず最下位を取り続ける國立に、

「春樹ってゲーム下手なんだな」

と言われてしまう始末。

もちろんその言葉自体には嫌味やバカにする意味はなく冗談ではあったが、中野の前でカッコ悪い姿を見せてしまったことに國立の心は沈んでいた。しかし、落ち込んだ態度を見せてしまえば、この場の空気を悪くしてしまうので、ここでも必死に作り笑顔を見せた。自分が中野のことを意識していると他の人に悟られないためにも、自分の心に固く蓋をする。

その後も何回かプレイを繰り返していったとき、

「冬真と亜希ってゲーム上手いよね。流石ゲーマーだわ。私も春樹くんほどじゃないけど、ゲーム苦手みたい」

と神田がつぶやいた。

確かに言われてみれば、1位と2位を取り続けているのは市ヶ谷と中野の二人。

「まあね! こう見えてマリカーは得意ですから」

と中野は誇らしげな顔で答える。

「いや、俺の方が上手いな」

市ヶ谷は少し冗談っぽくそう言うと、

「えー! 私の方が上手いよ!」

と中野も応戦する。二人がふざけあっている姿を見て、國立は少し心に棘が刺さったような感覚を覚えた。

(……?)

しかし、その痛みが何なのかは、國立自身理解出来ていない。

「ならさ、二人で対戦してみたら? どっちが上手いかここで決めようよ」

神田はじゃれ合う二人の仲裁に入るようにそう提案し、

「お、いいね! 正直余裕だけどね」

「いや、私の方が絶対に上手いから!」

と二人も乗り気となる。そして、市ヶ谷と中野の二人で対戦をすることになった。

國立はコントローラーを置いて一息ついた。正直ゲームがこんなにも疲れるものだとは思わず、いったん休憩できることに少し安心していた。そして、神田とともに市ヶ谷と中野のプレイを観戦する。

▶To be continued

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