30日間の革命 #毎日小説17日目
加賀は2組の教室を出たあと、そのまま1年の教室が並ぶ2階へと向かった。目的は、1年3組の馬場清史郎だった。加賀がピックアップした最後の人物である。馬場は1年生ながら、既に校内でも有名だった。いわゆる、完璧に近い存在であり、その見た目、成績、運動神経、全てにおいて校内でトップクラスだった。裏では”坂本小春の後継者”なんて呼ばれていたりもする。タイプの違うメンバーを揃えることを念頭に動いていたが、加賀自身も坂本の後継者を育てなければならないという思いから、馬場をピックアップしていた。
1年3組の様子を廊下から少し伺ってみると、馬場が中心となってクラスメイトと食事をしていた。しかし、それは通常と異なる異様な光景だった。高校生ともなれば、給食ではなく各自弁当だったり、購買部で購入したものなどを自由に食べる。場所も制限されておらず、教室で食べても、神原のように部室で食べても、坂本たちのように屋上で食べても問題はない。そして、たいていの生徒は、仲の良い友人3~6人程度で集まって食べる。しかし、この1年3組は全員が同じ教室で食事をとり、そして全員が馬場を中心とした同じグループのように食事をとっていた。その光景を不思議に思った加賀は、廊下を歩いていた1年生に声をかけた。
「ねえねえ、1年3組っていつもみんなで集まって飯食ってるの?」
「え? ああ、いつもかは分かりませんが、たまにみんなでクラス会について、ああやってお昼休憩を使って話し合ってるみたいですよ」
「クラス会?」
「はい。3組はみんな仲がいいんですよ。馬場君が中心となって、毎週みんなでどこかに遊びにいくクラス会ってのをやってるみたいです」
「へー、凄いクラスだね。それで今も集まって、どこに遊びに行こうか決めてる訳だ」
「本当に凄いですよね。なので、なかなか他クラスの私たちは3組に入る隙がないですよ」
「そうなんだ、大変だね。でも教えてくれてありがとね」
加賀は、馬場のリーダーシップに驚いていた。クラス会なんて、正直面倒で、自分だったら毎週参加するなんて避けたいものである。しかし、1年3組の様子を見ると、全員が嫌な顔をせず話し合いをしているようだった。
(確かに、小春の後継者って言われるのも何となく理解できるな)
そう思った加賀だったが、馬場には、坂本とはまるで違う何かを感じていた。その何かは上手く言い表せないが、どこか頭に引っかかるような、そんな感覚を馬場には覚えていた。
話し合いの中に割って入るわけにもいかないので、加賀はしばらく様子を見て、そのまま自分の教室へと戻っていった。その加賀の姿を、馬場は確かに目で捉えていた。
「手崎、神原、馬場。候補としてはこんなところかな。手崎さんとは話すことができたけど、まだ二人とは話せていないな。まあでも、みんな個性的で面白そうな奴らだから、この中の1人をメンバーに入れたいな」
そんなことを考えながら、廊下を歩いていると、第二視聴覚室の明かりがついていることに気づいた。中を覗くとそこには坂本の姿があった。
「お疲れ! 今日は何してんの?」
「ああセト、お疲れ様! そりゃ革命に向けての計画を立てているところよ。セトの方はどう? メンバー探しは」
「3人ピックアップして、あとは全員とコンタクトをとってから最終選考って感じかな」
「あら、すっかり企業の人事さんみたいになってるね」
「坂本さんの命令ですからね。しっかりやらないと」
少しふざけながら話をしていると、坂本のノートに目がいった。
「それ何書いているの?」
「ああ、これね。今、私たち革命を起こそうとする集まりの名称も考えていたの。ずっと革命メンバーとか呼ぶのも面倒だしね」
「へー。集まりの名称ね。面白そう。俺も考えていい?」
「いいわよ。なら、今から一緒に考えて、それを森下君に見てもらいましょう」
こうして坂本と加賀は、この革命を起こす者たちの名称を考え始めたーー
▼30日間の革命 1日目~15日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!
takuma.o
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