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不定期連載小説『YOU&I』51話

大久保は、自宅に着いたあとも中野の笑顔が頭から離れなかった。

「……可愛かったな」

自宅で一人そうつぶやく。それほどまでに大久保にとっては衝撃だった。

これまで、大久保の人生において一目惚れという経験はない。顔も良く、昔から女性関係においては全く苦労をしたことがなかった。惚れるより惚れられる方が多く、自ら女性へアタックすることはまずない。

そんな大久保だが、今回ばかりはそうもいかなかった。

その後も、普通に過ごそうとしても中野のことが頭から離れず、食事すらまともに喉を通らない程の重症になる。

「おいおい……。まさか本当に一目惚れしたのかよ、この俺が」

國立同様に、大久保も中野の虜になってしまった。ただ、國立とは決定的に異なる点がある。

「……よし、こういうことはウジウジ悩んでもしょうがない。惚れてしまったのなら、全力で頑張るしかないだろ。それでダメならそれまでた」

そう、國立とは違い大久保はとにかく前向きなのである。嫌われたらどうしようなどとは考えず、とにかく行動をする。それでダメならしょうがないと割り切っているのだ。

なので、大久保はこれから中野に猛アタックを仕掛けるつもりである。國立はそんなことになっているとはつゆ知らず、未だに自分のプライドと闘っていた。

そして、

「とりあえず、接点を持たないことにはどうにもならんからな。まあとりあえず面識は出来たから、明日またあのカフェにでも行くか」

と大久保は次の行動を考えていた。

その翌日、大久保は考えていた通りに一人でカフェへと向かった。しかし、そこには中野の姿はない。

「……やっぱり闇雲に行っても会えないよな。シフトどんな感じで入ってるんだろ。他の店員さんに聞いてみようかなぁ。でも、さすがにそれはやりすぎか。まあまだ焦らずとも、今日はゆっくりと作戦でも考えるか」

と、コーヒーを頼んで席へと座った。

「中野さんはまだ俺のことを名前しか知らないからな。立夏と上手く絡めてこっちのことを知ってもらうか、話す機会を作るしかないか? それとも、カフェに通って、何とか自然に仲良くなるしかないか? てか、その前に中野さんって彼氏がいるかもしれんしな。よし、まずは情報を集めるか」

そして、スマホを取り出すと小金井へと電話をかけた。

「……はい?」

「あ、立夏? 今大丈夫?」

「この後バイトですが、少しなら大丈夫ですよ」

「そうか。なら少しだけいいか?」

「はい、大丈夫ですけど」

「単刀直入に聞くけどさ、中野さんって彼氏とかいるの?」

「え? いや、まだそこまで亜希とは話してないのでわかりませんね」

「そうなの?」

「はい。まだ亜希とも知り合って長くはないので、そんな話しはまだしていません」

「何だよー。じゃあさ、もしそういう話しをしたら教えてもらってもいい?」

「え? 先輩にですか? 何で?」

「まあ簡単に言うと、一目惚れだな」

「昨日会った時にですか?」

「おう」

「先輩って単純なんですね」

「何だよそれ。まあ詳しくは今度会ったときに話すから、さりげなく聞いといてくれよな。あ、俺が中野さんに一目惚れしたってことは内緒だぞ」

「まあ先輩には色々とお世話になっているので、いいですけど。でも、変に事を荒立てないでくださいね」

「そこら辺は安心しろ。まあ俺も立夏には相談しながら進めていくからさ。ならよろしくな」

そうして大久保は電話を切った。



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