不定期連載小説『YOU&I』39話
中野と小金井たちが旅行について話しをしているとき、國立は一人で昼食を食べていた。
「旅行か……。こんな状態で旅行なんて行ったら、それこそ精神的に持たないな。でも、俺だけ断るのも空気悪くするだろうし、かといって大人数で行くとなっても、それはそれで面倒くさいな……」
旅行の話が出てきてから、國立は憂鬱な気分になっていた。
「友達らと旅行に行くなんて楽しいだろうなって考えていたときもあったけど、いざ自分がその立場になると面倒くさいもんだな。これなら一人旅の方がよっぽど楽しそうだよ……。あーあ、これも俺が中野さんのことを好きになったからいけないのか」
そんな独り言をつぶやきながら、一人でうなだれていた。そんなことをしている間に、次の授業の時間が迫る。昼食を済ませ、足早に教室へと向かう國立。次の授業も市ヶ谷たちとは別なので、気持ちは楽だった。
開始5分前に教室へと着き、いつも通り窓側の席に座る。すると間もなくして、隣に誰かが座ってきた。ふと目をやると、隣に座ったのは小金井だった。
「ちょ、ちょっと。何だよ急に」
國立は驚いた表情を見せる。
「何って、隣に座っただけじゃない」
小金井は相変わらず淡々と答える。
「い、いや、何でここにいるんだよ? もう授業始まるぞ?」
「? 私もこの授業とってるけど?」
「は? そ、そうなの?」
小金井も國立と同じ授業をとっていたのだが、國立はそのことに今まで気づいていなかった。
「うん。だから隣に座っても何も問題ないと思うけど?」
小金井は國立の目をじっと見つめてそう言った。急に見つめられた國立は、ドキッとし思わず顔を逸らす。
「そ、それなら仕方ないか」
と一言つぶやき教科書に顔を向ける。
(な、何で俺は照れてるんだよ……)
國立は自分自身が情けなく感じていた。
「……そういえば、さっき亜希たちと話したよ」
小金井は國立へと話しかけた。
「……あ、あき?」
國立は動揺もあってか、亜希が誰かがわかっていなかった。
「ほら、この前の食事会のときにいた子だよ。他にも智美と冬真とも話したよ」
その二人の名前を聞いて、亜希が中野のことだと國立は気づいた。
「は!? 中野さんと話したの? それと冬真と神田さんとも? 何で急に?」
國立は驚きのあまり少し声が大きくなった。
「私も知らないけど、亜希から話しかけてきたんだよ。それで、今度旅行一緒に行かないかって。春樹も行くんだろ? だから私も行くことにしたよ」
「……は?」
國立は一瞬固まった。小金井が何を言っているのか全く分からなかったからだ。
▶To be continued
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