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不定期連載小説『YOU&I』26話
この日の國立は、いつにも増して気分が浮き沈みしていた。中野の家に行くということで高まっていたテンションも、市ヶ谷に抱いてしまった嫉妬心を自覚し落ち込む。
まさにジェットコースターのように國立の気持ちは急降下していた。
しかし今日はまだ終わらない。このあとは飲み会に参加しなければならない。飲み会には合計10人ほど参加することになっている。大勢で集まることに慣れていないのはもちろん、また市ヶ谷と中野が仲良くしている姿を見ることに耐えられるのか不安だった。
(できることならこのまま帰りたいな……)
みんなが楽しみにしているはずの飲み会だが、國立は憂鬱でしかなくなっていた。
そして、そんな気持ちのまま時間は経過し、どんどんと参加者が集まってきた。今回は神田が色々なところに呼びかけて集めた人たちなので、当然國立が知っている人はいない。
ほぼ初対面な人たちに囲まれ、國立は自分の居場所がないことに気づく。そんなとき、ふと市ヶ谷の方を見ると、色々な人たちと笑顔で話している姿があった。さすが人気者。顔も広くてどこに行っても馴染んでいる。
自分と市ヶ谷との違いを目の当たりにし、気持ちは更に落ち込んでいく。
(……本当に帰ろうかな。これだけ人数がいるんだし、急用が出来たとか言って帰ってもそんなに影響はないだろ)
一人でそんなことを考えていたとき、
「しかしあいつら遅いよなぁ」
と急に後ろから話しかけられた。振り返るとそこには市ヶ谷がいた。さっきまで他の人たちと話していたので、急なことに國立は驚く。
「え、あ、あいつらって?」
「亜希と智美だよ。そんなに準備って時間かかるもんかね」
「ど、どうなんだろうね。ま、まあ女性は色々と大変なんじゃないな」
國立は少ししどろもどろになって答えた。
「そういうもんかね。……なあ春樹、何かあった?」
その様子を見抜いてか、市ヶ谷は國立に問う。
「え? い、いや、と、特に何もない……よ」
いきなりそんなことを問われた國立は更に焦ってしまう。
「……そっか。何もないならいいけど、何かさっきから浮かない顔してるなと思ってね」
気づかれいた。まさか市ヶ谷がそこまで自分のことを気にかけてくれているとは思っていなかった。ありがたい気持ちとともに、こんなことで心配をかけてしまったことに情けなさを感じる。
「い、いや。ほら、俺って元々人見知りだからさ。知らない人がたくさんいて少し緊張しちゃったというか……」
半分本当で半分嘘である。市ヶ谷に嫉妬しているとは本人に言うわけにもいかず、こう言う他なかった。
「何だ、そんなこと気にするなよ。俺だって顔見知り程度でそんなに仲の良い奴がいるわけじゃないからさ」
「で、でも冬真は凄いよ。みんなから慕われてるっていうか、やっぱり人気者って感じだね」
「何言ってるんだよ、そんなんじゃないよ。ま、俺にとってはお前が一番の友達だと思ってるからさ。春樹もそんな気を使うなよ」
市ヶ谷はそう言いながら國立の肩をポンと叩いた。
▶To be continued
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