不定期連載小説『YOU&I』62話
國立が皆と距離を取り始めてから数日後、市ヶ谷からLINEで連絡が入った。
「最近元気なさそうだけど大丈夫?」
國立はそのメッセージを確認すると、しばらくは返事を返さずにいた。そして数日後に
「ごめん、実は今体調悪くて……。だから今度の旅行は申し訳ないけど不参加にするよ。でも、皆に心配はかけたくないから、用事が出来たってことにしておいて。ごめんね」
と返事をした。市ヶ谷からはすぐに返信があり、
「マジか、大丈夫? 旅行のことは気にせず、ゆっくり休んで早く治せよ!」
とこちらを気遣ってくれていた。しかし、國立はそれ以降返信をすることはしなかった。
仲が良かった人達と一度距離をとると、なぜだか赤の他人よりも遠くの存在に感じる。大学で市ヶ谷たちを見かけると、気まずさを感じ避けるようにもなっていた。
中野が初めて話しかけてきたあの授業にも出なくなり、ほとんど顔を合わせることはなくなった。
そうして迎えた夏休み。國立は一人カフェで本を読んでいた。カフェとは、中野がいるカフェではない。新しく雰囲気の良い店を見つけていた。
ふとスマホのカレンダーを見ると、今日の欄には「旅行」と予定が入っている。國立はそっとその予定を削除し、コーヒーを口に含んだ。
それから数時間後、本を読み終えた國立は店を後にする。辺りはすっかりと暗くなってしまった。そのとき、國立のスマホに着信が入る。
その番号は登録されていなかったので出ようか迷ったが、念の為出ることにした。
そしてスマホからは、
「もしもし、國立くん? 大久保だけど」
という声が聞こえた。
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