30日間の革命 #毎日小説11日目
いきなり”革命”のメンバーになってほしいと言われた森下は困惑していた。何せ、言ってきたのがあの坂本小春だったからである。森下は坂本と同じクラスになったことはなく、会話もしたことがない。しかし、この学校で坂本のことを知らない生徒はいなかった。常に成績はトップであり、2年生から生徒会長を務め、体力テストでも上位に入る。そんな完璧にも近い坂本の名前は、どのクラスにいても耳に入ってくる。そんな坂本から”革命”を起こそうと誘われ、これは冗談なのか、それともからかっているのか、理解することができなかった。
「ちなみにね、この話は冗談でも、からかっているのでもなくて、本気の話だよ」
森下の心を見透かしたように坂本は話した。
「革命って何? 何をやろうとしてるの?」
森下は率直に坂本へ問いかけた。
「私たちがやろうとしていることは、この学校の主権を生徒に取り戻すこと。リンカーンの言葉を借りると『生徒の生徒による生徒のための学校』を作りたいってことだよ」
森下の質問に対して、坂本も率直に返した。坂本の言葉には芯があり、どうもこれは本気であるということだけは森下には伝わった。
「つまり、クーデターでも起こそうってこと?」
「クーデターじゃないよ。武力を行使することは考えていないし、それに、今の私たちは支配階級ではないもの。学校から主権を取り戻すことが目的よ」
「学校ってつまり先生のこと?」
「そうなるね。この学校を国家に置き換えて言えば、先生が主権を握り政治を行っている。学校のルール、つまり校則も先生が決め、校則を犯した者には罰則があり、それを執り行うのも先生だからね」
「うーん。つまり簡単な話が、俺たち生徒みんなで先生に反抗しようってこと?」
「服従しないって意味では、反抗でも合っているけど、反抗して終わりじゃなくて。……反抗の先には、私たち生徒が主体となって学校を運営していくことまで考えているよ」
「仮にそうなったら、先生たちはどうするの? 追放?」
森下は変わらず質問を続けた。
「先生たちには、学校に残ってもらうつもりよ。でも、あくまで先生たちの役割は授業を行うこと。生徒を支配する存在から、生徒に知識を与える役割に変えるつもり」
「先生たちを生徒が支配するってこと?」
「構図としてはそうなるね。でも、支配って言葉には束縛という意味も含まれるけど、私は束縛をしようとは思わない。だから、この考えに賛同する先生に残ってもらって、その他の先生には辞めてもらうよ」
「それってつまりは追放じゃないの?」
「選択の自由は先生たちにあるよ。この革命が起こった学校に残るのか、それとも辞めるのか。その選択権を奪うつもりはないから、強制的に追放しようとは考えていない。革命が成功したあとには、先生たちも対話をするつもりよ」
「あくまで民主主義ってことね。なるほど。何となくだけど、坂本さんのやろうとしていることが分かってきたような気がするよ」
森下の表情が少し和らいだ。それを見て坂本は、
「私たちに残された時間はもう1年もないの。でもこの学校のことを一番知っているのは私たち3年生。だからこそ、タイミングは今だと思っている。そして、森下君の力を貸してほしいって本気で思ってるよ」
「そういえば、なんで俺なの? 俺なんて先生に喜んで支配されている生徒の筆頭だろ?」
「率直に言うと、森下君のリーダーシップが必要なの。それに森下君は支配されているわけじゃないでしょ。自らの意志で先生に従おうと思って行動している。革命には、そんなしっかりとした意志を持っている人が必要なんだよ」
「あ、昨日加賀が急に話しかけてきたのもこのためか。だからやけに大友監督について聞いてきたんだな」
森下の頭の中で、疑問が一つずつ解消されていった。
「今すぐに返答してとは言わないけど、率直な今の気持ちを教えて」
坂本は森下に問いかけた。そして森下は少し考えてから口を開いたーー
▼30日間の革命 1日目~11日目
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