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30日間の革命 #毎日小説29日目
二日後、坂本の予想通り、馬場は10人の参加を取り付けたと報告にきた。
「嘘ではありませんよ。LINEでのやり取りもちゃんと残っています。良かったら見ますか?」
馬場は、自信たっぷりに加賀へスマートフォンを差し出した。
「いや、遠慮しとくよ。誰も君のことを疑ってないから」
加賀の表情が浮かないのは、馬場の成果を疑っていたのではなく、これから馬場とペアになっやっていくことに自信がなかったらからだった。
話は前日に遡り、加賀は坂本とクラスの教室で話をしていた。
「昨日、俺が馬場君の教育係みたいなこと言っていたけど、彼に教育なんているかな? 正直、俺よりも能力は高いと思うよ」
「そうね。能力だけ見れば、彼の方が上かもね」
「なんか小春が手崎さんに見えてきたよ」
「なんのこと?」
「いや、こっちの話」
「そう。ただ、彼にはまだ決定的に足りていない部分があるわ」
「足りない部分?」
坂本は、加賀の目をじっと見つめて話を続けた。
「あら、セトも気づいているでしょ。彼は策略で私たちに近づいたのよ。恐らく、セトが色々な人に声をかけていることに気づいて、馬場君の噂が耳に入るように仕組んでいたと思うよ」
「え、まじ? いやでも、流石にそこまでやれないでしょ。まだ入学して間もないのに」
「彼の情報網を侮ってはだめよ。何でそんなこと知ってるんだってこと、平気で知ってたりするから」
加賀は、馬場と初めて話した時を思い出した。
「そういえば、小春が1年のとき生徒会長になりかけたって噂も知ってたな。小春は有名だからってその時はスルーしたけど、今思えば、そんなこと入学したての奴が知っているなんておかしいよ」
「そうなんだ。まあ彼なら知っててもおかしくないわね」
「くそー、なんか操られてたみたいで悔しいな。でもさ、小春はやけに馬場君について詳しいな」
「中学が一緒だったのよ。何か目をつけられちゃってね。まあ努力家だし悪い人じゃないんだけど、策略で人を動かそうとしちゃうからね」
「とんでもない一年だな。果ては政治家にでもなりそうだね」
加賀は少し笑って答えた。
「あら、笑ってる場合じゃないわよ。彼のやり方じゃ、決して革命は成功しないわ。だから、セトが”人を動かす”とはどういうことかを教えてあげなきゃいけなのよ」
「いやいやいや、俺がそんなこと教えられるわけないじゃん。能天気に過ごしてきただけの男ですよ。小春が教えた方が、奴も言うこと聞くんじゃない?」
「私じゃダメなのよ。どっちかって言うと、私も馬場君と同じタイプの人間だからね。だから、もし彼が明日までに10人集めることが出来たら、それ以降はセトとペアで動いてもらうわ」
加賀は、指で遊ばせていたボールペンをとめた。
「ちょっとちょっと。ペアはきついよ。言いたくなかったけど、多分馬場君は俺のことを下に見てるよ。そんな奴が言うこと聞くわけないじゃん」
「そんなことないわよ。どうしても無理になったら私も助けに入るから、まずはやってみようよ。これには成功も失敗もないから、セトの思うようにやってくれていいよ」
坂本の目を見て、これは翻ることのないことだと加賀は悟った。
「まじかよー。じゃあ、絶対助けてね。多分すぐに悲鳴を上げるから」
「わかったわ。いつでも悲鳴を上げてちょうだい」
こうして、加賀と馬場がペアになって動くことが決まった。
「では、僕も計画班に入れていただけるということでよろしいでしょうか」
馬場が坂本に問いかけた。
「ええ、もちろん。でもさすがね。二日で10人集めるのは誰にでも出来ることじゃないわ。ちょっと無理を言ったようだったけど、ちゃんと実行してくれてありがとう」
坂本は穏やかな表情で、馬場へ感謝の気持ちをまずは伝えた。
「いえいえ、そんな。言われたことをやったまでです。これからもどんなことだって、きっとやり遂げてみせますよ」
「そう。心強いわ。それなら、これからはセトとペアになって動いてちょうだい。指示もこれからセトから出されるから、それに従ってね」
坂本は変わらず穏やかな表情で続けた。対して、馬場の表情は一変して強張った。
「……ちょっとまってください。加賀先輩の下につけってことですか?」
「ええそうよ。何か気になることでもある?」
「……いえ、そういうわけではありませんが。最初からそのつもりで?」
「昨日決めたことよ。恐らく馬場君は10人集めることは出来るんじゃないかと思って、昨日セトと話をしてね」
「……そうですか。わかりました。では、加賀先輩のもとで頑張ります!」
表情の強張りはおさまり、そのあとはいつもの笑顔に馬場は戻っていた。その笑顔が、加賀の不安をより一層大きくした。
▼▼30日間の革命 1日目~28日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!
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