不定期連載小説『YOU&I』43話
中野の態度が國立の不安を確信へと変えていた。
中野は、國立と小金井が付き合っていると勘違いしている。しかも、二人は周りに隠れて交際していると。
なので、二人が一緒にいるところを目撃したと思われないように、あえて気づかないふりをしていた。
しかし、中野の性格からして隠し事は苦手。気づいていないふりが不自然すぎて、國立からすると“避けられている”という勘違いを生んでしまった。
さらに心配性である國立は、小金井が急に旅行に行くことに決まったのは、何か理由があるのではと不安になったいた。その理由は、自分が中野のことを好きだとバレてしまったからではないかとも考えていた。
そのタイミングで中野の態度を目の当たりにし、本当に避けられていると勘違いしてしまった。
(ヤ、ヤバい……。本当に中野さんに避けられている)
そう思った國立は、あからさまに落ち込んだ。それに気づいた小金井が、
「? どうした春樹。何か急にテンション下がってない?」
と話しかける。しかし、國立にはそれに答える余裕はない。
「……」
小金井の問いかけにも反応することが出来なかった。単なる勘違いなのだが、國立の心には大きく傷がついていた。
まだ、自分の気持ちが相手にバレただけなら問題ない。しかし、中野は自分のことを避けている。つまりは、自分が中野に好意を寄せることが迷惑だということ。
まさに過去のトラウマと全く同じ状況になってしまったと國立は考えていた。
「……春樹? 大丈夫か?」
小金井も、國立がいつもと様子が違うことを察する。
「……ご、ごめん。ちょっと用事を思い出したから、俺も先に帰る。お金置いておくからこれで支払いして」
國立はそういうと、財布に入っていた五千円札を机に置き、そのまま店から出ていった。
「お、おい! 春樹!」
一瞬の出来事に、小金井はどうすることも出来なかった。
「お金置いていったけど、先払いだからお金はいらないぞ? 春樹は一体どうしたんだ?」
小金井は何が起こったのかを全く理解出来ない。渋々、國立が置いていったお金を持ち國立を追いかけようとする。
その時、店に中野がいることに気づいた。
「あれ? 亜希? どうしてここにいるんだ?」
小金井は中野に話しかける。
「え! あ、あれ? 立夏ちゃん? えー、ぜ、全然気づかなかったなー」
中野は小金井に話しかけられたことに驚き、変わらず不自然に気づいていなかったふりをして答えた。
「? というかその格好、ここのカフェで働いているの?」
「う、うん。そうだよ。えー、で、でも立夏ちゃん達が来ていたこと全く気づかなかったなー」
「?」
中野の不自然な態度に小金井は疑問を持ったが、なぜそうなっているのかはわからなかった。
「あ、あれ? もう帰るところ?」
「うん。……そういえば、ここのケーキ、美味しかったよ」
「本当に! ありがとー! 私も好きなんだよ、ここのケーキ!」
小金井がケーキの話しをした途端、いつもの中野に戻っていた。そのことに気づいた小金井は、何かあったことを察した。
「……また来るね」
「うん! また学校でもよろしくねー!」
そうして小金井はカフェを後にした。
小金井が中野と話しをしたのは今日が初めて。しかし、國立の急変した様子と、中野の不自然な態度を見ると、二人の間に何かあったことが想像出来た。
「亜希はさっき、『立夏ちゃん達』って言ってたな。ということは春樹も来ていたことに気づいていた。でも、何かの理由で気づかないふりをしていた?」
小金井は帰りながら、二人の関係について考え始めた。
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