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30日間の革命 #毎日小説34日目

 会場は少しざわめいた。そして、近くにいたメンバーたちも動揺を隠せなかった。いきなり”革命”と言われても、理解できるはずがない。一人ひとりに説明するならまだしも、30人の前では通じないのではないかと不安になった。事実、学生たちの中には、少し笑ってひそひそと話し合う姿も見られた。しかし、坂本はそんな状況を一切気にせず話を続けた。

 「まず始めにみんなに分かっておいてほしいのは、今言ったこと、そしてこれから話すことは決して冗談だったり、遊びでもなくて、本気であるということ。そのうえで話を聞いてほしいの」

 集まった学生たちは、いつになく真剣な表情で話す坂本を見て、再び静寂を取り戻した。静かになった様子を見て、再び坂本が話し始めた。

 「さっきも言った通り、私たちはこの学校で”革命”を起こそうと思っているの。そして、その革命とは、私たち学生に主権を戻すこと。つまり、全ての学生が、自分自身で生き方を決める。それが私たちが目指している革命よ」

 メンバーの不安をよそに、坂本はどんどんと核心をついていく。

 「今の学校では、基本的に先生が、私たちの生き方を決めるわ。生き方って言うと大袈裟に聞こえるかもしれないけど、服装や髪型をはじめ全ての学校での過ごし方も基本的には校則で決まっているわ。これに従わなければ、罰則がある。これは、生き方を決められていると言っても過言ではないと思うの」

 話を聞きながら、加賀たちは驚いていた。いつもの坂本とは違い、話し方に熱があり、言葉も大胆なものをあえて選んでいるように見えた。

 「もちろん、全てが悪だと言わないわ。校則だって、一つ一つに意味はあると思う。でも、私たちは全部に納得しているの? おかしいって思うこともあるんじゃないかしら。でも、それに何の疑問も持たずに、従っていない? 先生の言うことに従うことが当たり前、校則は守って当たり前。それって、よく考えればおかしなことじゃないかしら?」

 時折身振り手振りを加えながら、坂本は熱弁した。そして、一息ついた後、今度は元の坂本に戻ったように、再び穏やかな口調で話し始めた。

 「本当はみんなもこうしたいって思うことがあるんじゃないかしら。 例えば髪型だって、好きな色や長さにしたいと思う。服装だってそう。私たちは、自分自身で好きな生き方を選ぶ権利があるんだって、私はそう考えている」

 すると、学生の一人から質問が上がった。

 「あの、ということは先生に反抗しようってことですか?」

 「質問ありがとう。反抗することもあれば、反抗しないこともあるわ。それ自体も私たちで決めるの。そして、先生と生徒の関係を主従の関係から、対等な立場へと戻すこと。学校を荒らすことだったり先生に歯向かうことが目的じゃないの。先生たちとも対話をしながら、私たちは自分たちであるべき姿を目指すわ」

 質問をした学生は納得したような表情だった。

 普通に考えれば、いきなり革命だの主権だの突拍子もなく話をされても理解できないのが当たり前である。しかし、この密集された教室内で、学校で最も影響力のある生徒会長が話し、その周囲には学校でも名の知れた人たちが集まっている。そんな状況に、集まった学生たちは革命という二文字をすんなり受け入れることが出来ていた。そして、加賀たちの不安もいつしか消えていた。

 「じゃあ、これから具体的にどうやって革命を起こすかを話していくわ」

 坂本はあらたまって話はじめた。

 「……文化祭。11月3日に行われる文化祭の日に、私たちは革命を実行しようと思う」


▼30日間の革命 1日目~32日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

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