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不定期連載小説『YOU&I』18話
國立の頭には、ずっと疑問に思うことがあった。それは、
「何で中野さんは俺にかまってくれるのだろう」
ということ。
元はと言えば、あの授業で中野が声をかけてきたことがきっかけである。あのとき、声をかけられなければ、中野はもちろん市ヶ谷たちとも接することなかったであろう。
例え自分がよく行くカフェの店員であったとしても、それはただの客と店員という間柄。ここまで仲を深めるなんてことにもならなかったはず。
いつもきっかけは中野からだった。
「……もしかして、中野さんって俺のこと……」
そんなことが頭に思い浮かんだが、最後まで口に出すことはしなかった。
その翌日からも市ヶ谷や神田とは楽しく過ごした。しかし、先週と違いそこには中野の姿ももあった。
気づけば、4人で過ごす時間も増えていく。食事はもちろん、帰りにゲームセンターに行ったりと、今まで以上に4人の仲は深まっていた。
しかし、それと同時に國立の悩みも増えていく。
話せば話すほど、そして仲良くなればなるほど、中野亜希という女性に惹かれていく。
彼女の笑顔を見るたびに心が踊り、少しずつだが素直に話せるようにもなっていた。こんなに楽しい時間を過ごすのは生まれて始めてのこと。
中野といるときは、生きていることを感じられるようなドロッとした時間を過ごせるようだった。
それだけ聞けば楽しいようにも思えるが、國立のメンタルはこの状態を手放しで楽しめるほど強くはない。
彼女に惹かれている自分には気づいていたが、この先に彼女と何か関係性が変わるとは全く思えない。好きになってもこれ以上の仲にはならないと考えれば、これほど惨めなことはない。
普通であれば、いつか告白して彼女と付き合いたいなんて思うかもしれないが、國立にはそんな考えは一切なかった。
告白するなんてのは論外で、自分が好意を寄せていることを知られたら相手に迷惑をかけるとさえ思っている。
だから、中野はもちろんのこと、市ヶ谷たちにも自分の気持ちを知られないように必死になる。
「絶対に自分が好きだってことを悟られちゃダメだ」
そう考えていたが、それとは裏腹にどんどん彼女に惹かれていく。
國立は毎日その狭間で悩んでいた。
▶To be continued
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