不定期連載小説『YOU&I』50話
「はじめまして! 中野亜希です!」
大久保の元へと訪れた中野。大久保は挨拶を返そうと顔を上げる。
「あ、大久保です。こちらこそよろし……」
その瞬間、大久保に衝撃が走った。思わず持っていたスマホを床に落としてしまう。
「……」
大久保は何も言えないまま、中野をじっと見つめる。
「……先輩? スマホ落としましたよ?」
小金井がそう言うと、
「あ、あぁ、ごめん。ちょっと手が滑って……」
と大久保は落ちたスマホを拾い上げた。
「大久保さんって言うんですね! これからよろしくお願いします!」
中野は変わらず笑顔でそう話すと、
「あ、私レジ戻らなきゃなので、ここで失礼します! また時間あるときにでもゆっくりとお話ししましょう! それでは!」
とレジへと戻っていった。小金井はレジに戻る中野に手を振り、
「彼女がさっき言ってた友達の一人です。どうですか? 凄い良い子でしょ?」
と大久保へと話しかけた。
「……あぁ、凄い良い子だったな」
大久保は一点を見つめながらそう答えた。
「私が悩んでいたのはそのことなんです。凄い良い子なので、何とかしてあげたくて。私がお節介なのは理解しているんですが、あんな良い子がもし辛い気持ちになっているなら、何とか助けてあげたいんです」
すると、
「それはもちろんだ! あの子が辛い気持ちなら、助けてあげるべきだし、立夏の言っていることは何にも間違ってないぞ」
と、先ほどまでぼーっとしていた大久保が急に力強く話した。
「そ、そうですよね。やっぱり先輩に相談して良かった。なら、今度はもう一人の友達にも会ってくれますか?」
「あぁいいぞ! あの子のためならな」
「ありがとうございます! ならまた今度予定の会う日にでもお願いします!」
「もちろんだ! 何か困ったことがあればいつでも頼ってくれ! と、あの子にも伝えておいてくれよな」
「は、はい」
そして二人はケーキを食べ終え、退店をする。その際に、
「なら亜希、また来るね!」
と小金井はレジの中野に挨拶をすると、
「これからもよろしく! 凄い良いカフェだったから、これから定期的に通うことにするよ!」
と、大久保も力強く中野に話した。
「ありがとうございます! ぜひお待ちしてますね!」
中野はそう言い、笑顔で二人を見送った。
退店した二人は、
「先輩、今日は突然のことでしたが、ありがとうございました。またこれからもよろしくお願いします!」
「何言ってるんだよ! 困ったときはいつでも相談してくれよ! ってあの子にも言っておいてくれ」
「は、はい」
と挨拶をして解散した。
小金井は帰り道、
「やっぱり大久保先輩も良い人だな。でも、何か最後は凄い気合いが入ってたような気がするけど、何だったんだろう? まあそれくらい人想いの良い人だってことかな」
と、大久保の最後の言動が少し気になったが、その裏の気持ちには気づくことはなかった。
一方大久保は、車を運転しながら、
「……中野亜希か。こんなに衝撃を受けたのは生まれてはじめてだ。これから毎週あのカフェに通うか」
とつぶやいていた。
そう、大久保は中野に一目惚れをしていたのだった。
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